SNS恐怖症、克服奮闘記
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:前岡舞呂花(ライティング・ゼミ 平日コース)
SNSとの付き合い方に悩んでいる人は少なくないはずだ。
FacebookやTwitter、Instagram。
それらをスクロールすると流れてくる情報の数々。
イベントの告知や記事のシェアから、近況報告、お洒落な写真、裏アカウントのつぶやきまで、様々な人の様々な投稿。
しばらく顔を合わせていない相手の近況まで分かるし、欲しい情報も転がっていて、且つ暇つぶしにもなるからSNSは偉大だと思う。
手持ち無沙汰だと思ったとき、スマホを取り出しそれらを開く一連の動作はもはや癖になっている。
しかし私は「投稿する側」ではない。
ずっと「ロム専」を貫いてきた。ロム(ROM)=「Read Only Member」、つまり「読む専門」ということだ。特に発信したいこともなかったので、当然である。
ところが、最近それでは物足りなくなってきていた。天狼院書店のライティング・ゼミを受講し始めたせいだ。
毎週頭を悩ませながら、課題を完成させている。原稿を改めて読み直して、よし、これでいこうと覚悟を決めてから、Facebookのグループページに共有。数日後に来る、川代さんからのフィードバックを受け、一喜一憂する。そもそも評価をもらえることそのものが張り合いになっているのだが、やはりWEBに載ると、ひとしお嬉しい。より人の目に触れるチャンスがあるということだからだ。しかし欲深くなってしまった。WEB掲載が認められたという保証が付いた文章は後ろ盾を得たようで、いつからか、もっと読んでもらいたいと思うようになっていた。
眠らせていたSNSを動かそうかな、と考える日々が続いた。
何も考えることではないじゃないか、という人もいるだろう。
発信したいなら発信すればいいだろう、と。
でも、このSNS社会に生きながら、それができない私に共感してくれる人もいるはずだと信じて書く。
本当にただ必要性を感じなくてSNSを動かさない人はいる。
だが、私がロムるのに、「発信したいことがない」以上の理由があることは分かっていた。
怖いのだ。何かを発信することが。
個人情報云々の話ではない。
何を言ってもそれとは違う意見が絶対存在するもので、例えば「猫がかわいい」と言ったとしても、「いや、かわいくない。気がしれない」とか、「かわいいっていう自分かわいいアピール?」なんていう人も少なからずいるはず。100%賛同を得ることができる意見などないわけで、要は人の目が気になって動けなかったのだ。
確実に知り合いを目掛けて飛んでいくSNSによる拡散は、傷つくリスクが高いと判断していた。
実際SNSがなければ起こらなかった問題は、手の届く範囲でもたくさん見てきた。
だから私は悩んだのだ。
自意識過剰と言われれば返す言葉がない。
ともあれ、実際には今まで「(そのリスクを冒してまで)発信したいことがなかった」というほうが正しい。
でも、そのリスクを冒してみたいと思った。
そして、自意識過剰であることを認めたうえで、今までの自分を少し変えうるチャンスだと思った。
そうと決まれば、とパソコンを開く。
Facebookにリンクを張り、投稿するだけだ。
よし。
投稿。
……いや、やっぱり、できない!
結局、「あとは投稿ボタンを押すだけ」という状態のまま、ただパソコン画面を眺めたり、外の景色に目をやったりしながら覚悟を固めるのに30分以上必要だった。
バンジージャンプと一緒だ。一度腰を引いてしまうとなかなか踏み出せない。
そして。
時間はかかったが。
ついに。
投稿ボタンを押した。
話は変わるようで変わらないのだが、私は注射が大の苦手である。
恐らく幼児期に、何か注射でものすごく嫌な思いをしたのだろうと思っている。
腕にアルコールが塗られて、チューブで二の腕をきゅっと締められるまでは、お医者さんに「私、本当に注射無理なんで、そこのところお願いします」なんて、言えてるだけ余裕がある。でも注射針が出てくるともう一気に現実になってだめだ。体に緊張が走る。腕にぐっと力が入る。注射針が近づいてくる。怖いという本能と、もう私は成人した大人……! という理性とが脳内でせめぎ合い、本能サイドに軍配が上がる。「ごめんなさい! ちょっと待ってください、まだ心の準備が……!」と腕を引く。「目をつむってたら、すぐ終わるからねー」と、呆れているだろうに、それでも優しくお医者さんが言う。このやりとりを少なくとも、もう一度繰り返す。最終的に斜め後ろに立っていた看護婦さんが私の腕を抑えにかかる事態に。最後に、頑張ったね、とアンパンマンとか、かわいらしいキャラクターものの絆創膏を貼られて解放される。
もう申し訳ないやら情けないやらで、誰とも目を合わせられないまま「本当にすみませんでしたありがとうございました」と早口に伝え、椅子を立つその瞬間。ピーンと張った緊張の糸が一気にほどける感覚と同時に、貧血を起こし倒れたことが、何回かある。笑い話だが。
なんと、Facebookの投稿ボタンを押したとき、同じ現象が起こったのだ。
さすがに倒れはしなかったが、貧血らしい症状が起きた。
投稿ボタンを押した……、と一息つこうとしたそのときである。視界がぼやけた。焦点が合わない。頭が意図しない方向にグラッとなった。
水、水飲まなきゃ。
遠いところに目線をやり、頭のてっぺんから糸で吊るされたように、ゆっくりと、まっすぐ立ち上がり、冷蔵庫に足を進めた。水を一杯あおって、少しの間ぼーっとすると、収まった。
客観的に、そこまで緊張していた自分に驚いた。
私のSNS恐怖症は思った以上に重度だったらしい。
なんてめんどくさいのか、自分。
でも、注射とは違って、克服できそうな予感がした。
なぜなら、しばらく経つと反応が返ってきたのが嬉しかった。
面白かったという声が届くのが嬉しかった。
それは、もっと読んでもらえる文章を書けるようになりたい、という励みにもなると思った。
私はSNSに対する捉え方が重いので、それぞれのアカウントが「自分をプロデュース」しているというような見方をしている。
今までロム専に甘んじていたが、今は、発信することによって見える景色をみてみたいと
思うようになった。
少なくとも、自分にとっては大きな一歩になるだろう。
思ったより怖いものじゃないかもしれない。
でも、無理はせず、マイペースに。
もう少し、SNSとうまく付き合っていける方法を模索していこうと思う。
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