「書くこと」をやめられない私の、これまでとこれからと。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:福居ゆかり(ライティング・ゼミ)
「で、どうするの?」
その問いに答えられずに、私は下を向いた。
自分でも、どうしていいのかわからないのだ。決められないのだ。
自分の事なのにね、と思うとなんだか可笑しい。でも、自分の事だからこそ見えなくなる事も、時にはある。
「じゃあ、どうしたいの?」
それは簡単だ、どんな形でもいいから続けたい。
しかし、私は悩んでいた。まるで、砂漠の真ん中で指針も何もなくぽつんと立っているかのような心地になりながら、私は砂をつかむようにもがいていた。
最初から、わかっていたのだ。
いつかは終わりが来るということを。
別れの予感は始まった時からずっとあった。けれど、その先にどうするか思いつかなかった私は、見て見ぬ振りをした。問題を先送りにしても、どうにもならないことはわかっていたはずなのに。
いつもそうだ。そうやってハマればハマるほど、後になって後悔をする。
ああいっそ、出会わなければ良かった、と。
今、私は人生の岐路のひとつに立っている。というと大袈裟なのかもしれないが、選択を迫られている。
そう、——天狼院書店の「ライティング・ゼミ」の受講が、じきに終わるからだった。
私が天狼院書店の存在を知ったのは、昨年の秋だった。
なんとはなしにFacebookで記事を見かけ、面白そう、とページを開いた。そこに掲載されていた川代さんの記事に、私は衝撃を受けた。コンプレックスについて書かれたその記事に、私は「私と同じ人がここにいる!」と強い共感を覚えたのだった。そしてそのままどハマりした私は、ひたすら川代さんの記事を探し、読み漁った。
ずっと心にあったことを言葉にして出されたような気がして、私は妙にスッキリした気分になった。そんな記事を書ける川代さんはすごいなと思うと同時に、羨ましくなった。まだ若そうなのに、こんなに書けるなんて。
それにしても、天狼院書店は本屋のはずだ。しかし、川代さんの記事は女子ヒエラルキーについてなど、本屋という形からかけ離れている。
一体、どんな本屋なんだろう。そう思ってホームページを見ると、ゼミや部活をやっているらしいことがわかった。本屋なのに、ゼミ? やっぱり、変わってる。でも、面白そうだ。
しかし、関東圏内といっても外れに住んでいる私は、ふと思いついて東京に行くには遠かった。いや、独身の頃なら行っていたかもしれない。しかし、よちよち歩きの子どもを置いて、または連れて、ということはできなかった。よって読/書部や女子部、フォトゼミは参加したいと望んでも、物理的に無理だった。
遠方でも受けられるものはないんだろうか、と見ていると「ライティング・ゼミ」が該当するらしいことに気がついた。しかも、「人生を変えるライティング教室」とある。
その紹介文を読んで、面白そうだし参加してみようか、と思った。そんな軽い気持ちでなんとなく受講したのだが、これがまあ大きな間違いだった。
「人生を変えるライティング教室」によって、私の人生は確かに変わってしまった。
毎週一本の記事を提出することなんて、私に出来るんだろうか。家事に仕事に育児にと目まぐるしく日々が過ぎる中、果たして書くことができるのだろうか。そして、それを人目につくところに提出するなんて……。考えれば考えるほど、目眩がしそうだった。
なので、参加すると決め、手続きをした後には不安しか残らなかった。お金を無駄に捨ててしまったような気分になり、私は落ち込んだ。
しかし、物は試しだ。出来ないと初めから思っていれば、もちろん出来るはずがない。そう思い、とにかく書いてみる事にした。
初めのうちは、投稿するたびに手が震えた。三浦さんからのコメントがつくと、ドキドキしすぎてFacebookを開けず、1日寝かせてから過呼吸になりそうなのを抑えて開く、という謎のスタンスを取っていた。
人間とは慣れる生き物で、キツいと感じていた毎週の記事も、そのうち何とも思わなくなった。要は、「書くことが日常」になったのである。一本提出すると、さて、次は何を書こうかなと考える。携帯のメモにはふと思いついた時のネタが箇条書きでいくつも書き留めてあり、その中から気が向いたものを選んで書き進めた。
私は「この話を書こう」と思い、大体の話の筋を考えると、頭の中に映像が流れてくる。その映像を自分の言葉で書き起こし、出来るだけ過不足がないように添削する、というスタイルで書いていた。
そして気がつくと、あれも書こう、これも書こう、と色々思案していたのだった。
書くことが日常、ということは最早、書かないではいられない、という事だ。
そうなると、今受けているライティング・ゼミが終わった後、さてどうしようか、という事になる。その事について私は年が明けたくらいから延々と思案していたのだった。
このまま一旦、終わりという形にしようか、また同じゼミを受けようか。いやいや、それとも別のゼミを受けてみようか。
明確に決められないまま、どんどん時間だけが過ぎていった。
そう考えていると、ふと、中学生の頃を思い出した。
中学生の私は、漫画と小説が大好きだった。暇さえあれば本を読んでいる、というと聞こえはいいが、ブックカバーの下が漫画だと母は目に見えてガッカリした表情をした。そしてこう言うのだ。「漫画ばかり読んでないで、読むなら本を読みなさい」と。
しかし、私から見れば漫画も、当時はまっていたよしもとばななさんの小説も、どれも大差なかった。どちらも同じように、私に本という扉を介して別の世界を見せてくれた。
そんな私だったので、必然的に学校で仲がいい友達も、同じように漫画や本が好きな子たちばかりだった。休み時間には絵を描いたものを持ち寄って見せ合ったり、授業中も落書きを書いて手紙として回しあったりした。
その延長で、交換日記ならぬ、小説と挿し絵をノートに書いて回そう、ということをやり始めた。今で言うところのリレー小説のようなものだった。しかし、こちらは文章だったため、誰かで止まってしまい、長くは続かなかった。けれど、私は1人でその続きを想像し続けるのが好きだった。書いてみたこともあったけれど、もう友人たちは飽きていたので「読んでみて」とは提案できずじまいだった。
どちらかというと漫画よりもストーリーを文章で書く方が好きだ、ということにハッキリと気がついたのは、ある自習の時間だった。その日は部活で県大会に出場している子が多く、付き添いで先生たちもほぼいなかったため、学校残留組は丸一日自習となった。
自習の課題の中に、作文があった。いくつかの中から1つ選ぶ形式だった。読書感想文か、詩を5編か、自由課題で原稿用紙10枚か……他にもいくつかあったが思い出せない。私は悩んだが、友人と一緒に自由課題を選ぶことにした。
「どっちが早く書き上げるか競争ね!」と意気込んだものの、なかなか進まず、原稿用紙5枚程度のところでチャイムが鳴った。友人も同じように途中で自習の時間が終わってしまい、とりあえずそこまでを提出して、その時は終わった。
けれど、私の頭の中にはその続きの物語が渦巻いていた。書いて、とこちらに言ってくるように。私は帰宅してすぐに続きを書き始めた。自分でもうまく言葉が出た、と思うと嬉しく、書くことは楽しかった。
結局、その物語は着地がうまくいかず、中途半端な終わり方となってしまった。けれど、あの時に私は「書く」ことに魅せられたのだと思う。
そこからの私の密かな夢、それは「文章を書くことを生業としたい」ということだった。小説家でも、ライターと呼ばれるものでもいい、とにかく、書きたい。
しかし、雪深い片田舎の女子中学生がそんな事を言うのは分不相応に感じた。そこまで取り立てて秀でた文才がある訳でもなく、平凡な人生を歩んでいる私に、普段読んでいるような物語を紡げる気がしなかったのだ。
そうして、私はその願いをそっと胸にしまい込んだのだった。
それ以来、私はしまい込んだその気持ちを見て見ぬ振りをしてきた。進路を考える時も、就職活動の時も、その選択肢は初めからないものとしてきた。そして無難な、手が届きそうな道を選択してきた。
思惑通り、私はそのまま、うまく忘れていた。そういえば、若かった時はそんな事もあったな……そう思い出してふと友人と笑い合う程度だった。むしろ絵を描いていたことなどは少しオタクな趣味として、黒歴史の類に入っていた。それなので、なおのこと記憶にそっと蓋をして、そのまま忘れていた。
なのに、うっかりこのライティング・ゼミに参加して書き始めた時、私は思い出してしまった。書きたい、そしてそれを誰かに読んでもらいたいという気持ちを。
私は確かに、ライティング・ゼミに参加したことによって「人生を変えて」しまったのだった。
自分の判断の迂闊さに舌打ちしそうになるが、思い出してしまった以上仕方がない。
ああ、それにしても、書くことを生業としたい、なんて。
今から叶えられるのかどうかという物理的なことや、そもそもそんなに自分にセンスがあるのかということなど、問題が山積みすぎるように思えて、私はまた逃げ出したくなった。もう一度、蓋をして忘れてしまった方が楽なのかもしれない。
けれど、今回はもう少し、自分に向かい合ってみようか、そう思った。
何年越しかの、パンドラの箱は一度開けてしまうと、なかなか蓋が出来そうになかった。
天狼院書店のFacebookを見ながら、さて一体どうしようかと思案する。あれこれ見ていると、色んな人の記事が目に付いたので読んでみることにした。
すると、あれ、と気がついた。ちらほらと、私と同じようにライティング・ゼミによって「人生が変わってしまった」という人、「書くことを生業としたい」と思っている人がいることに。
同志よ! と思うとともに、書くことの楽しさを感じている人の多さになんだかほっこりとする。
と同時に、こんなに「書きたい」人がいる中で、私は果たして書き続けられるのだろうか、と不安になる。すごい記事を書いている人がこのゼミにはわらわらいるのに、その中で飛び抜けて人目を引く記事を書いたことがあるわけでもない私が。
そうモヤモヤしながらFacebookを見ていると、三浦さんの投稿が多く上がって来ていた。そういえば、私はこのゼミに参加してから三浦さんの写真を毎日見ている気がする。下手すれば、友人の顔よりもよっぽど多く。
そうして笑顔の三浦さんの写真を見ていると、なんだか不思議な気分になってきた。
こんなに「書くことを生業としたい」人をどんどん増やしているこのライティング・ゼミには、魔物が棲んでいるのではないか。きっと、そのままライティング・ゼミに通い続けたり、天狼院の他のゼミに参加し続ける人が何人もいるはずだ。
そんな私たちは、三浦さんの巨大な手のひらの上でコロコロと転がされているのではないだろうか。
そんな想像をしてしまうと、途端に三浦さんの笑顔が怪しく見えてくる。頭の中で想像した棲んでいる魔物の顔はいつの間にか、三浦さんに似ていた。
いやいや、と私は首を振った。超多忙な中、自分の睡眠を削ってまでゼミに参加している方々の投稿を読み、真摯にアドバイスしてくれているのだ。怪しさなど毛ほどもないに違いない。ちょうど、三浦さんは坊主頭だし。
そんな事を考えて、苦笑する。実際、手のひらの上で転がされていてもいなくても、どちらでもよかった。
大事なのは、書き続けられること。そのために、1人ではサボってしまいがちな私は多分また、天狼院のゼミを受講するのだ。どのゼミにしようか決まっていなくても、最終目標は決まっている。
「書き続ける」、これ以外にはないのだ。
ならば、私は書こう。昔の私をまた閉じ込めて忘れないためにも、今また抱いている思いのためにも。どんな形になってもいいから、日常的に書き続けよう。
行き先が決まれば、あとはどの道を選ぶかだけだ。
どう進むのが一番良いのか、自分に合っているのかはわからない。1つ1つ、手探りで進むのだ。
「人生はチョコレートの箱のようなもの。
開けてみるまで中身はわからない」
私の大好きな映画、「フォレスト・ガンプ」に出てくる言葉だ。
これから、一体どんなものが入っているのか。そのワクワクを味わいながら、私は進んで行こうと思う。
これまでずっと抱えて来た思いを、言葉に、文章にして。
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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