メディアグランプリ

女子大生の涙に、未来への輝きが見えたとき


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:めぐ(ライティング・ゼミ)

「私・・・・・・、悔しいんです・・・・・・」
真新しいリクルートスーツを着た女子大生は、そう言って静かに泣いた。
くじけるな、ここからだよ。ここからどう挽回するかが勝負。
負けんな!

***

毎年9月、私の会社は社会貢献の一環として「学生インターンシップ」の受け入れをしている。私はその担当者として、学生と2週間を共に過ごす。
あぁ、今年もこの季節がやってきたか~。
通常業務をこなしながらインターンシップの受け入れをするため、正直言うと楽ではない。
しかし、私と10歳以上も離れた学生たちは、この2週間で大きく成長して、元の大学生活に戻っていく。その過程をそばで共有できることは私の喜びであり、この仕事は私の好きな業務のひとつだ。

さて、今年の我が「販売企画チーム」は、男子2名女子1名。社交的でムードメーカーのAくん、大人しく物腰の柔らかいBくん、ポーカーフェイスのCさんの3人だ。
今回は、販促イベントの企画を立て、我々が日頃行っている業務プロセスを体験してもらう。
彼らは互いに意見を出し合いながら企画を考え、私がアドバイスをしながら、少しずつ企画書を作り上げていく。始めてみるとなかなかうまく話合いが進まない。期日までに仕上げようと、彼らは朝早く来て話し合い、退社後はカフェで話合いをしていた。このチームを引っ張っていたのは、Cさん。彼女のおかげで士気が上がっているのは確かで、普段はあまり感情を表に出さず淡々としているが、ときどき、思い通りに進まないことに苛立っているように見えることもあった。

そして、いよいよ企画案を部長にプレゼンする日がやってきた。
彼らの緊張がこちらにも痛いほど伝わってきて、ドキドキが伝染する。彼らのプレゼンは、自分たちの考えを伝えようと一生懸命説明をするもので、学生だということを忘れる程だった。
しかし、部長は容赦しない。矢継ぎ早に、厳しい質問が飛ぶ。
「費用に対して、効果はこれだけ? これで、やる意味あると思う?」
「スケジュール、これで間に合うのか?」
「お客様がどう感じるか、しっかり考えたのか?」
誰よりも責任感が強く負けん気の強いCさんは、それらの質問に食らいつくように、必死に答えた。
だが、部長を納得させることはできない。
「修正したものを、もう一度プレゼンさせてください」と、部長にお願いをする男子2人。
その横で、Cさんはいつの間にか、誰にも見つからないよう静かに泣いていた。

個別に話を聞くと、彼女はこうつぶやいて、また涙を流す。
「私・・・・・・、悔しいんです・・・・・・。自分の力のなさに・・・・・・」
くじけるな、ここからだよ。ここからどう挽回するかが勝負だよ。
そう声をかけようとして彼女の顔をのぞきこむと、目つきが鋭く力強い。
あ・・・・・・この子、もう、やる気になってる!
そうそう、これこれ! この感じ、懐かしい。
この子、私と同じだ。社会人1年目のあの時の私と。

今から10年ほど前のこと。入社してすぐ私は営業部に配属された。
新規開拓で飛び込み営業をする毎日。商品もよく分からない。この営業スタイルでいいのかも分からない。とにかくお客様先に飛び込み、飛び込み、飛び込んだ。
数打ちゃ当たるという言葉は本当で、数か月経ったころ、運よく大きな商談を見つけた。
願っても無いチャンス。「足で稼げ」とばかりにお客様のもとに頻繁に通い、少しずつ関係を積み重ねていた。
なのに・・・・・・。
「お前今どこにいるんだよ! 打合せだったんじゃないのか? お客さん、怒ってるぞ!」
課長から、電話がかかってきた。
「え・・・・・・?」
外回りをしていた私は、一瞬なにが起きたかわからなかった。頭が真っ白になった。
え・・・・・・、私、アポをすっぽかしてしまった、の・・・・・・?
スケジュール帳を見直す。
書いてある! 「打合せ」って書いてある! 何やってるんだよ! バカ!
他の案件もあり、忙しかったのは事実。ただ、そんなの言い訳になんかならない。
とにかく、急いでお客様に謝罪の電話をかけ、すぐにお客様のもとに向かった。

「もう、来なくていい。この商談に、御社は参加する資格はありません」
ピシャっと言われてしまい、とにかく謝ることしかできず、いそいそとその場を離れた。
わ・・・・・・、終わった・・・・・・。
せっかくのチャンスだったのに・・・・・・。
不甲斐ない自分に腹が立ち、腹が立ちすぎて、涙が止まらない。
こんなことでお客様を怒らせてしまうなんて、情けない・・・・・・。
日程管理すらできない私には、商談に参加する資格は、ない。
その通りだ。それはよく分かっている。
でもここで諦めるわけにはいかない。
諦めてしまったら、ただの負け犬だ。
すぐに課長がかけつけてくれた。課長からお客様に丁寧に謝罪をし、なんとか、商談には参加できることになった。
明らかなマイナススタート。でも、絶対巻き返してやる。そう、決めた。
先輩に手伝ってもらいながら、毎日夜中まで提案内容を考えた。コストを削減できないか何度も試算し、提案書は考えれば考えるほどどんどん分厚くなっていった。とにかく必死だった。
お客様の信用を取り戻したいという気持ちももちろんあったが、それよりも、この失敗を帳消しにできる「何か」が欲しかったのかもしれない。

しかし、社会はそんなに甘くない。
「御社の採用は見送らせていただきます」
あぁぁぁぁ・・・・・・。
しばらく何も考えられなかった。
ポーっとしながらそのメールを読み進めると、最後にこんな言葉があった。

「ビジネスの世界は茨の道の部分があり、簡単ではありません。ですが、貴方の純粋な気持ちがとても尊いものと感じており、今後、弊社との仕事の中で成長していただけたらと思っております。これからに期待しています」

アポをすっぽかしたのに、期待、してくれるの・・・・・・? ありがたい・・・・・・。
涙が自然と流れた。でもこの涙は、うれし涙。成し遂げた涙。前回とはまったく違う。
お客様に恵まれて、幸せだと思った。
このお客様のために、仕事がしたいと心から思った。

私は今、目の前にいるこの女の子に、若かりし日の自分を重ねている。
この子も、きっとこの悔しさ、見返してやるという気持ちをバネに、いくらでも成長できる。

インターン最終日、成果報告をする彼女の顔は、最初のポーカーフェイスが嘘のように、キラキラと輝いていた。
数日前、部長から「よくやった」とお褒めの言葉をいただけたからだろう。
清々しく、達成感に満ちた、本当にいい笑顔だ。
仕事とはこうゆうことの繰り返し。だから、仕事っておもしろい。
私は、彼女のあの笑顔を忘れない。

***

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2017-01-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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