メディアグランプリ

器用貧乏が星座を紡ぐ時


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記事:カプチーノ(ライティング・ゼミ日曜コース)

器用貧乏。
そう、私は器用貧乏だ。コンプレックスと言ってもいい。

私をよく知るメンターであり師である上司がぼそっと私のことを「器用貧乏だな」とつぶやいたその瞬間を今でも覚えている。決して私を卑下して言ったのはではない。むしろほめるに近い文脈だった。何がしかの会話の時に出てきたのだが、ただ、言い得て妙だったので心にぐさりときて、未だに記憶に残っている。あれはもう何年前だろうか。

自慢じゃないが、というか、自慢にならないのは自分がいちばんよくわかっているのだが、仕事も勉強も運動も人並みにできる。仕事はよく任されるし、期待にはある程度応えられる。得意な領域もあれば、趣味だってある。総合得点で言えば高い。だけど、これ、というものがない。

広辞苑で器用貧乏をひけばこうなる。
「なまじ器用なために、あれこれ気が多く、また都合よく使われて大成しないこと。また、その人」

なるほど。うれしくない。残念すぎる。どうなるんだ、この先。
「いろいろなものに手を出すばかりではなく、何かに集中するぞ!」そう思ったこともあった。「他の人に負けない得意分野を作るぞ!」そう思ったことは一度ではない。

しかしながら、未だに「これ!」というものはない。「私は何ができます」と自信を持って言えるものがない。

器用貧乏な私は今、ライティングに挑戦している。自分の強みを強化する、幅を広げる、そんなことにつながると思って挑戦している。メッセージング力が磨かれて、仕事力が上がる。発信力が上がって影響を与えられる。そもそもロジカルシンキングが鍛えられる。

……でも、これって器用貧乏を助長するだけ? そんな弱気な顔がのぞく。

自分の性(さが)だろうか。これまでも多くのものにチャレンジしてきた。学びは人生を豊かにすると思ってやってきたし、いろんなことにトライすることは純粋に楽しいと思ってやってきた。何より自己成長につながると思ってやってきた。経営管理やマーケティングを担当していたので会計やマーケティング、それからコミュニケーションを学んだ。陶芸も楽しむし、野球やテニスも続けている。ちょっと変わったところではアイスの食べ歩き。そして今、ライティング……。

あれこれと気が多く、まさに広辞苑の定義通りだ。自分は一生器用貧乏から逃れられない運命なのだろうか? 星の数ほどいるライバルの中で、星屑のような小さな才能が光り輝くときはくるのだろうか……?

そう思ってふと満天の星空を思い出した。あれは一人で行った日本アルプスでの星空だ。何かが引っ掛かった。

(!)

星座だ。
夜空に輝く無数の星たち。中にはキラ星の如く輝く星もある。一方で、名も知れない数々の星々。まるで私の取るに足らない1つの得意分野のような存在。しかし、それらの星々も複数が結びつくと、しかも必ずしも結びつかないと思っていた星同士までもが結びついて星座になる。

星からすればたまたま星座の一部になったとも言えるだろうし、星座を創った人から言えば、敢えて人為的に星々を結びつけてそこに一つの形や意味を与えた、とも言えるだろう。

もしかしたら、器用貧乏の象徴である小さな才能や多くの経験も同じではないだろうか。新しいアイデアというのは、既存のアイデアが組み合わさって生まれるという。ということは、些細な才能や過去の経験の組み合わせ次第で、新しい何かを生み出せるのではないだろうか。

そうだ、スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式で言っていた。カリグラフィーの授業を受けたからのちにマッキントッシュが誕生したと。カリグラフィーの授業を取ったからこそマッキントッシュの美しいフォルムが生まれたと。一体誰が予想しただろうか? ジョブスが受けたカリグラフィーの授業とマッキントッシュの誕生がつながることを。

さらにジョブスは言った。未来を見ても点と点はつながらない。過去を振り返った時に初めて点と点はつながると。

一見関係ないと思っていたこと、つまりそれは小さな才能であっても過去の経験であっても、それらはつながり得るのだ。逆に言うと、まったく次元の違う点と点、まったく分野の異なる点と点、ギャップのある点と点を結び付けられたら……、何か面白いことができるのかもしれない。自分のオリジナリティーを出せるのかもしれない。圧倒的じゃなくてもいいじゃないか。少しでも自分らしさとして価値を発揮できれば。

たくさんの点があるのが器用貧乏のいいところ。よし、点と点を結び付けられるようにアンテナを張ろう、自分なりの星座が創れるように。

器用貧乏との決別。いや、いっそのこと器用貧乏を誇りに思ってしまおうか。自分の中にある小さな得意や経験をつなげれば新しい未来が開ける可能性があるんだと。そう楽観的に考えて、新たな自分を創っていこうとするのも悪くない。

何につながるかはさておき、どんな星座になるのかはさておき、今日も私は文章を書く。

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2017-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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