蹴れば蹴るほど、ボールは近くに転がる
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記事:遠山 涼(ライティング・ゼミ 日曜コース)
「間に合わない!」
僕は駆け出して、足を伸ばした。
相手は僕をドリブルで抜き去り、鋭いシュートをゴールに突き刺した。
まさに、一瞬の出来事だった。
人生初のフットサルで、こんなに実力の差を見せつけられるとは思わなかった。
高校生まではサッカー部だったので、少しは自信があった。
しかし、サッカーとフットサルとでは根本的に違う部分があるらしい。
フットサルはとにかく展開が速い。
サッカーよりもコートが狭いので、攻撃と守りが交互に、めまぐるしく繰り返される。
だからずっと走っている。コートの中を行ったり来たりで、休む暇は本当にない。
こちらが攻めているときはまだマシだが、相手にボールを奪われた途端に、また全力で走らないといけない。
さらに、相手にボールを奪われないためには、とにかく動き回らなければいけない。
サッカーならコートの広さを生かして、パスだけをつないでボールを奪われないようにすることができるが、フットサルではできない。
狭いコートの中でパスだけをつなぐことには限界があるのだ。ボールを回しているだけではすぐにボールを奪われてしまう。
僕はとにかく体力が持たなかった。
息はすぐにあがり、脳に酸素が不足したせいでめまいがした。
血液中の酸素が減り、太ももに力が入らなくなった。
それでも相手は容赦なく、僕たちのゴールめがけて攻撃を仕掛けてくる。
その素早いボール運びについて行けず、いつのまにか僕は人工芝の上に倒れていた。
高校生のころと同じくらい、長い時間ちゃんと走れるようになるには、体力トレーニングが必要だと確信した。
毎日部活で走り回っていた、体力溢れるあの当時の若さは失ってしまったのだ。
自然の摂理に従って進んでいく体の衰えに対抗するのだから、何か努力をしないといけない。
高校生のころと同じようなことをしていては、高校生のころのような状態をキープできない。
それがつまり「衰え」というものなのだろう。
そう、僕は思い知らされた。
フットサルでもっと動き回れるようになるためには、これまでは家でのんびり過ごしていた休日や平日朝の時間帯に、近所を30分ほどジョギングしたりする必要があるだろう。
頭では分かっていても、それを実行することは難しい。はっきり言うと、かなりメンドくさい。平日は仕事で忙しく疲れ果ててしまうのに、朝早く起きたり、ゆっくり休みたい休日を使って30分のジョギングをするなんて無理だ。気持ちの問題だけでなく、きっと体力的に無理だ。
体力を取り戻すために体力を使うなんて、何かおかしくないか?
高校生のころの自分よりも長く走れるようになりたい訳ではないのに、高校生のころにもやっていなかったような努力を今になってしないといけないなんて。
そう考えると理不尽にも思えたが、そもそも理屈ではないのだ。
生きているだけで体は衰える。お金や時間も一緒だ。生きているだけでどんどん無くなっていく。
体力的なスタミナや経済的な安定、時間的な余裕は、じっとしているだけでは手に入れられない。
体力をキープするだけでもトレーニングで老いに抵抗する必要がある。
生活するだけで食費、光熱費、家賃などの出費は発生するので、働いてお金を稼ぐ必要がある。
時間的な余裕を手に入れるには、効率的な時間の使い方を工夫しないといけない。
フットサルだって、同じだ。
ただ時間をやりすごすだけでも、必死に動き回り、ボールを回し続けないといけない。
僕が足でボールをとめたまま、その場に立ち尽くしていたとしたら、相手は一気にボールを奪いにくる。
もともと僕は変化を好まない性格だ。
変化が続き、先行きがどんどん見えなくなってくると、不安になるからだ。
できれば大きなトラブルや災害に遭わないような、安定した生活を目指して、日々生きている。
しかし、そのためには自分から変化が必要だということも、今では分かっている。
変わりたくないと思えば思うほど、変わり続けることが必要だと強く思い知らされる。
変わりたくない! と、ただ弱音を吐いて現状にしがみついていても、その「現状」自体がどんどん変化していってしまう。
どうやら変わり続けることが、変わらずにいることの唯一の方法のようだ。
プロのサッカー選手の中でも、ドリブルがうまい選手は特にボールに触る回数が多い。
それもよく考えてみれば変な話だ。
相手にボールを奪われないために、通常よりも多くボールを「蹴る」なんて。
ボールを蹴れば当然、自分から離れてボールは転がる。その行為を通常よりも多く繰り返すことが、自分の近くに長い間、ボールを置いておくことにつながる。
次のフットサルの予定まで、あと2週間ほどある。
変化を好まない僕でも、前回と同じような散々たる結果に終わるのはもっと嫌だ。
だから、それまでに30分ほどのジョギングをする習慣をつけておかないといけないのは分かっている。
それを実行できれば話は簡単なのだが、残念なことにそう上手くはいかない。だって疲れるから。
まずは地下鉄のエスカレーターに乗るのを止めて、階段を使ってみるところから始めよう。
小さなことだけれど、それだって変化だ。
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