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メディアグランプリ

人生に楽しみと彩りを加えたいなら、“すすきの”というダンジョンに行け!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:オールイン関谷(ライティング・ゼミ)

 

 

黒いコートを身にまとった、ちょっと強面の男たちが目の前に立ちふさがった。

 

威圧感に思わず後ずさりしそうになる気持ちをぐっとこらえて、下を向きながら彼らの間をなんとか通り過ぎようとする。

 

しかし男たちはさらに僕との距離を詰め、

「ここは通さねぇぜ」

と言わんばかりの態度で、彼らはこちらを細い目で見ながら、まるで品定めをするように近づいてきて、こう言った。

 

「お兄さん、遊び? もういくとこ決まってるの?」

「ねぇ、お兄さん」

「どこから来たの? 観光? 出張?」

矢継ぎ早に声を掛けてくる男たち。手を上げたり、こちらを掴んだりこそしては来ないが、ものすごい威圧感。

 

その時の僕はコートの内側で冷や汗をかいているのを悟られないようにしながら、

「ええ、まぁ、はい。すいません」

と言いつつ、内心ビビっているのを悟られないように、小走りで彼らを避けて突っ切るほかなかった。

 

 

およそ20年前、僕は大学生だった。

初めて飛行機に乗り、訪れた札幌。食べ歩きが大好きだった僕は、ガイドブックを片手に、評判の良さそうなジンギスカン屋を探していた最中だった。

その店はガイドブックの地図によれば、すすきの繁華街の路地裏にあった。

 

「お肉、お肉、お肉〜」という浮かれた気持ちで一杯な僕の目の前に突然現れた彼らは風俗店の客引きたち。現代風にいうなら“キャッチ”だ。

ちょっとHなサービスを期待して街に来た酔っ払いやなにも知らない観光客を捕まえては、ぼったくり店に連れて行くのが彼らの仕事。

捕まった客は、女の子たちとお酒を飲んだり、ちょっとしたサービスを受けたあとに法外な料金を請求され、財布の中身を吸い上げられる。そして、その一部が客を呼んできた彼らにキックバックされるという仕組み。

 

とはいえ、こういう仕事の方々はネオン輝く夜の繁華街で出会うというのが一般的。大通りを曲がってすぐに、4人の男に立ちふさがれるとは、当時の僕は思いもしていなかった。

ましてやその時の時刻は13時。ランチタイムのまっただ中。

真っ昼間から彼らは飛び込んでくる獲物を狙って、街角にたたずんでいるのである。

 

「真っ昼間からかよ……。すすきのってスゲーなぁ」

目当ての店に到着するまでに3度も彼らのような客引きに遭遇し、気弱な大学生だった僕は精神と体力を消耗しながらなんとか目的のお店にたどり着く。

 

そんな思いをしてたどり着いたジンギスカンは、旨かった。

そして、ビビって通り過ぎながらも、視界の端に捉えていた夜の街のお店に、次回は行ってやろうかという思いも頭をもたげていた。

 

 

その後社会人になった僕はことあるたびに札幌に行き、すすきのに通った。

その魅力に完全にはまってしまったのである。

 

札幌・すすきのはドラゴンクエストのダンジョンのような街である。

普通のビル街だと思って歩いていたら突然風俗店が建ち並ぶ路地になったりするし、街の角というカドには客引きというモンスターがいるし、明らかに観光客狙いで手を抜いた外れのお店を引くというトラップもある。

 

でも、路地裏の奥には、北海道ならではのおいしいものを安く食べてもらおうと言う心意気でいっぱいの名店もあるし、長年連れ添ったご夫婦が手作りのお総菜やおいしい地酒をあうんの呼吸で出してくれる居酒屋もあるし、1階から8階まで全部飲み屋、というビルがあると知ったのもこの街だ。

 

さらには夜が白んでくるまで地元の人たちと語り尽くせるバーもある。

 

そういった場所は、僕と同様にこの街の魅力に惹かれて訪れた人たちが集い、ドラゴンクエストで言うならまるで冒険者たちが集まる宿屋のよう。

私も沖縄から雪を見に来たという男女3人組とすすきの路地裏のバーで知り合って、思いも掛けず飲み明かし、その後長く付き合うことになる相手と出会った事も今では良い想い出。

バーのマスターの頭髪には白いものが混じるようになったが、会えばいつものように旨い酒を出してくれ、そして訪れた人たちとのひとときの会話を楽しめるように促してくれる。

彼の紹介で、さらに路地裏の奥の奥にあるお店も教えてもらい、雪の舞うなか、息を白く吐きながらやや小走りにその店に向かうのは至福の瞬間だ。

 

 

客引きというモンスターを避けたり、あしらったりしながら、碁盤の目のようになっているすすきのの路地裏。

ビルの間の細い隙間を、まるでダンジョンを進むように歩き回れば回るほど僕は経験値を積んでいき、大人になっていった。

 

今では、お腹に脂肪というヨロイを身につけ、面の皮も分厚くなり、

「ここは通さねぇぜ」という感じで客引きに立ちはだかられても、彼らの目を見てにっこりしながら

「今日はねぇ、もう、いっぱい飲んじゃったから。おじさん帰りま〜す」と言いつつ、彼らの目の前で目当てのお店があるビルに吸い込まれるという大技も繰り出せるようになったし、

「お兄ちゃんたちもこのクソ寒いなか大変だねぇ」

なんて声を掛けながら彼らの肩を叩いて笑顔で通り過ぎることもできるようにもなれた僕。

そんな風にこの街のおかげで、大人になった、というかおじさんになってしまった僕だが、このダンジョンの探索はまだまだ続きそうだ。

 

なぜならダンジョンのデータがアップデートされるように、訪れるたびに新しい店ができ、さらなる魅力を増しているのが、すすきのという街だからだ。

 

自分の感性に合った店という宝物を見つけるために、客引きモンスターと遭遇しながら、路地裏に入り込む冒険の魅力には当分あらがえそうにない。

*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。 *この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2017-02-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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