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北海道に住みたい人が教えてくれた、たった1つの大事なこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:ごとうみのり(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「北海道に住みたい」
田舎暮らしがしたい、と言う人の中に、地元でも住んだことがある訳でもないのに、北海道を推す人が一定割合いる。
日本に、いや世界に住む場所なんてたくさんあるのに、どうして幾千もの街の中から寒さ厳しい北海道を選んだのか。
 
乳製品が美味しいから。いいえ。
小麦もお肉もおいしいから。いいえ。
海鮮の素材も充実しているから。いいえ。
土地が広くて、家が大きく建てられるから。いいえ。
広々とした土地が人間の心にゆとりを与えてくれるから。いいえ。でも惜しいかも。
 
北海道の秘密に迫る、私の第一歩は長野だった。
 
最近、長野県の松本に住んでいる友達のところに遊びに行った。
松本と言えば、松本城。その裾に広がる昔の風情を残した街並。
その他、地元の人が行く鰻の名店、会社帰りによく寄る蕎麦屋、天ぷらが旨いらしい。絶景が拝める渓谷への遠出。フェイスブックのメッセンジャーで送られてくるプランは輝いて見えた。
 
実際に行ってみると、ご飯は美味しいし街中でも空気はきれい。ふと目をやった先に花壇があったり、蔵風の建物があったりして街並はオシャレ。友達が松本の表参道、と呼んでいる場所は静かで、近所には湧き水もあった。ちょっと小道に入ると、お洒落な立ち飲みバーがある。一種類だけではなく、ビールにワインに日本酒、選び放題だ。
歩いて分かった。松本は、海のない鎌倉のような街だった。
 
私は夫とたまに、将来どこに住みたいか、という話をする。
最初は好奇心から、六本木のタワーマンションを夢見ていた時期もあったが、最近はもっぱら、住みたい地方探しをしていた。
 
川崎、横浜、鎌倉、藤沢、大宮、市川、船橋。
首都圏から離れて考えることもあった。
福岡、大分、仙台、神戸、大阪、京都、奈良、札幌。
子育てしやすそうなのは、空気の美味しさは、でも便利さも捨てられない。
 
もちろん松本は圏外。思いつきもしていなかった。
 
しかし、私と夫は一瞬で松本に恋をした。
松本だけでは収まらず、長野全域に恋をした。
買い物好きな友達は松本暮らしに飽きていたようだったが、自転車とランニングが趣味の私達にとって、存分に自転車を走らせることができる場所だったら飽きはしばらくこない。
雪と寒さの心配があったが、私は寒い地方かつ豪雪地帯の出身のせいか気にならない。おまけに松本から新宿は、あずさで3時間弱だ。
 
いいことずくめのように思える。
しかし、北海道に住みたい人、がここまでの私達夫婦の妄想を聞いて忠告した。
 
「観光に行くのと、住むのとは、まるでちがうのよ」
と。
 
田舎暮らしをしたいと考えている人は、一度は聞いたことがあるかもしれない。
人口が減れば減るほど、その土地のコミュニティの絆の太さは太くなる法則。私は、交換日記の法則、と呼んでいる。
 
男性にはあまり馴染みのないものかもしれない。交換日記は、1冊のノートを回し書きする遊びだ。主に仲の良い友達同士で行い、その内容はメンバー以外には秘密だ。
ノートには、実はAくんが好き、などの告白、恋愛相談の類いのものから、あいつがむかつく、といった愚痴めいたものなど、漏洩しようものならメンバーを傷つけるだけでなくクラスの大問題に発展しそうな内容が書かれていた。
 
交換ノートは、大人数でやればやるほど自分の想いの内をさらけ出すことが難しくなる。しかし、仲良しこよしの親友4人グループの中であれば、さらけ出せる量は10倍くらい増える。
 
田舎のコミュニティの絆の深さも、これに似ている。人数が少なければ、さらけ出したり、関わったりする機会が増えるため、その絆は太くなる。
そしてこの絆の太さ故に起こる問題がある。
 
田舎暮らしにおいて後から勃発することが多く、1年で元に戻ってしまう人の多くがぶつかるという問題。名前はずばり、ご近所関係だ。
 
郷に入っては郷に従え、が素直にできる人でも、地縁のない土地はハードルが高い。
ゴミ出しのルール、地域行事、回覧板、表向きのルールを守ることは大前提。その先にある、暗黙のルールを理解することからが本番だ。
転勤ならともかく、永住を考えていたらなおさら、子どもがいたらさらに。
 
暗黙のルールは必ずしも決まり事であるわけではない。思想や考え方にまで及ぶ場合もある。地元の人の学校や勉強することに対する考え方、休日の過ごし方、はたまた政治的考え方や宗教、金銭感覚。そこまでご近所に筒抜けになるのか、と驚いてしまうが、地域によってはうっかりの一言や、うっかりの行動でその価値観が暴かれ、それが地域と合わなければ居心地よく過ごすことは難しくなる。
 
そして、こういった摩擦は文化が栄えた地域ほど起きやすい。という実感は私にもあった。
文化が栄えた地域は、価値観や思想が磨かれた時間が長く、誇りを持っている。簡単に折れないし、曲げない。
 
「北海道に住みたい」
という人は、大抵このご近所関係の問題についてまで考え抜いて、田舎暮らしを計画している人が多い。そう、北海道は日本で一番、ご近所関係問題が発生しにくい場所なのだ。
 
あくまで確率の問題で、引っ越してみてお隣さんがすごい人だった、というパターンはのぞくけれど、北海道はご近所関係問題の発生を最小限に抑えられる確率が高い。
 
なぜかというと、北海道はよほどの集落に首を突っ込まない限り、転勤族が多く暮らす街だからだ。
 
しかも北海道の歴史は開拓から始まっている。
平安からの歴史が云々、とか。うちはここに住んで5代目です。という人は稀だ。
 
北海道は絆の太さはあれど、田舎暮らしがしたい、と引っ越してきた人に対して、自分も過去、田舎暮らしがしたい、という想いをもってここにやってきた。という仲間意識があるのかもしれない。
田舎に住みたい、と考える人にとって、北海道は初級編のような土地なのかもしれない。
 
どの田舎を選ぶか考えるのは楽しいけれど、やはり現実的なデメリットの面もよく考えなければ行けない。夢見る少女のままではいられない。
 
そして、私達夫婦の妄想に忠告した、北海道に住みたい人は続けて言った。
 
「問題は自分たちの覚悟、なのよね。人にも土地にも、悪口言わない覚悟」
 
覚悟。そうだ。北海道に住むなら、コミュニティの問題が解けても、雪は解けない。場所によっては、熊やきつねも出没する。
そういった問題も含めて、その街を好きになって暮らしていく覚悟は最も必要なものだ。
人にも、土地にも、という彼女の言葉が頭に響いた。前の方がよかった、と言っているうちは覚悟がないのだ。
 
北海道に住みたい人、がどれくらい本気で田舎暮らしを考えているのかが、ビリビリと私に伝わってきた。
 
松本は素敵な場所だった。これは事実だ。
北海道も素敵な場所だ。これも事実だ。
 
一目惚れの、恋に恋するままじゃ、暮らしの居心地はよくならない。
自分が好きになった場所の悪口を言わない、そんな覚悟ができたとき、私は移住しよう。
 
 
***

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2017-06-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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