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ライトワーカー


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記事:知念弘恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「コーヒー淹れようか?」
 
日曜日の昼下がり。夫からは「うん」という返事が返ってきて、二人で一息つく。
 
「こないだテレビ見てたらさ。サラリーマンだった人が会社辞めて、茅葺職人になったというのがやってたわけ」と夫が話し始めた。
 
茅葺職人になったというその人はきっと男性なのだろう。
夫はその男性と自分とを照らし合わせたのかも知れない。夫の目は少し潤んでいるように見える。
 
なぜその男性はサラリーマンを辞めて転職したのか。一般的には、会社に勤めているほうが暮らしに不安はないだろうに……。
 
夫はそのまま言葉を続けた。
 
「定年まで勤めて退職したあとに自分がどう生きるかということを考えたとき、いま自分がやって楽しいと思うことを身につけて仕事にした方が、やりたい仕事をやりたいだけ続けられるから。っていってた。確かにそうだよなって思った」
 
ちなみに、夫は機械専門職のサラリーマンだ。私は夫のことを自分の好きなこと(専門分野)を仕事にしているタイプだと思っていたので、正直、少し意外だった。
 
「何で? あなたは好きな機械のことを専門に仕事してるでしょう?」と私が言うと、彼はこう答えた。
 
「うん。『やりたい』というより『やらないといけないから』やってる。それに定年退職したらどうしようかなって思って」
 
夫のマグカップに入ったコーヒーは半分ほどになっている。
 
「氷ある?」
「あるよ」
 
私は夫のマグカップに氷を足し、コーヒーのお代わりを注ぎながら、以前に近所で見かけた交通誘導員のことを思い出した。
 
「ねぇ。そういえば近くで道路工事があったの覚えてる? ひげの長い交通誘導員がいたよね」
 
見かけたのは近所で道路工事があった頃だった。
その交通誘導員は男性で、首が隠れるくらいの長いひげをたくわえていた。青い作業服を着てヘルメットをかぶったその風貌は、まるで下山した仙人がコスプレをしているかのようである。
ひげの白髪具合からいっておそらく年金を受け取る世代(六十代くらい)だろう。
 
私は、仙人のような交通誘導員の前を車で通り過ぎるたび、感謝の気持ちが湧いてきて、心地よくてご機嫌な気分になったのだった。
 
感謝の気持ちが湧いてきてご機嫌になったのは、その交通誘導員がコスプレした仙人のように見えるからではなかった。
 
その交通誘導員はとても紳士的だったのだ。
 
毎回、彼は停止位置に来た私に自分の正面を向け、誘導棒を真横にしながら一礼した。
そのあと対向から来る車を見張るように横を向いて立っているのだが、私の進行方向の信号が青に変わる寸前にこちらを向き、お待たせしましたとばかりに、彼が丁寧に一礼したところで信号が青に変わる。
青に変わった瞬間、さわやかな笑顔で「いってらっしゃーい」とばかりに誘導棒を振り、エスコートしてくれるのだ。
 
社交ダンスを踊っているかのように、流れるような動きで嬉しそうに誘導している姿からは交通誘導員という仕事がとても好きなのだということが伝わってきて、私はひそかにファンになった。
 
「あの交通誘導員とてもよかったよね」そう言って私は言葉を続けた。
 
「たぶん、交通誘導員ってそんなに日当高くないと思うんだけど、あの人は本当に交通誘導員という仕事が好きなのが伝わってきた。誇りをもって、交通誘導員という役割を演じているように見えたよ」
 
「うんうん」と夫がうなずいた。
 
そうだ。交通誘導員の彼は『ライトワーカー』なのだ。
 
『ライトワーカー』という言葉をご存知だろうか? 直訳すると『光の仕事人』である。
 
いくつかのサイトでは、『この地球を怖れから救うために生まれた』とか『聖なる目的のために生まれた』という崇高な精神を持った人たちのように表現されていて、まるでキリストのような救世主を指すようなイメージがあるけれど、私が思う『ライトワーカー』は、分かりやすくいうと、自分らしく周りの人たちに貢献して、みんなを笑顔にするご機嫌な人のことを指す。
 
だからカフェの店員などにも『ライトワーカー』はいると思っている。
私の目には、交通誘導員を演じている彼が『ライトワーカー』のように見えたのだった。
 
なぜ、周りの人たちを笑顔にするご機嫌な人が『ライトワーカー』なのか?
 
たとえば、不機嫌な人が同僚にいたとしたら、そのときの職場の雰囲気はどうだろうか。
不機嫌は不機嫌を誘発し、おそらく刺々しい雰囲気が漂いはじめ、そのときの効率の悪さは想像に難くない。
逆に、ご機嫌な人が同僚にいたら、ポジティブな雰囲気の中で生産性の高い仕事ができるだろう。
 
交通誘導員の彼は、毎回、通り過ぎていく人たちを笑顔にしただろう。彼の姿を見た人たちは、一日中とはいかないまでも数時間くらいは、ご機嫌で幸せな気分になっただろう。私がそうであったように。
 
ご機嫌な人たちは、また、それぞれの場所でポジティブな雰囲気を生み出す。そうやって、ご機嫌な人が増えることでこの世界によい影響を与えるのだ。地球にもやさしい行いであるはず。
 
何をしたら自分の魂が喜ぶのかは自分でしか気づくことはできない。けれども、もし、その喜びに気づいたのなら育んでいくことで自分自身をご機嫌にすることができる。
ご機嫌な人が増えれば、救世主の出現を待たずとも、地球を救うことにつながるのだ。
 
いや、救世主の出現を待たずともと言うより、みな救世主になれるだろう。
 
自分らしく人に貢献し魂を輝かせるような生き方ができたとき、ひとはみな『ライトワーカー』になれるのだと思う。
 
 

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2017-05-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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