メディアグランプリ

命がもったいない


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記事:777(ライティング・ゼミ11月コース)
 
 
「大腸がんや胃がんで死ぬなんて、命がもったいないですよ」
 
大腸の内視鏡検査のあと、医師が言った。
がんと言えば、「不治の病」「死に至る病」というイメージが刷り込まれていた私にとって、その言葉は衝撃だった。
 
四十代半ばに受けた内視鏡検査で、大腸に数センチ大のポリープが見つかった。大腸ポリープは5mmを超えるとがん化する危険が高くなるため切除がのぞまれる。このことを踏まえると、私のポリープはかなり大きく、かつ危険な状態だったと言える。
 
検査を受ける一年ほど前から、食事をするとみぞおちの下にぎゅっと収縮するような痛みをおぼえるようになっていた。ただ、違和感はいつも一時的なものだったので、いつかなおるだろうと考えていた。
しかし、症状は変わらなかった。そのうちなんとなく体が疲れやすくなったなと感じることが増えはじめ、仕事に行くときは、それまで飲まなかった栄養ドリンクを飲んで気合いを入れるようになった。
 
けっして激しい痛みではなく、ひどく体力を消耗するわけでもなかったから、大ごとにとらえていなかった。いや、とらえないようにしていた。直感的には一度病院に行くべきだと警鐘が鳴っていたが、恐怖心のほうが大きかった。
もしかしたらとんでもない病気で、とんでもない手術をすることになるんじゃないか……
栄養ドリンクを習慣的に飲むようになったのも、それで解決できる問題だと思い込もうとしていたせいかもしれない。
だが、長く不自然な痛みや症状がつづくのは正常ではない。次第に不安はふくらみ、とうとう自分一人では抱えきれないほどになって、私は知人に教えてもらったクリニックに駆け込んだ。
 
「このまま放っておいたら、大変なことになっていましたよ」
 
検査を受けたあと、医師に怒られた。もっと早くに検査するべきだったと。
問題のポリープは検査中に切除され、さらに詳しく調べるため、採取した組織は病理検査にまわされた。結果は、本当に幸いなことに良性で、心配しなくてもいいとのことだった。
とはいえ、経過を観察する必要があったので、まずは半年後に再度検査を受け、問題がなければそこから一年後に検査というかたちで、以降定期的に大腸だけでなく、胃も合わせて内視鏡検査を受けていくことになった。
 
知り合いにこの話をしたら、そんなに検査しつづけないといけないのかと嫌そうな顔をした。しかし私はまったく苦に感じていなかった。むしろ、それによって早期にポリープや異変を見つけられるなら、もっと検査を受けたいくらいだった。なぜかといえば、事前に想像していたものとはまったくちがって、驚くほど楽な検査だったからだ。
 
私が検査を受けたクリニックでは積極的に鎮静剤を使用していた。ほとんど意識を失っているような状態で検査をしてもらえるので、痛みや苦しみはまったくなかった。というか記憶そのものがなかった。目がさめたら、とっくに検査は終わっているのだ。それは口から内視鏡を入れる胃の検査も同様で、苦しむことも、むせることもなかった。
 
現代の医療はすごいなと感心するばかりで、その凄さを体験できることが楽しくて、次の検査を待ち遠しく思うほどだった。
仮にポリープができたとしても、一年に一回、内視鏡検査を受けていれば、ほぼ初期段階、悪性化する前の段階で切除できるので、問題になりようがない。しかも保険が適用されるから検査費用は7000円ほどで済む。であるなら、この程度の検査を怠って命を落とすのは、医師が言ったように、本当にもったいないことだと心の底から思えてくる。
 
検査後、私はさっそく両親や親戚、友人たちに内視鏡検査をすすめた。ところが、検査は苦しくて面倒なものというイメージが強いのか、思ったほど良い反応は得られなかった。それでも検査を受けたという人は何人かいて、感想を聞いてみたら、みんな口を揃えて、あまりにも楽なのでびっくりしたと言っていた。
 
最近は人生140年とまで言われるようになった。医療技術の進歩を考えれば、あながち荒唐無稽な話ではないと思う。
 
平均寿命について、世界保健機関(WHO)の2023年の調査では、寿命がもっとも長い国は「日本」で、84.3歳となっている。ちなみに、健康的に生活できる期間を示す健康寿命の1位も「日本」で、74.1歳だった。
この結果は、日本が経済的に豊かであり、治安がいいことに加え、医療制度が充実し、医療技術が高いことを示している。
 
検査にせよ手術にせよ、体に負担の少ない技術は、今後AI(人工知能)の進歩と相まって加速度的に開発されていくだろう。そうすれば医療を利用する心理的なハードルも経済的なコストも、どんどん低くなるはずだ。
安心できて、なおかつ安い医療で命を守れるようになっていく。必然的に寿命はのび、いかに肉体を健全に保つのかがいっそう大切になっていく。そこで活用したいのが、検査だ。
 
病気の多くは発見が早ければ早いほど、治る確率は高くなる。そのためには定期的に検査することがのぞましい。定期的にとまではいかなくても、体に異常や異変を感じたら、ひとまず専門の病院で検査する。それで問題がなければ安心できるし、問題が見つかればただちに治療に取りかかれる。検査を受けて悪いことはひとつもないのだ。しかし、私の身のまわりを見るだけでも、まだまだ検査に対して身構えてしまう人は多いようだ。
 
だから私はもっとみんなに声をかけ、ときには説得していきたいと思う。
検査は怖いものでも、大変なものでもないから、どんどん受けよう。そうすることが病気を遠ざけ、命の価値を高めることになるんだよと。
そして、ここまで言っても納得してもらえない人には、“殺し文句”としてこう言うのだ。
 
「病気で命を落とすなんて、もったいない」
 
 
 
 
***

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2025-02-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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