メディアグランプリ

人生というレコード盤をひっくり返すタイミングについて。


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記事:ハナオカ(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
またこのごろレコード盤を聞くようになった。しばらくレコード盤を聞かなかったのを引っ越しのタイミングで引っ張りだしてきたのである。最近IONという会社が安価でおしゃれなレコードプレイヤーを発売してくれたのでそれを使っている。
 
古いジャズやソウルミュージックのアルバムをきく、古い人ばかりではなくこのごろのミュージシャンでもレコードを出している人はいる、MOCKYというカナダのアーティストが出したレコードを今は良く聴いている。新しいようでどこか懐かしい音楽が、自分の今の気分ととてもフィットしているのだ。
 
レコードというのは、表(A面)と裏(B面)の2面に音が鳴る溝がついている。それをダイヤモンドの針で引っ掻いた時の、小さな音を大きく増幅しているのである。片面の収録時間はというと、いい音で聞きたければ20分くらい。あまりたくさん詰め込もうとすると、盤面の幅は限られているため、溝がやせてしまい、音も同様にやせた音になってしまうのである、長くても30分くらいだろうか。
 
レコードでのリリースを意識したミュージシャンのアルバムというのは今も昔も、A面、B面での収録曲の構成に妙があるものが多い。A面やアルバムの始まりには、アップテンポな曲や明るい曲、そのアーティストのイメージ通りの、待ってました! というような曲が入っている。いまはあまり聞かないが、キャッチーなシングル曲などばかりを集めたアップテンポなベスト盤は「A面コレクション」と言う名前で販売されていた。
 
A面の曲が全て終わると、レコード盤が中心まで針を運び終える頃には、静寂が戻ってくる。そこで腰を上げて、作業なり、読書なり、居眠りなり、その場で行っている事を自分のタイミングで中断して、B面をひっくり返す為にレコードプレイヤーに向かう。めんどうくさい、けれどそこがいい。くるっとひっくり返してB面の端っこにそっと針を近づける。状態の悪いレコードだと端っこが波打っているのがわかる。そこへうまく針を落とすと、しばらく、じらすようなチリチリとした音のあとにB面の世界が始まる。
 
B面はダウンテンポな曲やメロウなバラードであったり、確かにそのアーティストのものではあるのだが、意外性を帯びた曲や実験的なものが入っている事が多い。実は自分はB面の曲ばかりなぜか好きになってしまう。何度も聴いたアルバムだったら気分によってはB面から聞きはじめたり、B面ばかり何度も繰り返し聞いてしまうのである。ともすればアーティストの本音がそこに入っているような気がする。
 
人生にA面、B面というのはあるのだろうか、ということを考えながら生きている。だとしたら、「よいしょ」と腰を上げ、盤面をひっくり返す瞬間というのはいつ頃やってくるのだろうか。
 
逆算してみよう、楽観的に考えて自分の人生の収録時間は84年くらいだろうか、だとしたらひっくり返すタイミング、というのは42才前後がいいのではないだろうか。そこでめんどうくさいけれど、自分がやっている事を中断してレコードをひっくり返しにいく、思い返せばアップテンポだったり、ちょっと気恥ずかしかったりしたA面の時間から針を上げて、レコードをくるりとひっくり返す。再び針をのせると、じらすような静寂のあとに意外な一面が聞こえてくる。そういう風に生きる事が出来ればいいな、と思っている。
 
そういう風に生きる事、が出来れば、人生が二度あるようでなんだか得した気分になるのかもしれない。一方で、それは全く別のスプリットされた自分、ということではなく、今まで聴いてきた音楽の延長にありながら、よりゆっくりと落ち着いた、メロウで意外な一面なのかもしれない、B面のレコードの終盤にさしかかる頃には、両面で一つのアルバムだった、という事に納得がいくようになるのだろうか。
 
では、自分の人生においてレコード盤をひっくり返すという行為にあたるものは何だろうか、ということを自問自答している。それには明確な答えは出ないが、例えば自分が今までやってこなかった事にトライする、じぶんの価値観を上下左右、真逆にひっくり返す様な事、そう行く事はないかしら、と街を眺めている。
 
例えば、乗った事も無いスケボーに乗ってみる事、ブレイクダンスを年甲斐も無く習ってみる事。めんどうくさいけれど、何かしら興味があった物事に挑戦する事がレコード盤ひっくり返す行為に似ているのかもしれない。文章を書くためのセミナーに顔を出す事だってそうだ。自ら創り出されるであろう膨大な言葉の中に、意外な自分を捜しにいく事。そういったことが人生のB面、裏側に潜んだ豊かな本当の音楽を奏でだす。
 
そういう可能性に期待しながら自らが吐き出した文字の演奏の中へ、ある時は伸びやかに、ある時はたどたどしく、小さいけれど代え難い旋律やハーモニーを聞くために、今夜文字の海の中へと、飛び込んでいるのかもしれない。
 
 
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2017-08-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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