メディアグランプリ

日本一ヘタクソなプロカメラマン


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中村公一(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
私は、恐らく日本一下手なプロカメラマンである。
そもそも「プロと自称出来る腕なのか」と問われると、ぶっちゃけた話、アマチュアと言われても差し支えは無い。構図も色の安定も、ライティングも下手くそである。
つまりは、写真について自信が全くないのだ。

今年の3月に前の職業を辞めた私は、実家の経営している写真店にアルバイトとして入る事が出来た。バイトなので給料は大した事はない。
写真店では店頭業務の他に、撮影の仕事に行くことが多かった。
出張撮影は、そのほとんどが取引先の幼稚園・保育園、小中学校の行事撮影である。
卒業式入学式の撮影、遠足や運動会の撮影、卒業アルバムの個人撮影、林間・修学旅行など、場合によっては泊りがけである。
現在使用しているカメラはニコンのD500というカメラで、大変性能がいい。今年の4月に会社が購入して、私の専用機材になった。
これが私の、実質上初めてのマイカメラだった。
それまで、つまり今年の3月まで、私はろくに写真をやってこなかったのである。
やっていたのは学生映画の撮影や文章の執筆くらいのもので、写真撮影を仕事としてやることに、かなり不安はあった。

初めての出張撮影は学校の入学式だった。学生たちを撮るが、ピントは外れる、画は暗くなる、構図は甘い、寄り過ぎる……など、課題点が多々出てきた。
現在まで、修学旅行や林間学園、遠足などに何度も出張しているが、そんなに成長できたかと問われると、出来ていない。
特に集合写真の時に指示を出す事。あれは本当に嫌だ。指示を出さねば良い写真を撮れないのだが、向こうも言う事を聞かないし(実は幼稚園の高学年が一番いう事を聞く。むしろ小中学生の方がひどい)自分にも「この背景の位置でいいのだろうか」とどこかに不安点があり、結局いまいちな写真になってしまうのだ。
これではせっかくのいいカメラも豚に真珠である。豚が使っているとはいえ、仮にも真珠だからそこそこ良い写真は何枚か撮れるのだが、豚に撮影される学生さんたちはたまったものではない。一生に一度の林間だの修学旅行だのの思い出を、しっかりしたクオリティで残すのが写真屋の仕事であるとするならば、私はとてもプロなどとは言えないカメラマンなのである。

そんな私に、少しだけ自信がついたのはつい最近の事だ。
店内で、母が取引先のK保育園の遠足の写真をプリントしていた。5月ごろに私が撮影した時の写真である。WEB上での注文期間が終わり、入金済みになった園児たちの分のスナップ写真や集合写真を焼き始めていたのである。
パソコン画面に写真が表示され、注文された写真に漏れが無いか確認している母を見たとき、私はその画面に映る、一枚の写真を見逃さなかった。
「あの写真、売れたのか!!」
母は私の大声にびっくりしたが、直ぐに「そうよ」と答えた。
その写真は、黒人男性と日本人女性との間に生まれた男子園児の写真だった。
5月の遠足撮影で、私はこのK保育園の園児たちに初めて対面した。みんな腕白で可愛らしい。何人かハーフの子供もいて、その一人がこの黒人の少年だった。笑顔が大変眩しい少年で、初対面の私にも心を開いている様子だった。
そして、「これは傑作だ」と思わず自画自賛してしまった写真が撮れた。
遠足先の公園には象の形をした滑り台があるのだが、内部が空洞で、象の目が穴になっており、内部から顔をのぞけるものとなっている。
私が腕白園児たちの撮影に悪戦苦闘している中、ふと、象の目から私を見ている顔を見つけた。例の少年が顔をのぞかせているのだ。それもこの日一番の笑顔で。
私は直ぐにシャッターを切った。凄いものを撮れたと思った。
実際、後日写真を整理したが、悪いものではなかった。この遠足で撮った写真の中では一番の出来だった。
「これが親御さんに買ってもらえるといなぁ」
私はささやかな望みを抱いたが、そういう事も、その後の撮影の中ですっかり忘れ去っていった。
そういう中で、この写真との再会である。
注文したのは、この少年の父親だった。息子が満面の笑顔を穴からカメラのレンズに向けている写真に、スナップ写真代110円を払ってくれたのである。
この時、私は日曜日に受講している天狼院のゼミを思い出した。
「コンテンツとは、それに対して時間もしくはお金を費やしても良いと思えるものである」
その言葉を思い出して、私は感動してしまった。私のような下手くそなカメラマンの撮った写真が、コンテンツになったのである。私が一番気に入っていた写真だった事も嬉しかった。
この時までに、私の撮影した写真は、ぶっちゃけスナップ写真として何百枚も売れている。この黒人の少年の写真もそうした写真の一枚に過ぎない。しかし私の中にある「プロカメラマンとしての心」に火がついたのは、この写真が売れたと知った時である。
精進しよう。そして写真の技術を安定させて、こういう気に入った写真を一枚と言わず何百枚も撮れるようなカメラマンになってやろう!
心からそう思えた。

私は自分の撮った写真を、額の大小はともかく、「お金」にすることが出来た。プロとしての第一歩を漸く踏み出せたところである。
もう一つ、私は目標が有る。
写真屋の息子だった私が、写真を撮り始めたのは今年の3月である。それまで私は何をしていたのか?
文章を書いていたのだ。
そして、その技術をもっと高めたいと思い、天狼院のライティングゼミを受講した。
4月の時に比べて、上達はできたのかもしれない。しかし、私にはまだ到達できていない目標が有る。
私の文章を「お金」にすること。コンテンツとして多くの人に読んで頂くこと。これである。
今の私には、それほどの技術はない。
私の本業は写真屋の店員だが、小さいころからの夢だった「物書き」としての実力をつけて、あの黒人の少年の写真のように、しっかりとしたコンテンツを作りたい。
私の一生の目標である。

 
 
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2017-08-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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