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まんじゅうこわい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:島袋裕子(ライティング・ゼミ日曜コース)

職場には、珍しく茶道部がある。
月に1度仕事が終わってから集まり、年に1度休日に有名な神社でお茶会を開いたりする程度のユルい活動であるらしい。
お作法をまったく知らない私が、“いっちょかみ”するにはとても良いのだが、致命的な難点があった。

私は和菓子が苦手なのである。

それも、見ただけで卒倒しそうなほど。
水ようかんのちっさい缶詰(お中元のセットでもらうアレ)を食べきるのに、2時間かかったことがある。
同サイズのプリンなら1口で吸えるだろう(やらないけど)。
コンビニでも売られているぐらいメジャーな、しっとり系のクッキーも、“しっとり”の犯人が白あんだと1口で見抜き、それから20年近く食べていない。

数年前、突然の思いつきで京都検定を受けることにした。
生まれも育ちも大阪、両親は九州の出身で、京都とは縁が薄いため、1から覚えなければならない。
私は頭が悪いので、テキストだけでは覚えられない。
なので、自分が気になった神社仏閣や博物館を少しずつ、実際に巡り始めた。
地理という横軸を体験すると、歴史という縦軸も少しではあるがわかってくる。
京都は、狭いところに名所がギチギチに詰まってるので飽きることはないし、相関関係がわかるとまた興味が湧く。

その他、宇治で茶摘み体験をしたり、祇園祭では(山鉾巡行の)“山”でちまきや手ぬぐいを売るお手伝いもした。このちまきは、厄除けとして家の軒先に飾るもので、食べられない。

そんな体験型学習好きな私の難関が出てきた。
京都名物“和菓子”である。

京都は特定の日に食べるお菓子がある。
節目を祝うお菓子。
子供の成長を願うお菓子。
厄を除けるお菓子。
故人を偲ぶお菓子。
お菓子は日々の営みに溶け込み、人々はお菓子で季節の折り目を感じる。

……ことはわかっているが、正直、スルーする気満々だった。
ところが運良く……と言っていいだろう……京都に興味があることを周りに話したら、銘菓をいただいたり、お店へ連れて行ってくれる親切な方が現れる。

実は私の母も、長崎で生まれ、若い頃は神戸で過ごしたせいか、洋菓子派であった。
私の和菓子嫌いは将来困る、と見越した母から
「おまんじゅうやらようかんは、お呼ばれしたら必ず出てくるもんやから、自分に出された1個、1切れは食べられるようになりなさい」
と言われ続け、大人になる頃には、それぐらいなら頑張って何とか食べられるようになっていた。

その躾により、親切な方々から“自分に出された1個”を渋々いただく。

……美味しい。

人に薦めたくなるのもわかる。
私も誰かに薦めたい。
そして、1個と言わずお代わりしたい。
どこで売っているのか訊ける相手だと遠慮なく訊き、訊きにくい人の場合は、菓子折に入ってる解説のチラシを頂戴し、後で調べた。

大抵は、門前町や参道で売られている老舗の和菓子で、京都駅や百貨店でも買えるお菓子もあることがわかった。

偉いお坊さんの被り物を模した半生菓子。
薄いけど美味しい皮の中に、あんこがぎっしり詰まっている。
京都駅からの帰りについ買ってしまう。

参道のお向かい同士にお店を構え、同じ商品で勝負し続けるお餅屋さん。
私は交互に利用するが、周りのご意見を聞くと、いっちばん最初に入ったお店をその後ずっと利用するみたい。ファーストコンタクトがその後の運命を決めるのだ。
あまじょっぱくって、汗だくで歩いたあとの体にしみた。

昨今ブームになっている刀剣女子の聖地を冠したお餅は、1つだけでも気軽に買えるので、お行儀が悪いが食べ歩きにはもってこい。

賀茂川が鴨川になるあたりのお菓子屋さんは、以前から行列が出来る人気店で、並ぶのが嫌いな大阪人の私は敬遠してたが、アニメの舞台になってそそくさと買いに行った。ミーハーな性分だから仕方ない。
年中売ってる看板商品と、季節限定の葛まんじゅうを購入。この私が葛まんじゅうを自分のお金で自分のために買うなんて、少し前では考えられない。しばらくして、看板商品の方は自分の生活圏内で売られていることを偶然見つけ、小さくガッツポーズするのであった。

休みの日は午前中で売り切れるという、京都検定のテキストに載っている銘菓中の銘菓も、早起きして、しかも寒い日だったので防寒対策バッチリで並んで買った。私のワガママに付き合って、一緒に並んでくれた友人たちに感謝である。

私は、とうとう和菓子を克服してしまった。

……なんてことにはならない。

人生はそんな都合よくいかない。
茶道部はまだまだハードルが高すぎる。
月に1度のお菓子ですら怖い。無理。

和菓子嫌いでも「美味しい!!!!」となる和菓子が、京都にはたくさんあることがわかった。
検定は3級合格してすっかり満足してしまったが、これからも京のお菓子を発掘するのが楽しみであるし、こんな私が気に入ったお菓子なのだから、自信を持って人にもどんどん薦めていくのだ。

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2017-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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