部屋選びと恋人選び
＊この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか？賞を取れるのか？プロも通うのか？〜
記事：佐藤 哲康（ライティング・ゼミ２月コース）
「理想のエリア、駅から○○分以内で、家賃○○万円以内、築浅、オートロック、バストイレ別、収納が多い、陽当りがいい、キッチンは二口のコンロ、おしゃれなデザイナーズマンション……」
人それぞれ、部屋に対して理想の条件があるだろう。
私は現在、不動産会社に勤めている。
本日のお客様は、20代で初めて一人暮らしをするという女性なのだが、初めて部屋選びをするお客様には注意している。
それは初めて一人暮らしをする人が、予算が低いわりに条件が多いからだ。
そういうときは、まずは予算を無視して、条件に合う物件を紹介する。（そもそも条件が多いので物件数が少ないのだが）
「えっ！ こんなに家賃が高いの！」
現実を見せられて、みるみる表情が曇っていく。
「では、条件に優先順位をつけて絞っていきましょう」
そう言って、何とか予算と条件をすり合わせ部屋を絞っていくのだ。
不動産業界では「部屋選びと恋人選びは似ている」といわれることがある。（婚活業界でもいわれているらしい）
今日のお客様を接客していたときに、その言葉を思い出した。
たしかに、どちらも理想と現実のギャップを埋め、妥協点を見つけるところが共通しているように思う。
例えば、部屋探しなら、立地、広さ、設備、価格など、恋人なら性格、価値観、外見、収入などに、それぞれ理想の条件があるだろう。
しかし、自分の理想ばかりを押し付けていても、なかなか条件に合った相手は見つからない。
条件を譲れば選択肢は増える。どこまで譲れるのか、優先順位をつけることが重要なポイントだ。
さて、部屋選びなら予算という現実をみながら、条件の取捨選択をしていくのだが、恋人選びでの予算にあたるものとはなんだろうか。
おそらくは、顔などの外見、年収、年齢、性格、などだろう。
ところが、恋愛にいたっては予算が具体的に目に見えないため「予算オーバー」つまり「今の自分では払えない＝自分には見合っていない」ということがなかなかわからない。
そのため、ついつい高望みをしてしまいがちだ。
そのようなとき自分の価値を高めるため、清潔感を出すよう意識するなど外見を整えたりするだろう。
不動産業界でも「ホームステージング」といって、貸し出す部屋に家具や照明、小物や観葉植物などでモデルルームのように演出することがある。
そこも共通してる項目かもしれない。
しかし、どちらも肝心なのは、中身を見るのを忘れてはいけないところだろう。
次の共通点は、恋愛ではお付き合いする前に、相手とよくコミュニケーションを取り、価値観、性格、趣味、などが合うかどうか調べるだろう。
部屋選びでも、不動産サイトや不動産会社で情報を集めて、気になる物件は実際に見学をして判断する。
そのときは実際の生活を意識してしてみるのがいいだろう。
まずは、見学前に周辺環境のチェックをするようにしよう。
周辺の騒音・治安や交通量、スーパー・コンビニまで距離、病院などの施設までの距離などを調べるとよい。
次に、外観がきれいさ、女性の一人暮らし場合は特に防犯性もみるべきだろう。
室内でチェックすべきところは、日当たりや風の通り、汚れや傷、防音性、設備の確認、などだが、忘れがちなのは家具の配置だ。既存の家具が設置できるスペースがあるのか確認しておくべきだ。それは実際に引越しをしたとき、持ってきた家具が入らないということがあるからだ。
最後にチェックするのは、エレベーター・階段、ゴミ置き場、などの公共場所の管理体制だ。ここをチェックすることで管理会社の質、他にどのような住人が住んでいるか大体わかるためだ。
そのほか気になる点は、不動産会社に質問すると良いだろう。
さて、物件を実際に見てみることで住みやすさが分かりやすくなっただろうか。
しかし、見学しただけでは本当のところはわからない。
なぜなら、近隣にどんな人が住んでいるのか、陽当りの夏と冬での違い、夜は昼間と違う騒音があるなど、一回見学しただけでは、わからないことがあるからだ。
恋人選びでも、実際に付き合ってみて初めてわかることがあるように、部屋選びでも最終的には住んでみなければ本当のところはわからない。
そんな時は「なんとなく合う、なんとなく合わない」など、インスピレーションで選ぶこともときには必要かもしれない。
その直感が、意外と正解だったりする。
先日のお客様は、3件ほど実際にみて、その中から取捨選択し、気に入った部屋を見つけることができた。
彼女の希望に満ちた表情を見て、新生活がいいものになればいいと思う。
部屋選びと恋人選び、どちらも人生において重要な選択、縁やタイミングが大切だ。
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