メディアグランプリ

バイクにひかれても僕は本を手放さなかった。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中 洋輔(ライティング・ゼミ)

あれは、忘れもしない。
小学5年生の秋。
塾からの帰り道だった。

僕は、気がついたら、道路の真ん中で倒れていた。

人が集まってくる気配を感じる。
んん……

どうやら、バイクにひかれたらしい。
意識を取り戻した僕は、むくりと立ち上がり、そばに落ちた本を手に取った。
何事もなかったかのように、本を開き、読みながら家へ向かった。

後ろからは、「大丈夫?」「あの子、ひかれたのに……」という声がかすかに聞こえる。

「静かにしてくれ」と、内心で毒づきながら歩を進める。

僕は、それどころではなかった。
なぜなら、本の続きが読みたかったからだ。

その数十分前。

塾の授業が終わり、家への帰り道。
カバンから読みかけの本を取り出し、読みながら歩いていた。
たしか宮沢賢治の本だったと思うけれど、タイトルは忘れた。

本に夢中だったので、後ろから来るバイクにも気がつかなかったのだろう。

勢いよくやってきたバイクに追突された。
一瞬、気を失い、気がつけば道路でうつぶせになって倒れていた。

気がついた瞬間、真っ先に思ったのは、「本はどこだ?」だった。

バイクに追突されようが、ケガをしていようが、どうでもよかった。
一刻も早く、本の続きが読みたかった。

本をあまり読まない人には、きっと理解ができないだろう。
「どうして、そこまでして本を読みたいのか?」と、疑問に思うかもしれない。

僕の答えは、シンプルだ。

おもしろいのだ。もう、めちゃくちゃに。
興奮する。ワクワクする。

交通事故にあったことなど、どうでもよくなってしまうくらいにおもしろいのだ。

読書のおもしろさは、ゲームの楽しさや遊んでいるときのモノとは少し違う。

あれはそう、インテリアショップや家具店を見て歩いているときの感覚に近い。

たとえば、IKEAやニトリ、ACTUS(アクタス)、無地良品など、ソファやテーブル、おしゃれな雑貨がたくさん売っているお店にいる感じ。

僕たちは、お店に行っても、実は商品を見ていない。
目では見ている。手でも触れている。

でも、頭の中は違う。

なにを見ているのか?
その家具がある自分の部屋、そのソファがある生活を思い浮かべているのだ。

オシャレな部屋に住んでいる自分を。
ステキな家具に囲まれた生活を。

朝から優雅にティータイムができるダイニングテーブル。
のんびり座りながら映画を見るためのソファ。

気がつくと、空想の世界に入っている。
現実世界から遠く離れたところへ意識が飛んでしまっている。

イメージしながら、僕たちはウキウキするのだ。
ワクワクする。ドキドキする。

現実ではないのに、気がつけば鼓動は速くなっている。

読書の楽しさも、これと同じだ。
見ているのは、目の前にある文字。

でも、僕たちは文字を見ていない。
文字の先にある世界を見ている。

空想の世界にのめり込み、ワクワクする。ドキドキする。

『ハリー・ポッター』を読んで、魔法の世界に入る。
『下町ロケット』を読んで、ロケット開発をしている気分になる。

IKEAやニトリで、いらないものを買った経験はないだろうか?

「これ、すごくいい!」と思って買ったものの、冷静になってみると、「なんでこれ買ったんだろう?」と、後悔してしまうこと。

インテリアショップは、好奇心を刺激してくる。

「え? これどうやって使うの?」
「この扉、どうやって開けるんだろう?」

楽しくなって、何時間でもいることができる。
ついムダな物まで買ってしまう。

同じように、知る楽しみが本には詰まっている。
今まで見たこともないモノ、知らなかった世界に出会えるのは、なによりの喜びだ。

新しい知識や知恵、考え方に出会うたびに、嬉しさがこみ上げてくる。

見たこともないオシャレなデザインの椅子を見たときの感覚と同じ。

家具や雑貨を見ている人たちの目は、まるで子どものよう。
遊園地にいるみたいに「次は、なにがあるんだろう?」とウキウキしながら店内を歩いている。

人は、誰だって好奇心を持っている。

知らないものを見ると不思議に思う。
新しいモノに出会うと興奮する。

本には、ドキドキする世界への出会いがたくさん詰まっている。

お店に置いてある雑貨のような派手さはない。
一瞬で虜にされることもない。

でも、本には「きたっ!」と思う瞬間がある。

洗練されたデザインの家具を見つけて「あっ! これすごいっ!」と飛びつく、あの瞬間が!

残念ながら、本はとても内気だ。

インテリアショップだと、オススメ商品は目立つところに置かれている。
アピールされている。見た瞬間に、素晴らしいとわかる。

しかし、本には「ここのページからおもしろくなりますよ」とは、決して説明されていない。

自ら手探りで読み進めていくしかないのだ。

だからこそ、その瞬間は不意に訪れる。
予期せぬときに。

「きたっ!」とスイッチが入った瞬間、この世界には帰ってこられなくなる。
向こうの世界に没頭してしまう。

そうなると、もうダメだ。

バイクにひかれても気にならないし、降りる駅に気がつかないままずっと電車に揺られている。

今、自分がどこにいるのかも忘れてしまう。
それほど、本の魅力はすさまじい。

だから、僕はまだ本にハマったことがない人へ言いたい。

本を読むのはやめたほうがいい。
夢中になりすぎて、命の危険があるのだから。
***

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2017-02-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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