メディアグランプリ

自分の人生を変えたいのなら、一度でいいからプロレスを観て欲しい。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:シロフクロウ(ライティング・ゼミ)

深夜にふと目が覚めて、テレビをぼんやりと眺めた。
ドタバタした音で目が覚めたのだ。

そこに映っていた人達はコスチュームに身を包んで所狭しに走り回っていた。
観客はまばら。少ない声援を背負って飛び跳ねたり、高いところから飛び降りるなどのパフォーマンスを演じていた。

プロレスはアントニオ猪木が現役の頃にはゴールデンの時間帯にも放映されるほどの人気だったから、小さい頃によく見ていたのを覚えている。
あの頃はプロレスは本気でやっているものだと思っていたけど、大人になった今は流石に単なるパフォーマンスだと知っている。

倒されてカウントが入っても、お決まりのように2.9秒の辺りで、リングを叩いていたレフリーの手は止まる。
蹴ったり殴ったりはしているけど本気でやっているとは、とても思えない。
格闘技だったら一撃が決まれば相手は直ぐ倒れるのにと思いながら冷めて見ていた。

毎日同じことの繰り返しの生活の中で、かつてあったはずの情熱など、もうしばらくは見ていない。
何をしても、何を見ても何も感じなくなっていた。
気持ちは冷めてはいたが、暇なこともあってテレビを見続けた。
しかし、つまらないはずなのに、何故かチャンネルを変えることが出来ないでいる自分がいることに気付いた。

「何故この人たちは、ここまで一生懸命にやれるのだろう? 観客たちは何が面白いと思って観ているのだろう?」

レスラー達は何度倒されても、その度に何度も立ち上がって相手に立ち向かって行く。
それが体力の続く限り永遠と。
まるで冷めた僕の心に何度もアタックしてくるようだった。心が次第に揺さぶられてくるのが分かった。

レスラーは観客を楽しませる事も忘れてはいない。
観客があっての自分達なのだと分かっているのだろう。苦しい思いをしながらも観客を楽しませるために、様々なパフォーマンスを演じては必死に動き回る。
危ないからと自分の行動にブレーキを掛けているようには見えない。
将来のことも考えてはいないのかもしれない。
この人たちは常に全力だ。

プロレスラーは自分のことだけではなく、対戦相手の事も考えている。対戦相手に配慮しないと大怪我をさせてしまうからだ。
手加減する事は何も悪いことじゃない。

きっとお互いに対戦相手が今までどんな苦労をしてきたのか分かっている。だから相手の努力を決して無にしない。

信頼し合っているからこそ試合は成り立っている。もし信頼していなかったら相手に身をゆだねて投げ飛ばされたりは出来ないはずだ。
どちらか一方でも自分勝手な考えを持って行動を取ったら試合は成立しないし、観客にだって不快な思いをさせてしまうだろう。

テレビは試合の合間に選手の紹介も挟んでいた。
選手達の生活に密着した映像だった。

教室の風景が映し出される。そこにいたのは友達と会話を楽しむ一人の女子高生。
「まさか、こんな人が?」

僕はその女子高生レスラーに目が釘付けになった。
見た目は何処にでもいる普通の女の子にしか見えない。決して体格に恵まれているとは言えない。

試合では体格差もあって、対戦相手には一方的にやられていた。しかし、やはり何度やられても立ち上がる。
大変なのは試合後も同じだった。
首や腰を痛めて満身創痍になりながらも、将来的に自分の身体がどうなるのか分からないのに、それでもプロレスラーとしてリングに立ち続ける。
親に止められても、それでもプロレスを続けている。彼女の意思は固い。

彼女は怪我をしたら涙を流すのだけど、痛いからと自分のために泣いているのではない。周りにいるサポートをしてくれている関係者や対戦相手、そして応援してくれている観客達に迷惑をかけるからと、その申し訳ない気持ちで泣いていた。

この人たちの考えていることは、いつも相手のため

「一体何がそうさせるのだろう? 原動力となるものは何なのか?」

彼女らに共通するところは劣等感を抱えていることだった。
家庭環境に恵まれずに、自分は誰からも必要とされていないと思い込んでいる人
ルックスや体型といった見た目で笑われて自尊心を傷つけられた人
何らかの犯罪被害を受けた経験を持つ人
様々な人がいる。

彼女らはどんなに辛い境遇にあっても立ち向かっていく。
それは相手に立ち向かっていくだけではない。自分自身にも立ち向かっていたのだった。
自分に負けないため、押しつぶされないために。

過去に出会った悪意のある人に傷つけられただけなのだから、自分に問題なんかあるはずがない。しかし被害を受けた人たちは、自分が悪かったのだと思って自分で自分を傷つける。

何故、テレビから目を背けられないのか分かった。
彼女らの姿を自分に重ねてしまうのだ。観客も彼女らの姿を自分に投影して見ているに違いない。
なんという素晴らしい人達なのだろうかと思うと、ジーンとするものが込み上げてきた。
まだ熱いものが僕の中にもあるらしい。

お金の為、地位や名誉の為、賞を取る為、異性にもてる為
「なんだ、そんな物の為に生きなくてもいいんじゃないか」
そう思うと肩の力が抜けてきた。

プロレスをつまらないものだと感じるようになったら、その時こそ自分は終わりだと思う。
一番大事なものは報酬ではない。内から湧き上がる感情こそが一番大事なのだと思う。
僕も誰かの為に生きていきたいと思った。

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2017-03-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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