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我が家に起きる、不可思議にものが消える謎


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記事:渡辺 剛(ライティング・ゼミ)

それは、いつも突然だった。

その日の朝、いつもの様に、子どもたちを保育園に送り届ける準備をしていた時のことだった。
我が家は共働き、私の出勤が遅めの日もあるので、子どもたちを保育園に送り届けるのは、私の役目である。
その日も、2歳の息子に朝ごはんを食べさせながら自分も一緒に食べ、6歳の長女にはやく着替えなさいと急かしながら、保育園の連絡帳に記入する「朝の体温」を記入しなくてはならないため、体温を計ろうとしていた。

いつもあるところから体温計をとろうとした時のこと。
おや? 体温計がない。

「体温計知らない?」
妻に聞くと、忙しそうに出かける準備をしながら、知らないよ、という。

妻はその日、出勤時間が早いらしく、朝早くから洗濯をして、家族の朝食を作ってくれたあと、ではあとはよろしくといった感じで、自分自身の準備に専念している。
こういう日は私自身も忙しく、自分の準備のほかに子どもたちのごはんと、出かける支度を促さなくてはいけないわけだが、これをひとりでやっている世の中のママさん、パパさんたちは本当にすごいと思う。

ふとリビングに目をやると、ひとり着替えを終えて、熱心にテーブルに向かっている6歳の長女。何をしているのかと覗いてみると、色鉛筆をなぜか全色引っ張り出して、せっせと絵を描いている。娘は絵を描くのが好きだ。暇さえあれば絵を描いている。これくらいの年齢の子は、みんなこうなのかな? という気もするが、私が子どもの頃を振り返っても、そんなに絵を描いていた記憶はない。

おそらく知らないだろうな、とは思ったものの、体温計の行方について一応聞いてみるも、「えー、知らないよ」という返事。

まただ。
体温計は、これで二つ目だ。

先日は、妻のハンドクリームが姿を消したらしい。
そのちょっと前には、私のボールペンが消えたし、娘のお気に入りの、「シルバニアファミリー」の人形がみつからないらしい。
とにかく、様々なものが、使おうとしたとき、消えていることに気づく。

あったはずのものがない、それだけならそんなに不思議なことではない。
いつもの場所にしまったつもりが、どこかに置きっぱなしにしたとか、誰かが使って、別のところにしまったとか、原因は色々ある。
だが、ここ最近の現象で不可思議な点は、どんなに一生懸命に探しても出てこないということだ。
それに、こんなに様々なものがなくなっている、という点も不可思議だ。
置いたつもり、しまったつもり、の「つもりちがい」にしては多すぎる。

別の日、ふと思い立って大掃除を決行し、収納の中や、子どもたちのおもちゃなど箱などを整理して、断捨離を行った。
実は、このおもちゃ箱が、怪しいと踏んでいた。子どもたちが隠してしまったか、おもちゃを片付ける時に入ってしまったか。
しかし、ここ最近で消えたものたちは、出てこなかった。

私は、推理小説の名探偵のごとく、腕を組んで、片方の手の親指と人差し指を、あごにあてて「うーん……」と考えた。

いまの2DKのアパートに住んで、もう8年くらいになろうとしているが、この不可思議な出来事は、そう、ここ半年から1年くらい。
家中の収納、おもちゃ箱、テーブルの下、ソファの下、あらゆるところを探しても出てこない。じゃあ、いったいどこ?

家の中に無いということは…… 外!?
まさか、外部の者による犯行か?
いや、外出時の戸締りはいつもちゃんとしている。
でも最近は泥棒の手口も巧妙になってきているからな……
ピッキングなども容易なのではないか?
はっ!? まさか裏の窓からの侵入かも? でもこの部屋、2階だぞ?
2階の窓は、隣のお宅から丸見えだしな。
うーむ……

「ちょっと! なにぼーっとしてるのー? 遅れるよー!」
妻の声でふと我にかえる。
別にぼーっとしているわけではない。我が家の防犯事情を案じていたのに。
失礼な。

って、やばい! こんなこと考えてる場合じゃない。本当に遅刻する!
慌てて部屋を出ようとしたら、息子の、アンパンマンの手押し車に足の小指を激しく強打した。
その日は、ずっと、足の小指が痛かった……

それから数日が過ぎて、体温計も新しく1つ買い足された。
なくし物たちは、相変わらず見つからないでいた。
幸いなことに高価なものが無くなっていないし、家のドアや窓に壊された形跡もない。
無くなっても、とてもとても困るというものではないため、不可思議な現象のことは、いつしか忘れてしまっていた。

ある現場を、目撃するまでは。

ある朝、私は、いつものように忙しく支度をしていた。
その日は、めずらしく子どもたちの目覚めも良く、朝食もスムーズに終了したので、準備は順調だった。
子どもたちを着替えさせ、あとは自分の支度である。娘はいつものようにテーブルに向かい、お絵かき帳を開いて、色鉛筆をじゃらっと全色取り出す。
2歳の息子は、お気に入りであるアンパンマンの手押し車を、押したり、自ら乗ってみたりして遊んでいた。今日は機嫌よくて良かった。時間通り、家を出発できそうだ。

私は荷物の準備をしながら、横目で何気なく息子の様子を見ていた。
すると……
アンパンマンの手押し車は、おしりを乗せる部分が、バイクのメットインのようにパカっと開くようになっているのだが、そこを開けて、中から取り出したのは……

「体温計!?」

我が目を疑い、その中を覗いてみると……
体温計、ハンドクリーム、私のペン、シルバニアファミリーの人形。
まさに、ここ半年から1年ほどで消えた、様々ななものが、そこには入っていた。
つまり、息子が、この中に入れていたのだ。
そうか、ここだったか。きみだったのか。
「謎はすべて解けた」
有名な名探偵のセリフを、思わず言ってみた。

それからも、ものが消えることは度々あった。
しかし、私は焦ったりしない。
ものが無くなったら、まずあの場所を見みると、たいていのものは見つかるからだ。
娘が「色鉛筆の、赤がみつからない」といえば、アンパンマンカーをパカっと開けると出てくる。
妻が「なべつかみ、ひとつ無いんだけど」といえば、アンパンマンカーをパカっと開けると出てくる。
まるで、なくし物をしたら交番に行くかのようであるが、「ここに入ってたらいいな……」と開けてみると、入っているのだ。

一連の謎は解けたが、これで油断してはならない。
息子は、また新たな隠し場所を見つけるかもしれないからだ。
しかし、息子にまったく悪気はないのだろうし、そこへ隠している時の顔が、たまらなく愛らしくもあるから憎めない。
これからも、息子との闘いは続いてゆくのだろう。
私はまた、きっと謎を解いてみせる。
***

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2017-03-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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