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メディアグランプリ

4月にやってくる面接官


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:サンディ(ライティング・ゼミ日曜日コース)

また今年もあいつがやってきた。
4月21日。私は人生で32回目の誕生日を迎えた。めでたいという話ではない。むしろ覚悟を決めて迎えた日といっていい。26歳か27歳、世間でアラサーといわれるくらいの歳になってからというもの、毎年誕生日は私の中で昇進面接のような位置づけになっていた。

面接官は「理想の自分」とでも言うべきだろうか。こいつが厄介で、あまり触れてほしくないところばかりを突いてくるのだ。
「誰も見てなかったけど、お前、あの時逃げただろ?」
「今年、これやるって宣言したけど結局どうなったの?」
そして最後に必ずこう言ってくる。
「それでまともな大人になれる?」
毎年こんな感じだ。歳を取るのが嫌という訳ではないが、毎年理想とのギャップに落ち込むわけだ。

ただ、今年は違う。やられっぱなしでは終わらない。来るのが分かっているのならば準備すればいいだけの事だ。去年からの1年間は仕事、プライベート共にやるべきことはやってきた。自分で言うのも変だが、ストイックに取り組めた1年だったと思う。
「いける! このままいけば理想の大人に近づける」
という印象だった。その時が来るまでは……。

誕生日の翌日、4月22日。私は倒れた。
鼻をかんだ時に左耳の奥で何かが裂けたような音がした。次の瞬間、私はその場にしゃがみこんだ。トイレに駆け込み2回嘔吐しても、耳鳴りは止まず、平衡感覚も戻らない。
一人暮らしである以上、判断能力があるうちに何とかしなければならない。
そう考えた私は近くにあったスマートフォンで救急車を呼び、症状を話し、そのまま緊急検査を受けることになった。

検査の結果は「めまい症」「急性難聴」そして「気管支炎」というものだった。過労とストレスが溜まっている状態で風邪をひいたのが引き金になったらしい。

「クソ! 何でだ! ふざけるな!」
暗い病室のベッドの上、左腕に刺さった点滴の針を眺めながら、私は無意味で稚拙な文句を呪文のように唱えていた。悔しかったし、情けなかった。
倒れる直前まで私はすべてがうまく機能していると思っていた。
仕事での評価も上々だったし、趣味で行っている「草ラグビー」のパフォーマンスも20代の頃より良かった。公私ともに自分の居場所は確実に広がっていた。

病院のベッドの中、「理想の自分」が無遠慮にやってくる。そして耳元で囁くのだ。
「過労とストレスで身体壊したって? 本当に過労やストレスが原因かな?」
うるさい。言われなくてもわかっている。

医者の言う「過労とストレス」はきっかけの一つではあるが本当の原因はそこではない。
倒れるまで自分の身体の異変に気が付かずに無理をさせてしまった本当の原因。
それは「周囲からの期待」と「体力の過信」だ。

そもそも根っからの不器用で怠け者の私が自己成長のために身体を酷使するなんてことはまずありえない。ここまでに至った理由は、周りの期待に応えたかったからに他ならない。

「周囲の期待」がこれ程のモチベーションになるというのは私自身初めて知ったことだが、小さな成功体験を積み、周りから「すごい」「良くやった」という声を貰えば貰う程、次に向けて更に高みを目指すための努力は苦ではなくなる。苦でないどころか、「努力の娯楽化」とでも言うべきか、「やめろ」と言われても続けてしまう。
Facebookの「いいね」を数える人を冷ややかな目で見ながらも、現実世界では周囲からの「リアルいいね」を誰よりも渇望していたのである。

もう一つ、不器用で要領の悪い私が唯一自信を持っていたもの、それが「体力」だった。
学生時代のノリが未だに抜けず、「呑み込みの悪さは練習量や時間でカバーする」という気持ちで取り組んだ結果、時短や効率化といった本質的な問題の解決を先送りにし、疲労の抜く時間を与えず、自らを追い込んでいったのだ。

今振り返ると浮かんでくる反省点も当時は何も見えていなかった。高みに行くことだけを考えて、身体の状態すら把握できていなかった。きっとこんなに面倒な奴が近くにいたら、さぞかし周囲も扱いにくかったことであろう。結果として入院中の「草ラグビー」の試合は欠席、天狼院で受講しているライティングゼミの講義も欠席、3週目の課題は未提出。
更に仕事面では報告予定のプレゼン資料を先輩に報告してもらう等、周りの人の仕事を増やすこととなった。
私の自己管理不足により、「周囲の期待に応える」どころか、大切な人すべてに迷惑と心配をかけたことになる。

退院後、私はすぐに部屋に張っている「やることリスト」の欄に「健康」の2文字を書き加えた。やや漠然としているが、これでいい。今回の反省を踏まえ、「自己管理」の仕方をこれから試行錯誤して加えていけばよいのだ。
今のスタイルを変えるつもりはないが、やはり自分の体調を把握し、大切な日はコンディションも整えていなくてはこの先のステップに進めない。

32歳のシーズンはまだ始まったばかり。大丈夫。まだまだ強くなれる。
そう、毎年誕生日はより良い自分に近づくためのプレゼントを運んできてくれるのだから。

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2017-05-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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