メディアグランプリ

「さ行」だけではダメなんだ。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:apisuto(ライティング・ゼミ)

「男性に効くのはさ行だよ」

女子高、女子大と女性ばかりの環境にいた私は、男性と話すのが苦手だった。
そんな私に、自称恋愛マスターを名乗る先輩(男性)が教えてくれた「男性と話すときのコツ」だ。

「え、さ行?」

私は思わず、大きな声で聞き返した。
その先輩が言うには、さ行には男性が喜ぶ要素が詰まっている。男性との会話で困ったら、さ行で返答すると間違いないのだと教えてくれた。

「男性に効くさ行」とはこういうことだ。

さ:さすがですね
し:知らなかったです
す:素敵ですね
せ:センスがいいですね
そ:尊敬します

その説明を聞いて、「なるほど」と深くうなづいた。

単純な私は、早速、先輩の教えを実行した。

仕事で自分がやるべきことを、先回りでやってもらったときには「さすがですね。ありがとうございます!」

何かを教えてもらったときには、(それが例え自分が知っていることであってもなくても)「知らなかったです!」と答えた。

自分で言うのもなんだが私は単純だけど、飲み込みは早い方だ。

慣れてくると、素敵な洋服を着ている方には「センスが良くて素敵ですね。さすがです!」といったようにトリプルで使うこともできるようになった。

確かに言われた方は「またまた、そんなこと言って~」と言いながらも、まんざらではない感じ。さすが、彼女が途切れたことのない恋愛マスターの先輩の教えだ。

そこから私はいかに素敵な彼氏をゲットできたのか……と話をもっていきたいところなのだが、結局、よい成果はあげられなかった。

なぜなら、最初の「つかみ」はよくても、その後の話が続かないからだ。改めて気づいた。それまで「普通」と思って生きてきたけれど、私はあらゆる情報に疎くて、何も知らないのだということに。

女子高、女子大は、同性で同世代ばかり。話題にあがるテーマは、大体似たようなものだ。学校やクラブ、ドラマや美味しいご飯やさん……。顔さえ見合わせれば、話は自ずとそのテーマで盛り上がる。それ以外のテーマに詳しくなくても、問題なく楽しく過ごせる。だから、知りたいとも知ろうとも思わなかった。

しかし、異性で年代も世代も違う、となると、話のテーマの幅がぐんと広がる。政治や国際、歴史や文化、スポーツ、生活習慣……。

「どう思う?」「〇〇って知っている?」と聞かれても、そもそも知らないので、答えようがない。

せっかく、さ行のつかみで和やかな表情になった男性が段々とつまらなさそうな表情に変わる。そして、沈黙の時間が増えて、なんとも言えない微妙な雰囲気が流れる。

「これではいかん」と思い、話のネタを増やすため、新聞を読むことにした。これまでは新聞のテレビ欄しか読んでいなかったのに。

しかし、読み始めると新聞は意外と面白い、ということに気付いた。

アメリカの大統領選で立候補者が競争相手と主張を戦わせている様子を見ると、ハラハラドキドキする。スポーツはマンガではなくリアルな人が織りなすヒューマンドラマだし、歴史上の人物の功績や出来事が今、私たちが生きている社会につながっていることを実感するとバラエティー番組の「トリビアの泉」のように「へぇぇーーーー」とボタンを何回も押したくなる感じだ。

「男性と会話を弾ませるため」という不純な動機はいずこへ? これまでは見ることもなかったニュース番組や新聞を自然と読むようになった。いや、どちらかというと読まずにはいられなくなったのだ。

すると、私の中での話題のストックも自然と増えて、さ行を使わなくても、男性との会話が続くようになった。

そんな私の悩みの種は、「男性との会話」から「ライティング・ゼミ」に移っている。
毎週月曜23:59が締め切りのライティング・ゼミの課題を出そうとパソコンの前に座っても、なかなか筆が進まない。

そして、毎週、フェイスブックであがってくる他の受講生の課題のレベルの高さに圧倒され、
自分の表現力のなさに落ち込んでしまう。萎縮してしまい、課題の提出を見送る日々が増える。

ようやく書きたいことが思い浮かんでも、頭の中のイメージや気持ちをうまく言葉で表現できなくて、もどかしくてたまらない。

書き始めても、どこかで聞いたような上滑りの言葉しか出てこない。私がかつて男性に「さ行」ばかりを多用したように、表面だけの薄っぺらい言葉では後が続かない。

「これではいかん」と思って、書くネタを増やすため、とりあえず小説を読もうと思った。でもここ数年、小説なんてほとんど読んでいなかった。年間5冊も読めばよく読んだ方だ。好きな小説家もいない。何から読んだらいいのか分からないので、まずは本屋大賞の本から読み始めた。

ライティング・ゼミに通い始めて約3か月。読み終えた本は、2017年4月24日現在で28冊。

すると、段々と変化が出てきた。

「とりあえず読まなきゃ」と思っていたが、読む本数が増えるにつれて、面白いと思った小説家の別の作品を購入したり、映画化された作品も見たくなってAmazonプライムに入ったり。映像を見たら、今度は舞台を見たくなり、ぴあでチケットを購入したり。

男性と楽しく話したくて新聞を読み始めたときと同じように、最初の動機はちょっと不純だったけれど、今は、知ることや読むことの楽しさにはまりつつある。どちらかというと沼にはまりつつある感じに近い。より一層、深みに、深みにはまっている感じだ。

もちろん楽しい沼だ。いっそのこと、スブズブと沼にはまって、読書の沼でおぼれてみるのも、それはそれで楽しいかもしれない。

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2017-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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