「ピンクのももちゃん」からの脱出
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記事:森永桃子(ライティング・ゼミ平日コース)
「好きな色は?」と聞かれて、すぐに答えられる人はすごいと思う。
幼稚園年少~小学校低学年の頃、ピンクが好きな時期と水色が好きな時期とがあって、持ち物は時期によってピンク一色だったり、水色一色になったりした。
小学校高学年になると「ピンクが好きなももちゃん」が出来上がっていた。
ピンクが好きで、ピンクに囲まれている自分が好きだった。友達みんなが「ピンクが似合うね、ピンクといえばももちゃんだよね」とよく言ってくれた。本音を言うと、好きなピンクと好きじゃないピンクがあったのだけれど、好き嫌いにかかわらずいつもピンクを選んでしまっていた。私が好きだったのはパッションピンクのような強いピンクではなくて、薄い桃色だったのだ。筆箱や鉛筆、はさみ、消しゴム、自由帳もすべてピンクだった。ピンク以外を選ぶ自分を許せなかった。「ピンクが好きでピンクが似合うももちゃん」に縛られていた。
私はその頃、周りの人が作り上げた自分にとらわれすぎていて、本当の自分を表に出すことができなかった。「お腹すいた」とか、「aikoが好き」とか、そんな些細なことすらも口にすることができなかった。みんなに好かれたかった。その癖、人に好きと言われても「この人はみんなが作り上げた私のことが好きなんだ。本当の私を知られたらがっかりされる」と苦しくなった。他でもない自分自身が自分を縛り、苦しめていた。気付くのにとても時間がかかってしまったが、そんな自分を変えたいと、ずっと思っていたのだ。
中学生になって、持ち物を新調する際に本当に自分が心から惹かれる色を選んだ。そのとき久しぶりにピンク以外の色を選んだ。それから、少しずつではあったけれど自分が本当に好きなものやこと、本当にやりたいことを選び取れるようになっていった。人に本音を話せるようになった。自分を許すことでこんなにも生きやすくなるなんて、知らなかった。
今は、「好きな色は?」と聞かれてもすぐには答えられない。たくさんありすぎる。
青の中では紺色と薄い水色が好き。黄色の中ではレモンイエローが好き。緑の中では深緑が好き。ピンクの中では、桃色が好き。それぞれの中に好きな色がある。
私という一人の人間の中にも、明るいものがあれば暗いものもある。弱い部分があれば強い部分もある。短所があれば長所もある。自分のすべてをみんなに好きになってもらうなんてできないし、そんな必要はない。なんでこんなにも自然なことに気がつかなかったんだろう。
これまでの私の人生を振り返ってみても、たった19年だけれど陰の時期と陽の時期があった。
毎日習い事に行って友達と遊んで、学校が楽しくて仕方なかった時期があれば、病気を患って誰にも会いたくない、外に出たくない時期もあった。
どちらも確かに私だし、確かに今の私を作っている。楽しくて仕方なかった時期があったから辛い時期を乗り越えることができたし、辛い時期を乗り越えたからこそ、今のパワフルでハッピーな生活がある。
今の私は「自分のために生きること」を第一に日々過ごしている。本当に自分のやりたいようにしている。やりたいと思ったら始め、やめたいと思ったらやめる。こんな風に自由な私になれて、自由であることの生きやすさや幸せを感じることができるのは、鬱屈した辛い時期があったからこそだと、心からそう思う。
あのとき、ほんの気まぐれでピンク以外の色を選んだとき、「あ、私、ピンク以外も選べるじゃん」と思った。思い込みの自分から離れて新しい選択をするときの高揚感を知ってから、それがやめられなくなった。
今思えば、その小さな選択がそれまでの私を解き放つきっかけの一つになっていた。
あの頃は、「ピンクが好きなももちゃん」を好きと言う人に対して「虚像の私を好きだと言うことに何の意味があるんだろう」と思っていた。
だけど、今考えてみると、「ピンクが好きなももちゃん」もちゃんと私だった。
みんなが作り上げた私も私であり、みんなの期待に応えようとした私も私であり、それは本当の私じゃないと思った私も私だ。全部私だったんだ。
きっと私はこれからも新しい私に出会うだろう。
自分が丸だと思っていたものは、実は円柱かもしれない。球かもしれない。
今私が見ているものは、その一部分でしかない。だけれど、その一部分も確かに本当なんだ。
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