メディアグランプリ

教えたいけど、教えたくない。多分今からでもGWに間に合う、知名度ほぼゼロの旅行先


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Meg(ライティング・ゼミ平日コース)

「オーストラリアぁ?!」

チェックしていた旅行会社のサイトに向かって、思わず素っ頓狂な声をあげる。クリックしたのは「アメリカ・カナダ」のボタンだったはず。
一度前のページに戻って確認する。
間違いはない。
「アメリカ・カナダ」のページだ。

それなのに、ニューヨーク・ロサンゼルス・ラスベガス・カナダと並んで、おすすめ地域の一覧には、あろうことか「オーストラリア」の文字。

短期の春休み語学留学旅行を計画中の学生をターゲットにしているのだろうか。そんなことを推測をしながら、次のサイトにポインターを合わせる。

他の旅行会社のラインナップも似たり寄ったりだ。
人気の「アジア」「ヨーロッパ」「ハワイ」が一面を飾る。
その後にある「アメリカ・カナダ」と書かれた小さなボタンを押した先には、ニューヨーク・ロサンゼルスに続いて、ディズニーワールドが入っていたり、サンフランシスコが入っていたり。

「これなら空いてそうだな」
いくつかサイトを見て回った後、ひとりごちてパソコンを閉じる。

1ヶ月後に迫ったゴールデンウィーク。
なかなか長期休暇を取れない勤め人たちの足元を見た、法外な価格設定にもめげず、私は今年、海外旅行の計画を立てた。

行き先は、「アメリカ・シカゴ」

先ほどから、お得なパッケージツアーなどがないか、旅行会社のサイトを入念にチェックしていたのだ。

ところが、どの旅行会社のサイトを見ても、シカゴという町はどうやら不人気極まりないようである。結局、一件のツアーも見つからなかった。

シカゴは実は、ニューヨーク・ロサンゼルスに次いで、アメリカ第三の都市である。アメリカ中西部の主要都市で、世界都市ランキングでも、パリや香港、東京と並んで、トップ10に名を連ねる。

それなのに、日本での知名度は甚だしく低い。
ほとんどゼロと言っても過言ではないだろう。

実は以前、二年ほどこの地に住んだことがある。
初めて会った人にそんな話をして二回目に会うと、だいたいこうなる。
「Megさんってボストンにいたんだっけ?」「シアトルに住んでたんだよね?」

かわいそうになるぐらい存在感のない町が、シカゴである。

では、そんな影の薄い町に、わざわざ長期休暇を使ってまで、なぜ旅行するのか?

男子大学生が「親がうるさいから仕方なく」何もない田舎に渋々帰省するのとは訳が違う。大枚をはたいて久しぶりに再訪したくなったのは、シカゴという町が、隠れた観光都市だからである。

まず、シカゴの町は非常に美しい。

文字通り、ゴミが少ない。
冗談だと思われるかもしれないが、これがシカゴに対する私の第一印象だ。

昔、夏休みにニューヨークに旅行した友人に感想を聞いたら、第一声が「ゴミ臭かった」だったのを鮮明に覚えている。お世辞にもキレイとは言い難いニューヨークと比べると、シカゴは非常に清潔感がある。
(もちろんニューヨークの場合、そのゴミゴミしさまでもが活気と熱気を演出する小道具にも思えるのだけれど……)

美しいというのは、もちろん清潔という意味だけではなく、景観も素晴らしい。シカゴはミシガン湖のすぐほとりに位置するため、町全体から湖が見える。湖と言っても、九州の1.5倍ほどの大きさなので、見た目にはもはや「海」である。要は、町全体が「なんちゃってオーシャンビュー」の絶景なのだ。

シカゴに引っ越した頃、窓から見えるミシガン湖の写真をFacebookに投稿したら、実際に「お! オーシャンビュー!」とコメントしてくれた友人がいた。

砂浜も広がっていて、「なんちゃってビーチ気分」も味わえる。
そう言えば、滋賀県出身の先輩が昔、こんなことを言っていた。
「海はベトベトするけど、湖はベトベトせん。海で遊ぶ意味が分からん」
サラサラの砂浜で日光浴していると、そんな言葉が実感できる。

旅行に欠かせないユニークなグルメも揃っている。

中でもユニークなのは、キッシュのようなピザ「ディープディッシュ・ピザ」だろう。キッシュのホワイトソースにあたる部分が全部、トマトソースとチーズ、というカロリーの塊のような食べ物だ。

シカゴに引っ越してすぐの頃、一切れ食べてあまりのボリュームに「金輪際、ピザは食べるまい!」と本気で思った。
ところが不思議なもので、数週間もすれば、また食べたくなるのである 。中毒性と話題性は、大盛りで有名な日本の人気ラーメン店も同じメカニズムなのだろう。

行動派のためのアトラクションも充実している。

今回の旅行中、絶対にもう一度と思っているのは、シカゴの摩天楼を眺めながら川を下るボートツアーだ。町のど真ん中を流れるシカゴ川の流れに悠々と身を任せ、あおるビールの美味しさは筆舌に尽くし難い。住んでいる間にも、4〜5回は乗っただろうか。

スポーツ観戦も、美術館も、ミュージカルも、ジャズバーも……
とにかく、枚挙にいとまがない。
そして、そのどれもが一見・一食の価値を持っていながら、観光然としていないところがいい。観光しながら同時に、程よい「地元感」も味わえるのだ。

それなのに、悲しいほど、知名度が低い。

ニューヨーク、ロサンゼルスといった大都市が、あまりに目立ち過ぎるせいかもしれない。まるで、超優秀な長男と、遊び呆けた次男の姿を見て育った三男が歩む、華やかさには欠けるけれど、幸せに満ちた着実な人生のような町、それがシカゴである。

もしもまだ、ゴールデンウィークの旅先に悩んでいる方がいたら、是非シカゴをおすすめしたい。
アメリカには行ってみたいけれど、華やかな大都市は何だか気後れするという方にも、もってこいだ。
あるいは、有名都市はもう行ったし、という方にもローカル感を楽しんでもらえると思う。

大好きな町があまりにも知られていないのが悲しくて、事あるごとに、私はこうして観光大使よろしく、シカゴの魅力を語りまくっている。

でも、心のどこかで、こうも思うのだ。

「どうか、有名になりませんように」
「私だけの素敵な町であり続けますように……」

ツートップの陰に隠れたちょっぴり地味なアイドルを、デビュー当時から密かに応援し、見守るような、そんな気分。
売れて欲しいけど、売れて欲しくない。
知名度の低さが、悔しいような、嬉しいような……

「これなら空いてそうだな」

旅行会社のサイトにツアーを見つけられずに、そう呟いた私の表情にはおそらく、そんな複雑な笑みが浮かんでいたに違いない。

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2017-04-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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