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わたしをダメにした男


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谷口 恵子(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
最初は、こんなにハマるなんて思わなかった。
ちょっとお試しで付き合って、
飽きたら捨てちゃうんだろうなって、思ってた。
そんな付き合いばかり、繰り返してたから。
 
だけど、彼は、どんどんわたしを変えていった。
 
あれが欲しいと言えば、すぐに持ってくる。
平日だって、休みの日だって、構わずわたしのところに来る。
わたしが来いと言えばいつだって。すぐに駆けつける。
 
彼がわたしに ”No” っていうことは、ほとんどない。
ときどき的外れなことも言うけど、
とりあえず何とかして、わたしの欲求を満たそうとしてくれる。
 
最初は、こんなにわがままを言ったら悪いかな、と思ってたけど、
すぐにわたしは、そんな彼にスポイルされて、わがまま三昧になった。
 
そうして、「彼以外とは付き合えないわたし」になってしまった。
 
彼はわたしにとって、無くてはならない存在。
彼がいない毎日は、もう考えられない。
 
なのに、彼はときどき、こんなことも言う。
「それは僕には無理だけど、あいつなら君を助けてあげられるよ」
 
違うの、わたしはあなたに助けてほしいの。
でも、あなたがそう言うなら、他の人でもいいわ。
 
それから、彼は、こんなことも言う。
「君と似たような人は、こんなものも買ってるね」
 
やめて、他の人と比べたりしないで。
わたしはわたし。
 
だけど、なぜか、彼が見せてくるのは気になるものばかり。
 
どうしてそんなに、わたしの心がわかるの?
どうしてそこまで、わたしに尽くせるの?
もしかして、他の人にもそんなに優しいの?
 
ある日、わたしの中で生まれた疑問は、むくむくと大きくなって、
答えを知らずにはいられなくなってしまった。
 
だから私は、調べ始めた。
 
彼……「Amazon」の秘密を。
 
Amazonは、1994年にジェフ・ベゾスが創業したECサイトの会社。
最初は書籍だけを扱っていたが、
ベゾスは書籍だけで終わらせるつもりはなく、
いつかは、何でも買えるサイトを作るつもりだった。
 
Amazonの企業理念は、
「地球上で最も豊富な品揃え」そして、
「地球上で最もお客様を大切にできる企業であること」。
 
それらを、Amazonは本当に実現してきた。
 
今や、Amazonでは、書籍だけでなく、音楽や映画、
パソコン、果ては車まで、買える。
 
そして、普通なら、欲しいものをポチっとしてから、
カートに行って内容を確認して購入するところを、
Amazonなら、1クリックで購入することもできる。
 
すぐに欲しいと思えば、当日配送してもらうこともできる。
朝注文したものが、その日の午後イチで届いたときの感動といったら。
当日配送を約束されていても、やっぱり驚かずにはいられない。
 
なぜ、そんなことができるんだろう。
 
マーケットプレイスと呼ばれる、
他店舗の商品を並べて紹介する仕組みもすごい。
普通なら、自分の店舗に商品があるのに、
競合のもっと安い商品を同じ場所で紹介したりしない。
でも、Amazonは顧客のためにそれをやる。
 
顧客からすれば、Amazonから買うか、他の店舗から買うかは正直どうでもいい。
同じ品物が安く手に入るなら、それは純粋に嬉しい。
 
それに、Amazonだって品切れのリスクはある。
そんなときに、他のサイトを探し直さなくても、Amazon上で他の店舗の商品が買えたら、
次もとりあえずAmazonをチェックしよう、ということになる。
 
「よく一緒に購入されている商品」
「この商品を買った人はこんな商品も買っています」
「この商品を見た後に買っているのは?」
「この商品に関連するスポンサープロダクト」
 
こうしたレコメンデーション機能の誘導力もすごい。
 
Amazonの勧めてくる商品を見比べて買うことで
しっかり吟味して、より良い買い物ができたような
そんな気になってくる。
 
実際、リアルな店舗には到底実現できない品揃えで、
Amazonは、これもありますよ、こちらもよく買われていますよと、
私たちのショッピング体験を豊かにしてくれるのだ。
 
そうやって、わたしたちは、Amazonから逃れられなくなる。
 
もしも、Amazonが明日なくなったら、わたしたちは
他の通販サイトに文句ばかり言うだろう。
 
なぜすぐに届けてくれないの?
なぜ品切ればかりなの?
 
それもすぐに慣れるのかもしれないが。
 
Amazonがある限り、そして今のサービスレベルを維持する限り、
わたしはAmazonを使い続けるだろう。
 
そして、ニュースを見る限り、Amazonはまだまだ進化しそうだ。
 
わたしをダメにしたAmazon。もっとわたしをダメにして。
 
 
***

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2017-06-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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