メディアグランプリ

ストリップ・バージン


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ちくわ(ライティングゼミ 日曜コース)
ずっと行きたかった場所のひとつが、ストリップ劇場だった。
女はストリップを観に行けない、と勝手に思い込んでいたが、あるとき友人から「性別は関係ないよ」と教えてもらった。しかも劇場によっては、女性割引まであるという。これは行くしかない。女29歳にして決意をかため、とある春の土曜、社会科見学のノリで行くことにした。

私の中でのストリップのイメージは、単に裸の女性が出てきて、音楽にあわせてポールダンスを踊る。また、女性“らしさ”を見せつけ、観客の男性が、女性の下着にお金を挟むという乏しい想像だった。

ブログで下調べをするとストリップの世界で、有名な場所もいくつかあるらしい。私は都内の歴史ある劇場に決めた。どんな舞台でどんなショーが見れるんだろう。期待に胸を膨らませ、その日を待った。

当日。
浅草駅からほど近い劇場へ向かう。ひっそりした裏路地に入り口が、と想像していたのに、大間違い。ガンガン人が通行する側に入り口が面しているではないか!
若干躊躇しつつも、そそくさとビルの中へ。入り口にはお祝いのスタンド花で溢れている。踊り子さんのファンクラブからのようだ。入り口から2階に続く階段脇には踊り子さんたちの顔写真が並ぶ。皆、可愛らしかったり、キレイな人ばかり。
「この人たちが脱ぐのか」
ドキドキしながら階段をのぼる。

まず、私が行った劇場のシステムを説明しよう。12時に開場し、13時にショーがスタート。計5回の公演がある。女性割引だけなく、最終回間際は安くなる夜間割引や、カップル割もある。全ての踊り子さんを見ても見なくても、料金は変わらない。踊り子さん一人ごとに第1「景」と付けられており、私が行った1公演では7人だったので、第7景まであった。1公演全体は1時間40分なので、踊り子さん一人の持ち時間は12、3分。加えて最後にレビューとして、踊り子さん全員再登場する流れだ。

映画館の対面販売のようにチケットを買い、中へ入ると待合室がある。オジサンたちが、立ち飲みバーのように丸テーブルを囲み、タバコをスパスパ吸っている。このご時世にこれでもか! という煙の量で、フロア全体が白っぽい。奥まで見えないが、あまり広くはなさそうだ。まるで大量の煙でオジサンたちは表情を隠しあっているみたいだった。やっぱり女1人は完全に浮いている。逃げるように、左手にある厚手の防音扉をあけ、ステージがある会場へ入る。

思ったよりも、ステージは狭く、客席は広かった。150人弱のスペースで、立ち見も可能。ステージの中心から花道があり、その先にお立ち台と、天井につながるポールがある。ポール付近の前はもう常連さんらしき人たちでいっぱいだったこともあり、私は全体が見渡せそうな後方に席を確保した。

開演時間。ブザーが鳴り、暗くなる。簡単なアナウンスが流れ、静かに幕が開く。
音楽が鳴り、踊り子さんが登場する。複数人のサブダンサーも一緒に出てくるが、私は少し拍子抜けする。
全員、服を着ているのだ。
どうやら最初は、設定と音楽にあわせながら演技とダンスをするらしい。声は発さないが、ストーリー性があり、ミュージカルを見に来た気分になる。
そこから突然、ステージ上でメインの踊り子さんが後ろに下がったかと思うと、サブのダンサー達がその前を取り囲む。
ここからやっと脱ぎ始める。
脱いでいることがわかるように、でも、開けっぴろげにならないよう、観客にお尻を向けて脱ぐ。それがなんともよい焦らしで、妙な奥ゆかしさを感じた。

完全に脱ぎきったら、サブのダンサーはいなくなり、メインの踊り子さんだけになる。ヒール靴だけはいている。花道を歩いて、ポールへ向かう。スポットライトに照らされ、独壇場となる。しなやかに、ひとつひとつポーズをとる。ポールがある台が360度回転する。拍手がおこる。私も周りにあわせて拍手する。

ここで私は認識する。エロいとか、いやらしいとかいう単純な言葉で片付けられないことを。独特の雰囲気が漂う。踊り子さんは、あられもない姿になっているのに、私は鍛えられたお腹や足の筋肉、伸びきったつま先の方に目がいく。台がゆっくり一回転する間、ポーズを保つ。強い。この力強い美しさに釘づけになる。

あっという間に時間は経ち、もうこれで最後のポーズというときに、花束をもって駆け寄る男性がいた。「ありがとう」と、にこやかに踊り子さんは受け取り、握手を交わす。手以外、男性はどこも触らない。

時間がくると、彼女たちは颯爽とステージを去る。幕が降りる。基本1幕ごとにこの繰り返し。観客の誰も、踊り子さんと一定の距離を保ちながら、拍手を送り続ける。マナー違反と思えるような人はおらず、黙って美しい彼女たちを見つめている。

まるで踊り子さんは、夕陽のようだった。むきだしになって燃えている。普段直視できない太陽が夕陽になると見えるように、この劇場で見せるため、踊り子さんは体を仕上げ、全力で熱を伝えにくる。しかも迫力をもって。取り囲む観客は男女問わず圧倒されてしまう。踊り子さんたちの、ステージに対する想いを自ら燃やして輝く姿に、観客は見とれる。

夕陽を見て、なぜだかわからないけれど、涙が頬をつたうことがあるように、私は公演が終わった瞬間、拍手しながら泣いていた。ストリップを見る前には無かった、突き動かされる感情が確かにあった。

もし、あなたがストリップ・バージンで興味が出てきたなら、ぜひストリップ劇場に足を運んでみてほしい。

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2017-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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