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メディアグランプリ

「美人の素」は私の中にある!?


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記事 : 鼓星(ライティング・ゼミ)

「のまぐちけいこ様って書いてみて下さい。漢字は野原の野、居間の間、目鼻口の口に計算する子どもです」
そう言って、真っ白いA4の紙を渡された。さすがプロ。イヤなところを突いてくるなぁ。書きづらい文字ばかりだ。

池袋駅のすぐ近くのザワつく喫茶店で、私は筆跡改善コンサルタント・坂本きらさんの個人レッスンを受けた。自分の字にずっとコンプレックスを持っていた。自称「小学4年生の時のクラスにいた字の上手な子レベル」。判読できないほど汚いというわけではない。でも、なんだかしゃきっとしていないのだ。画数が多い文字はお相撲さんが胡坐をかいたようなボッテリとしたボリュームになり、慌てて軌道修正しようとすると、次の文字が豆粒みたいなチマチマしたサイズになって統一感が無い。まさに、小学4年生並みに、全体をコントロールできないのだ。

日々の仕事はほとんどパソコンでこと足りているので、字が下手で致命的に困っているわけではない。しかし、半世紀近く生きてきた人間として、そろそろ小学4レベルは卒業したいなぁと思っていた。その気持ちが決定的になったのは、仕事でちょっとステキな大学教授に会う機会があったからだ。脳細胞がフル稼働するような好奇心を最高に刺激するお話しを聴いて、どうしてもお礼状を送りたかったのだ。私なりに文章は練りに練ったものの、小学校4年生の文字はやっぱり情けなかった。

そんな時、昨年末から通っているとある講座を一緒に受講していた坂本きらさんが「書道家・筆跡改善コンサルタント」の肩書を持つことを知った。私は、すがるような思いで「是非、レッスンを受けてみたい」と依頼したのだ。

「こんな文字が書きたいという理想の文字のサンプルがあったら、それを持ってきて下さいね」と言われて、友人からもらった年賀状や手紙の中から、「ああ、こんなふうな字がかけたらいいのに」と思うものを何枚か選んだ。坂本先生に見せると、「伸びやかで、活き活きとした文字が好きなんですね。私も、こういう文字が好きですよ」と言ってくれた。そこで、ずいぶんとハードルが下がったような気がした。私は美しくきれいな文字ではなくて、私は伸びやかで、活き活きとした文字が書きたかったのだ。

「では、次に、自分の名前、書いてみましょうか」
自分の名前は最も書く機会が多いのに、最も苦手とする文字だ。苗字も名前も角ばっていて、まるで色気がない。その上、左右対称の文字ばかりなので、バランスの悪さが目立つ。
ああ、イヤダイヤダイヤダと思いながら、ペンを持ってササッと切り抜けようとすると、先生はすかさず「そこ、焦っちゃだめです。逃げないで、ゆっくり、最後の一角まで丁寧に書けば大丈夫」と言う。文字の指導というよりも、なんだか、暗示に掛けられているようだった。

「丸みのある、伸びやかな文字が好きなんですね。この線、まっすぐ下にひくよりも、ほんの少しだけ膨らませてみると、どうですか? 理想の文字に近づいたと思いませんか?」

一番苦手だった「重」の文字が、自分でもびっくりするくらい、伸びやか活き活きとした文字になった。お手本のような美しい文字ではないけれど、いかにも私らしいと思える字だった。そこからは、一文字一文字、時間を忘れるほどに書くのが楽しくなった。

レッスンを受けながら、「これって、素人変身企画にそっくり!」と気づいた。
テレビ番組や女性誌の変身企画に登場するのは「事務機器メーカー人事部門勤務、婚活中」とか「中3を筆頭に男の子ばかり3児の母・専業主婦」とか、ごくごく普通のスペックの人たちだ。仕事や家事に追われているのだろう、「ビフォア」の肌はちょっとくすみ気味。自由に使えるお金は限られているだろうから、頻繁にエステやネイルに通えるわけでもない。2シーズンでヨレッとしちゃう「プチプラ」と呼ばれるお手ごろ価格の服でそれっぽく流行を取り入れるのが精いっぱい。そんな人たちが、カリスマ美容師や人気スタイリストの手にかかると、「アフター」はすっかりあか抜けて「女優さん?それとも、女子アナ?」と見まごうばかりにキレイになるのだ。

でも、「ビフォー」と「アフター」で一番変わっているのは、化粧でも服装でもなく、表情なのだ。ちょっと自信なさそうな、うつむき加減のビフォーに対して、アフターは嬉しさと自信に満ち溢れている。その気持ちが、美しさの一番のエッセンスになっているのだ。本当の美人の素は、カリスマ美容師が与えたものでも、スタイリストがコーディネートした服でもなく、彼女自身の中にあったものなのだといつも思う。

先生のお手本を必死でマネしたからといって、字が上手くなるわけではないのだ。
私の中に眠っていた、私らしさの中から、自分が納得できる文字が引き出されてくる。
あんなに、避けていた手書きが今は楽しい。
パソコンで入力して済ませられることを、ノートに伸び伸びと書いてみる。
ちょっとしたお礼も、メールではなく絵葉書にしたためてみる。
自信に満ち溢れた変身企画の女性たちと同じように、私も、自分の文字を見て、なんだか嬉しくなっている。

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2017-03-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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