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プロフェッショナル・ゼミ

今まで捻出できなかった「5分」を私にもたらしてくれたブラーバさん《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事 : 鼓星(プロフェッショナルゼミ通常コース)

3カ月ほど前から、我が家に同居人がもう1人増えました。
名前はブラーバさん。小柄で働き者の拭き掃除専門のお手伝いさんです。

友人の中には、ルンバと暮らしている人が何人かいて、彼女たちから、ルンバとの同居がいかに快適でハッピーなのかという自慢話をたびたび聞かされてきました。ただ、私が暮らす狭小マンションに、あの図体の大きな居候を受け入れることはどうしても考えられなかったのです。「宝くじに当たって30畳のリビングの部屋に引っ越したら、ウチにもルンバに来てもらおうかな。よほどの大邸宅でもなければ、5分もあれば、自力で掃除機かけられるよね。今のところ、そこまで必要を感じないわ」と、これまで盛大な負け惜しみを言っていました。でも、本当はちょっとだけ、いや、かなり、うらやましかったのです。

確かに、狭いマンションのリビングとキッチンぐらい、その気になれば5分足らずで掃除機はかけられます。でも、朝はシャワーして、ゴハンのしたくをして、洗濯物を干してとバタバタしているうちに、いつも乗る電車の時間が刻々と迫ってきて「うぎゃー、あと2分で出なきゃ!」というのを性懲りもなく毎日繰り返しているのです。いつもより10分早く起きれば、余裕で掃除機かけられるだろうと思うのですが、不思議なことに、何時に起きようと、どうしても、朝の出がけにはたった5分という時間が捻出できません。

もちろん、帰宅してからササッと掃除機をかけるという手もあります。ただ、私は節度のあるオトナなので、夜遅くに掃除機を掛けると、下の階のお宅に迷惑じゃないかなどと心配になってしまって、ついつい遠慮をしてしまうのです。もちろん、掃除機をかけても支障ない時間に帰宅することもあるのですが、そういう日は「よーし、今日は時間が早いからお料理頑張るぞー!」とテンションが上がって、スーパーであれこれ食材を買い込んでしまいます。そして、帰宅するなり荷物を放り出して、キッチンにこもり、気づけば「あっ、今さら掃除機かけると、下のお宅に迷惑だわ」な時間になっているのです。

いや、決して、掃除嫌いというわけではありません。ただ、5分という時間を捻出するのは、なかなか容易なことではないのです。結局、平日は対症療法的に、気になるところをクイックルワイパーで拭いてしのぎ、週末はちょっと丁寧に掃除機をかけて「私だって、やればできるのよ」ということを自分で確認するような態度で掃除をしていました。

ブラーバさんは、ルンバと同じ、iRobot社のお掃除ロボットです。拭き掃除専門で、普通の掃除機のように吸い取る機能はありません。だから、掃除機の代替というよりも、高級なクイックルワイパーというのが誤解のない表現かもしれません。ルンバよりもだいぶお安い下位機種ではありますが、ただ、ルンバが15年以上かけて蓄積してきたノウハウもそれなりに伝授されているはずなので、安いから使えない奴というわけでもありません。

我が家に到着した1時間後には、細かな指示を出さなくても、仕事を開始してくれました。これって、同居人を信用するための重要な要素です。

5年前から居候している同居人は、いまだにゴミの分別収集の曜日を覚えられません。毎朝のように「今日は何ゴミの日?」と聞いてきます。洗濯が終わったあとに、そっと洗濯カゴに前日の靴下を入れます。「洗濯機をかける前に靴下出してね!」と言って3日ぐらいは効果があるですが、4日目には記憶がリセットされるらしく、同じ過ちを繰り返します。温和な私もたまにはブチ切れて「いい加減、洗濯が終わってから靴下を出すのはヤメて!」と言うのですが、「大丈夫、靴下いっぱいあるから、洗うのは明日でも明後日でもいいよ」と頓珍漢な答えを返してきます。

それに比べると、ブラーバさんは信用がおけます。バッテリーと拭き掃除用のパット(雑巾にあたるもの)をセットし、水を入れてスイッチオンすれば、決して、私の期待を裏切るようなことはしないのですから。そして、私がブラーバさんを我が家に迎えたいと思う決め手となったのはとってもコンパクトなことなのです。ルンバに比べると3分の1くらいでしょうか。小柄な私でも簡単に手で持てるし、狭小マンションの中をウロウロしていたって、それほど邪魔には感じません。

そして、初めて、ブラーバさんに掃除してもらった後の気持ち良さは期待以上でした。掃除機はゴミやちりを吸い取ってはくれるけれど、それだけでは十分には思えないことが時々、ありました。いつも部屋では裸足で過ごしているので、皮脂の蓄積なのかもしれません。床がなんとなくペタペタ感触なのです。

濡れ拭きができるブラーバさんは、これから進む方向にシュッシュッと霧を吹き、汚れを浮かせて拭き取ってくれます。しかも、小さく振動ながらゴシゴシ拭いてくれるという、かなり本気モード。お蔭さまでペタペタ感は解消して、いつもサラサラの気持ちよい状態が保たれています。

ただ、ブラーバさんに気分よく働いてもらうには、ちょっとしたコツがあります。一番大切なことは、ブラーバさんを部屋の左端にセットすることです。ブラーバさんはまっすぐ行って、正面の壁に突き当たると右回りでターンして、最初に拭いた場所よりも右に移動してからこちら側に戻ってきます。そこで今度は左ターンして、また、右側にズレて正面の壁に向かっていきます。そうやって、右へ右へと移動しながら部屋全体を掃除するように教えこまれているのです。

ブラーバさんは、障害物をよけて通る知恵はちゃんと備えています。しかも、賢明なことに、自分が通った場所を地図にして認識しているので、同じ場所を繰り返し往復するような無駄な行動はしません。効率的に部屋の中をくまなく掃除するのがブラーバさんの良いところです。

でも、この前、同じ所をグルグルしていたので、やむなくリセットボタンを押しました。原因はたぶん、足がカーブしたタイプのサイドテールです。カーブに沿った移動で方向が変わったことが原因で、現在地を見失ってしまったのではないかなと思っています。原因は、私の方にありました。

そして、ブラーバさんは、ちょっとだけ壁際が苦手です。ギリギリの部分は上手に拭くことができません。荷物ひとつないまっさらの四角い部屋であれば、ブラーバさんがお仕事を終えたあとに、壁の4辺に沿ってクイックルワイパーをかければいいのですが、実際の部屋の中は、テレビ台に、ソファに、食器棚に、さらには壁際に積んである本など障害物がいっぱい。そもそも、私の部屋には、大きな柱が出っ張っている部分があるので、かなり凸凹しています。その凸凹に沿って後からクイックルワイパーをかけるくらいなら、最初から全部クイックルワイパーで掃除をした方が早いのではないか…という気もしなくはないのですが、でも、ブラーバさんのポテンシャルをもっと引き出す方を私は選びました。

ブラーバさんがきっちり働けるように、事前に片付け片付け。カーブをなくし、できるだけ角を作らず、拭き掃除してもらえるスペースを増やすのです。時間に余裕がある時には、ブラーバさんの掃除中ついて回っています。決して、監視しているわけてばありません。というか、口出ししたくても、ブラーバさんに事前に組み込まれているプログラムをいじれるわけじゃないから、どうにもならない。そのため、ついて回る理由は、私がプラーバさんをサポートするためです。そして、この前の日曜日には、ブラーバさんのために、部屋のレイアウトの変更もしました。狭い部屋なので工夫したところで限度はあるのですが、それでも、多少はブラーバさんが働きやすい環境になったのではないかと思います。自分の都合に相手に合わせてもらうのではなく、相手の行動が自分の都合にあうように環境を合わせる。同居するって、そういうことなんだなぁと、しみじみ感じています。

ブラーバさんと同居するようになってから、私が掃除としてやるべきことは、ブラーバさんが苦手とする壁のギリギリのところを後から拭き取ることと、ブラーバさんが仕事を始める前に、拭き掃除ではどうしようもない大き目のごみなどを片付けることに限定できるようになりました。

「それって、結構、手間がかかっているんじゃないの?」というご指摘を受けそうだけれども、サポートがピンポイントで済むって、画期的なことです。会社の部下で、何度頼んでも、同じようなミスをする人がいます。グーグル先生に問い合わせて、上位3項目ぐらいに書いてあることをテキトーにつなぎ合わせて顧客への提案書を書いたりしているから、内容が薄っぺら。しかも、誤字脱字があるのは当たり前。だから、ポイントだけチェックしてゴーサインを出すわけにはいかず、最初から細かく見直さなければならない。頼むだけ無駄だったと思わされたことが今まで何度あったことか。その点、ブラーバさんは、苦手なこと以外はきっちりできるので安心できます。

3日経つと指示を忘れてしまうもう1人の同居人と違って、ブラーバさんは自分がやるべきこと忘れることもありません。毎日のように「今日はプラゴミだよ」「明日は紙のゴミだから新聞まとめておいてね」と事前に注意喚起する必要もないのです。

「ルーチンワークはつまらない。もっとクリエイティブな仕事がしたいんです!」など、実力もないくせに一丁前のことを言う会社の部下と違って、ブラーバさんは自らの「分」を弁えています。毎日、毎日、毎日、同じことをしても「飽きた」とか「退屈だ」とかいう不平不満を言ったりしません。まぁ、たまに、会社から帰ってくると、バッテリー切れのオレンジのランプを付けたまま、ブラーバさんが部屋の真ん中で呆然自失していることもありますが、それはご愛敬というものでしょう。

あえて、もう一つ、気になるところを挙げておくと、使い捨てのパットが割高だということです。10枚セットで1000円もするのに一瞬のけぞりました。でも、スタバでフラペチーノ2回飲むのを我慢するだけで、毎日、拭き掃除してくれるのなら、決して、受け入れ不能というわけではありません。それに、使い捨てではない、洗って繰り返し使えるタイプのパットもあります。それは、自分で手洗いしなければならいなのですが、でも、ブラーバさんの仕事量を考えれば、雑巾の水洗いぐらい大したことではありません。よくよく考えれば、コストと手間を天秤にかけて納得が行くように価格設定もされているように思えます。

部屋をキレイに保つためのお手伝いさんとして、ブラーバさんはこの上なく貢献してくれているので、本当に、我が家にお迎えして良かったなと思います。ブラーバさんが全てをやってくれるわけではないけれど、でも、ブラーバさんが働きやすいように配慮することで、部屋が散らからなくなったし、以前よりもクイックルワイパーを使う回数も増えました。私自身、ずいぶん、きれい好きに生まれ変わったような気がします。

最近、気づいたのですが、3カ月前まで、決して捻出することができなかった「5分」を、ブラーバさんはいとも簡単に私にもたらしてくれました。いやいや5分どころではないかもしれません。ブラーバさんが働きやすいように、毎日、私は、会社に出る前に、部屋をキレイにお片付けをして、余裕がある時には、ブラーバさんのために事前に掃除機までかけておくサービスもします。

やっぱり、AIって、人間を上手く使うのですね。

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