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メディアグランプリ

迷子になったときに、異国の青年が教えてくれたこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松下広美(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「Excuse me?」
「はい?」
おおっと。英語ですか?

それなのに、おもわず笑顔で返事をしてしまった。
紺色の大きなリュックを背負った、異国の青年はそのあとの言葉を続ける。
わからない。さっぱり聞き取れない。
私も困ったが、それ以上に青年は困った表情だ。

東京駅の八重洲口で、ホテルにはどう行ったらいいのか迷っていた。
とりあえず八重洲口から行けばいいというのはわかったけれど、どっちの方向に歩いたらいいのか。
スマホの地図もあるけど、現在地がはっきり出てこない。
手にはキャリーバッグ、背中にはパソコンの入ったリュック。重い。
そして暑い。天気予報では東京は真夏日になると言っていた。
すでに汗だくだけど、できることなら最短距離でホテルまで行きたい。
どこかに地図は……あ、あった。
じーっと地図を覗き込んでいたら、英語で話しかけられた。

すいませんってことは、何か困ったのかしら。
イケメンだなぁ。困った顔がかわいい。
どこの国の人だろう? ちょっと肌の色が浅黒くて、スッとしてて、スペインとか、そんな感じかな?
いや、そういうことじゃないくて。聞いてあげないと。
あー全然聞き取れない。
でも、返事をした以上、置いてはいけないし……
「……train……」
「トレイン?」
「Yes!」
おー電車!
そうか、青年よ。電車に乗りたいのね。
電車といえば……って、すぐそこに改札あるじゃん。
「ジェイアール?」
「No」
違うんかい! じゃあ、何さ?
何度も「え?」って顔をして聞き返す。
青年はますます困った顔になる。
私も困ったよ。どうしような。誰か、英語のできる人が通りかからないかな。
私が答えるしかないよねー。

さらに青年の声に集中する。

「Subway」
「サブウェイ!」
「Yes!」
そっかー、地下鉄かー。
そうね、そうね、地上からだとわかんないよね。
八重洲口だと、あっちのエスカレーターから下りて、地下通路を通って丸の内の方へ行って。
ちょうど私が歩いてきた方じゃないの。
「えっとね、あっちに行って……」
行く方向を指差して、私はフリーズする。
あーだめだ、日本語じゃ。
でも、あっちへ行って、エスカレーターで下に行って……。
難しい。全く英語が出てこない。
あー困った。まだ青年も困った表情だわ。
……しょうがない。一緒に行くか。
こういうときは、「ウィズミー」とか言うのかな?
ま、いいや。
こっちこっち、と手招きして一緒に行こうとジェスチャーで青年に伝える。
そんな不安そうな顔をしないでよ。取って食べたりしないから。

地下へ行き、案内表示に地下鉄の文字。
あっちだよ、と青年を見る。
「OK!」
お、わかったのかい。まだ、先は長いよ?
英語表記が出てきたからいいのかな。
笑顔になった青年に、ホッとする。

よかった、イイことをしたな。
彼は日本に来てよかったって、思ってくれてるかな。

心は嬉しい気持ちに満たされた。
ただ、昨日の夜のことを思い出したら、気持ちは沈んだ。

「あー書けなかった。間に合わなかった……」
前日の夜、パソコンの前でため息をついていた。

ライティングを始めて半年が過ぎ、プロゼミにまで入った。
5000字の壁がなかなか越えられない。書けない。
2000字で書いていたときは、毎週なんとか提出出来ていたのに、今は毎週の提出ができなくなってしまった。
ネタに迷い、言葉に迷い、進まないタイピング。
今週は提出できなかった。

始めたばかりだし、仕事で時間取られたし、休みの日も予定あったし……。
言い訳はたくさん思いつくけれど、やっぱり書けないのは悔しい。
そして、迷う。
なぜ、書けない。
なぜ、書く。

多くの言葉を出すために、自分の心と対峙する。
心の中の嫌な部分が出てきて、これを文字にするのか? と迷う。

道に迷っていた、異国の青年に会った日の夜。
久しぶりにライティングの生講義を受けた。
パソコン画面でもなく、スクリーンでもなく、三浦さんの生講義。
講義の中の話は、頭に入ってくる。
でも、私の迷いは解決できていない。
どうしたら、この「書けない」という思いがちゃんと解消されるのか。

講義が終わった後、何人か残って雑談をしていた。
雑談の中で、聞いてみた。

「毎週、5000字は、なかなか書けないです」
深刻そうに、ではなく、軽く。
「毎日ですよ」

あ、そうだった。
すっかり忘れていた。
「毎日、書く」
初めから、三浦さんが言っていたこと。

毎日ですよね。

簡単な答えだった。
答えはそこにあるって、知っていたのに。

迷っているときはどちらへ進んだらいいのかわからなくなる。
その先にどんな道が待っているかもわからない。
でも、その道を知っている人にとっては「あっちへ行けばいいのに」と簡単な答えを持っている。
全く知らないことは考えても答えが出てこない。だから、聞く。
知っている、わかっていることでも、聞くことで忘れていることを思い出させてくれる。

道に、進路に、人生に、迷子になって自分ではどうしようもできなくなったら、まずは聞いてみる。
そんなことすら、忘れていた。
本当に困って迷っているのなら、答えを、その先の道を教えてくれる人は絶対いる。

「毎日、1万字ですよ」

あ、1万字ですか……。
まだ、道のりは長そうだ。

でも、私を信じてついてきてくれた青年のように、笑顔になれるのなら頑張ってみよう。

 
 
***

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2017-07-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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