メディアグランプリ

鶴瓶さんにキュロンを探せと言われた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:仲里 実(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
※このお話はフィクションです。
 
「私、いびきをかくかもしれないけど気にしないでね」
結婚前に妻とつきあっていた頃のことだった。
初めて私の家に泊まる妻が、寝る前に恥ずかしそうに言った。
 
一緒に寝ていると、確かにいびきをかいていた。
しかし、それほど大きないびきでもないし、毎回いびきをかいているわけではなかった。
私自身もいびきをかくし、私の母もいびきをかいていた。
なので、妻がいびきをかいてもそれほど気にならなかった。
 
もともと、妻はちょっとぽっちゃりしている。
結婚して妻のぽっちゃり度はさらに進んだ。
ぽっちゃりの人はいびきをかきやすいらしいので、多少はいびきをかいても仕方がないと思っている。
 
ぽっちゃりを気にしているみたいだが、ダイエットする気はそれほどないらしい。
間食が多いので
「少しは間食を控えたら……」
と注意するのだが、夜になるとお腹が空いてしょうがないらしい。
夜になると間食する事が多いので
「朝ごはんと昼ごはんをもっとしっかり食べたらいいんじゃない」
というのだけれど朝昼はあまりお腹がすかないらしい。
妻が間食すると、私も一緒になって間食してしまうことも多い。なので、私もなかなかやせることができない。
 
ぽっちゃり度が進むにつれて、妻のいびきの音は大きくなってきた。
特に疲れている日は、いつもよりいびきの音が大きくなる。
それはお互い様で、私の場合はお酒を飲んだときに特にいびきが大きくなるらしい。
妻のいびきで目が覚めたことが何度かある。
ある日、夢の中に豚が出てきて
「ブーブー」
と鳴き始め、目が覚めたら妻のいびきの音だったことがあった。
 
また、妻は結婚したあと、徐々に鼻炎の症状が出てきた。
常に鼻をずるずるしているというわけではないが、日によって鼻水が止まらない日があるらしい。
一度、病院で診てもらってアレルギー性鼻炎の薬を飲むようになった。
それでもどうしても鼻水が止まらない日はあるようだ。
 
鼻が詰まっている日はいびきの音が変化する。
いびきの音というと、普通は「グーグー」とか「ゴーゴー」みたいなガ行の音が多いと思う。
鼻が詰まっている日は「ピーピー」というパ行の音になったり、「キューキュー」みたいなカ行の音になることがある。
きっと笛と同じようなものだ。空気の通り道が狭くなってそこを空気が通り抜ける際に音が変化してしまうのだと思う。
 
いびきをかくのはいいが、心配なのは時々、息が止まっていることだ。
いびきの音が急に止まり、30秒から1分くらい経ってからまたいびきをかき始めることがある。
そんなときはたいてい
「……プハッ、ハアハアハア……」
と苦しそうにいびきを再開する。
 
横向きになるといびきをかきにくい、ということをテレビで知った。
それ以来、息が止まって心配なときは妻を横向きにするため、手で押すことがある。
寝たまま、自然に横向きになってくれたらいいのだが、妻はそういう時はかならず目を覚ます。
「寝てるんだから起こすなよ……」
みたいな表情で私を見てから横向きになる。
私も起こしたくはないので、妻が寝ているときはできるだけ触らないようにしている。
 
ちなみに私も同じように息が止まっていることがあるらしい。
もしかしたら、睡眠時無呼吸症候群という病気かもしれない。
「あまりにひどくなったら病院に行こう」
と普段から話し合っている。
 
ある日、私は笑福亭鶴瓶さんと喫茶店でコーヒーを飲んでいた。鶴瓶さんは親しみやすい性格らしく、ロケ先で知り合った一般の方と普通に親しくなったりするらしい。
鶴瓶さんは独特のしゃがれた声で
「ところでキュロンはどうなったんだ」
と聞いた。
「キュロン?」
私にはキュロンという言葉の意味が理解できなかった。
「キュロンって……なんですか?」
「お前、キュロンを知らんのか?キュロンを探せと言ったやないか」
「そんなふうに言われても……」
「キュロン……キュロン……キュロン……」
鶴瓶さんは「キュロン」という謎の言葉を繰り返しながら私に迫ってきた。
私は「キュロン」という言葉の意味がわからず、頭を抱えた……。
 
徐々に目が覚めてきた。今の出来事は夢だった。
「キュロン……キュロン……キュロン……」
という声はまだ聞こえていた。
 
隣で妻が鶴瓶さんのような声で
「キュロン……キュロン……キュロン……」
といびきをかきながら寝ていた。
 
 
※このお話はフィクションです。
 
 
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2017-08-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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