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これから社会に出る方に、お伝えしたいことがある


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:うらん(ライティング・ゼミ)

 

 

ブラインドタッチができない。

パソコンで入力する際、キーボードを見ずに文字を打てないのだ。

画面を見て、手元を見て、画面を見て、手元を見て……。

これに加えて参照する原稿でもあろうものなら、画面と手元と原稿の三点を、行ったり来たりしなければならない。

なんとまぁ、無駄な動きをしていることか。

 

その上、指を置く位置が正しくない。

自己流に指をキーに置いているものだから、動きが不自然になっている。

ピアノの黒い鍵盤を弾くように、手は甲ごと前後に動き、文字によっては肘が上がることもある。

そして、まるでジャズピアニストのごとく、身体が右に左に揺れているのだ。

 

スタバでノートパソコンを広げている人を見ると、画面だけを見つめてカシャカシャと素早く文字を打っている。しかも、キーを撫でるように優しく。

うらやましいなぁ。どうしてあんなに速く打てるのだろう。

あの人たちは超人なのだろうか。それとも、あのくらいが普通なのか。

 

このままでは何とも効率が悪い。そう思い、これまで何度か直そうと試みた。

教則本に従い、正しい位置に指を置いてみるのだけれど、なかなか習得できない。ついじれったくなって、元のやり方で入力してしまう。ン十年のクセというものは、ちょっとやそっとでは抜けないものだ。こんなことなら、はじめに正しい指使いを覚えればよかった。

 

そもそも、私が社会人になったばかりの頃は、職場にパソコンなんてなかった。

ある日、ワープロというものがやってきた。初めは、一人一台ではなく、各部署に一台ずつ。このときが、私のキーボード事始めになる。

誰もが初めてだったので、誰も使い方を教えてくれない。自分で学んでやるしかない。

試行錯誤を繰り返し、何とか使いこなせるようになった。すると、それまでは興味は大いにありながらも決して自分からは触ろうとしなかった職場のおじ様たちが、どれどれと寄ってくる。

そして、こう言うのだ。

「悪いけど、この原稿をワープロで清書しておいて」

 

これ、清書する機械じゃないんだってば!

心で叫んで顔で笑って、その仕事を引き受けるのだった。

 

そうして、この人も、あの人も、と皆がドサドサと私に原稿を渡してくる。

これではまるでタイピストじゃないか。自分の本来の仕事ができやしない。

とにかく、これらの原稿を早くやっつけてしまおう。

 

そうして、がむしゃらにキーを打ちまくった末に身に付いたのが、自己流の指使いだった。

これが、今日のパソコン生活まで引きずっている。

 

これに似て、こんなこともあった。

メキシコダンスを、プロの先生に習ったときのことだ。

これより先に、私はメキシコに一年ほど住んだことがあった。そのとき、職場にいた現地の職員にメキシコダンスを教えてもらい、滞在中にひと通りのダンスは覚えた。

あまりに楽しかったので、日本に帰ったら本格的に習おうと思ったのである。

プロの先生のクラスに初めて行ったときにそのことを告げると、こう言われた。

「それは残念だったわね。あなたがその一年習っていなければ、一年早くマスターできたのに」

つまり、既に一年やってしまったために、それを忘れるのにまた一年かかるというのだ。

 

 

クセというものは、なかなか直らない。

あらためて考えてみると、私はペンの握り方も、テニスラケットの振り方も、包丁使いも自己流で、ちょっと変なことになっている。そうしたものを挙げていったら、まだまだありそうだ。

 

こんな私だから、思うことがある。

こんな私だから、言えることがある。

特に、これから社会に出ようとしている方に、お伝えしたいことがある。

 

三月になって、企業の採用情報の公開が解禁となったせいか、この頃リクルート姿の学生を見かけるようになった。

電車で乗り合わせる彼ら、彼女らは、緊張した面持ちでノートを見つめていたり、ファイルを繰っていたり、iPodにリラックスした表情をしていたりと、まちまちだが、みな一様に初々しく眩しい。

なかには、休暇などを利用して、実際に企業や店で実習をしたり、アルバイトをすることで、その事業を経験してきた人もあると思う。

一方で、自分が志望する企業に、そうしたツワモノたちがエントリーしてくることを恐れている人もいるだろう。

自分には実習や研修の実績もない、何の取柄もないと、不安に思っている人もいるかと思う。

そうした人たちに、お伝えしたい。

あなたはあなたで、自信をもって臨んでほしいと。決して恐れることはないと。

 

在学中に社会の事業を実際に体験して学んでおくことは、就職する前にその事業について知っておく、という意味では有益だ。

けれども、少しでも経験があった方が、それだけ採用者側でも好いはずだという狙いがあるのだとすれば、それは必ずしも当たってはいない。

 

企業が新しく人を採用する場合、中途半端に経験を持った人を、それほど歓迎しないように思う。

なまじ経験があると、その型が身に付いているために、新しく何かを学んでもらうには、それがかえって邪魔になることがあるからだ。

ワープロ時代から社会人をやっている私なので、これまで数多の後輩を見てきた。

総じて言えるのは、前職などで心得があると自負している人ほど、新しい仕事を習得するのに時間がかかるということだ。過去のやり方が抜けない。

仕事というのは、共同作業である。皆の歯車がかみ合うことで、うまくいく。

一つでも違う型の歯車があると、スムーズには動かない。

 

経験があると、それだけ重宝なように思われがちだ。だが、実は、一つひとつの事業に、皆それぞれの型がある。既に違う色に染まっている者を入れるより、何の経験もない、ピュアで真っ白な者を入れた方が、組織にとって良い結果につながることになる。

 

だから、就職活動のなかで、実習経験のないことを不利に感じている方がいらっしゃるのだったら、その方たちよ、どうか自信を持って面接に臨んでほしい。

そして、自分はまだ何色にも染まっていないので、スポンジのようにガンガン吸収する余地があるのだと、胸を張ってほしいのだ。

 

というこの文章を、私はジャズピアニストのような動きで入力している。
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2017-03-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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