三浦さんが黒板の文字を消す様子を見て、ふと、気づいた。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:出原 真子(ライティング・ゼミ 日曜コース)
4月9日(日) 12:48
私は地下鉄をおりて、梅田の街に出た。
コンビニの角を曲がってすぐ、
カフェのように小洒落た外観の店を目指す。
扉を開けると、美容師さんが笑顔で迎えてくれた。
そして、メンバーズカードを取り出して、
いつものカットメニューをオーダーした。
……それまでの自分を『なかったこと』にするためだ。
私は、大学を卒業してから編集として働いている。
いわゆる、プロと呼ばれるライターやカメラマンがそろう現場では
ディレクターとしてその場を仕切る。
まわりからはかっこいいね、楽しそうだねと言われる仕事。
実際、そうなんだろうなとは思う。
しかし、正直に言おう。
最近の私は、文章を書く人としては
ありえないミスを連発している。
天狼院でいうと、『鼻毛問題』だ。
さらに、自分の言葉が届かない。
いや、届けているつもりになってると言えばいいのか。
ともかく、私が担当した記事に限って反応が悪く、
ネット記事になると閲覧数やクリック率なんかで
あからさまな結果として現れる。
定期的にそんな負のスパイラルがやって来る。
やめてくれ、勘弁してくれと毎回思うけど
時々来る偏頭痛みたいに、私から離れないのだ。
そんな時に、私は決まって髪を切るようになった。
ちなみに、夏目三久かホラン千秋の画像を
見せながら美容師さんにオーダーしている。
なぜ切るのか。
もちろん、伸びたからという単純な理由はある。
……が、切ってしまえば、新しい自分になれるはず。
明日からはつまらないミスや、記事に対する反応や評価に
悩む必要なんてないはず。
そんな気持ちになれるからだと思う。
思い込みたいんだと思う。
……現実の自分から、都合よく目を背けて、だ。
4月9日(日) 13:03
カット台に通された。
予約はその4日前、仕事帰りの電車に揺られながら
ホットペッパービューティーで済ませていた。
自分の禊みたいな行為を、
ネットで予約できるなんて、便利になったものだ。
いつもの美容師さんと他愛もない話をしながら
癒しの時を過ごす。
カットが終わり、鏡の中の自分を見た。
これでよし。
月曜日からは新しい私だ……なんて、思った。
美容院を出た私は、電車に乗って京都天狼院に向かった。
ライティング・ゼミを受けるためだ。
ドキドキしつづも、別のイベントで知り合った人を見つけて
ほっと一息。
挨拶を交わしたり、携帯をいじったりしていたら
いよいよ、三浦さんの登場。
そこで私はちょっと面食らった。
三浦さんは、チョークを持っていたのだ。
深緑の壁だと思っていたら、黒板だった。
東京や福岡との同時中継に、通信講座、
加えて、これまで何度も行われてきたライティング・ゼミ。
2,000人が受講してきたというから
一回や二回の開催ではないだろう。
だから、てっきり三浦さんがスライドを操作しながら
授業を行うものかと思っていた。
そんな小さな驚きを抱えつつゼミは始まった。
すぐに、内容を理解するのに必死になった。
自分の中で、すぐには消化しきれないもどかしさを感じながらも
体得してみたい。自分の手でコンテンツを生み出してみたい。
そんなワクワク感が芽生え始めたころ。
三浦さんが黒板の文字を消す様子を見て
ふと、気づいた。
黒板の文字を消すことは、私が髪を切ることと同じではないかと。
私が書いてきた文章、生み出してきたもの。
これらは、一度は黒板上、いや紙面やネット、
さらには人の記憶に残る。
もしかしたら、携帯の写メで取ったり
スクリーンショットを取ったりする奇特な人がいるかもしれない。
そこを、黒板消しで消そうとしても、
髪の毛を切って、目を背けて、なかったことにしようとしても
きちんと残る。消えない。決してなくならない。
チョークを持つ、文章を書く、自分自身が変わらない限り
この行為はくり返されていく。
『人生を変えるライティング・ゼミ』
まさに、今の自分の期待と決意が重なる。
新しい自分になるために、今の自分を変えるために
そして文章を書く人として、胸を張って生きていくために
強く歩き出したい。
ということで、ふつつか者ですが
4ヶ月間よろしくお願いします!
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