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メディアグランプリ

悔しさをバネにすることってあるんだと思った話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:多恵(ライティング・ゼミ日曜コース)

 

「一生のうち一度でいいから、本屋さんで働いてみたい」

 

それは私の長年の願いのようなものだった。

 

その同じ言葉を先日、私の高校三年になる娘から聞くことになるとは夢にも思わなかった。

 

私には一人娘がいる。娘が子どもの頃から毎月せっせと絵本を買い与え、読み聞かせをしてきた。大きくなってからも娘が欲しがる本は買い与えた。それはライトノベルであろうが、漫画であろうが紙に活字が書いてあるものは何でもだ。

 

ある作家が、子どもの頃に好きなだけ本を読める環境を親から提供されていたというのを聞いて羨ましく思っていたからだ。本屋さんでツケがきくように父がしていたというのだ。

 

私は母子家庭で裕福ではないが、子どもには不自由させたくない。本を読むという楽しさを知ってほしい。その一心で買い与え続けた。

 

娘自身も自分で本を買うようになり、私にこの本が欲しいねんと言ってくるのは自分で買うにはちょっと高いものを言ってくるようになった。

 

その娘が、「一生のうちで一度でいいから、本屋さんで働いてみたい」というのだ。

 

なぜ、そんなことを言うのか。ただ、今の状況から逃れたいだけなんじゃないのかと親ながらネガティブな発想しかできないでいた。受験生の娘が安易に好きな本に囲まれて過ごしたいと思っただけなのかとも思った。

 

本屋さんはなかなか過酷な職場であることを娘には伝えた。本屋さんで働いていた友だちがなかなか収入が伴わないので辞めたと言うことも伝えた。

 

娘の反応は、「へぇ、そうなん」と自分とは関係ないと言う風な口ぶりで言うのである。

 

「私、本屋さん自体は信用してへんし」

 

一瞬、耳を疑った。

 

そんな恨みのある本屋でなんで働きたいのか?

 

つい先日、大人気の漫画家のサイン会が行われると言う情報を聞いて娘は絶対に行きたいと私に相談してきた。私が休みなら並ばせようと言う魂胆だったらしい。私は、仕事が休みであったが用事があったので断った。夏休みではあるが受験生で学校は毎日行かねばならない娘はどうしようか悩んだ。

 

よくよく聞くとサイン会は並んだその日に行われる訳ではなく、漫画の発売日に合わせてサイン会の整理券が配られるようだった。

 

ツイッターなどを駆使して、このサイン会に参加するには何時から並べばいいのか。前情報の収集も念には念をいれた。早朝から並ぶ人は排除されるらしいから早朝は何時からなのか本屋さんに電話で確認したらしい。

 

そして、だした結論、夏休み中の学校での授業は出席日数にはならないので途中からいくことにする。私服で始発に乗り、列に並ぶ。終わったら、制服に着替えて学校に行く。早朝は排除されるので本屋さんに確認した時間は7時だった。

 

娘の話によると金曜日、梅田の大型書店の前は、6時半についた時点でもうすでに長蛇の列ができていた。あまり早く並び座り込みなどしていると排除されるのでそーっと周りを見ながら列に並んだ。前に並んでいた女の子たちは友だち同士らしかったがずっと話しをしていた。それはそれで楽しい時間を過ごしたようだ。

 

10時開店と同時に整理券が配られ出した。その券はなぜか「整理券」ではなく「整列券」と言われたようだ。明らかに1番に並んでいた人は7時に並び始めた人ではなかった。早朝から座り込みをしている人だったようだ。本屋さんもどこから配ったらいいのかわからなかったようで、出版社に電話する始末。出版社もその場の状況がわかるはずもなく、「最前列から配ってください」と言われたとアナウンスがある。

 

そして、80名配られた。娘は81番。前の女の子の二人組はそれがわかった途端、「ごめんな」と言いながらよそよそしくなったと言っていた。

 

そこから、敗者復活ではないがキャンセル待ちの抽選をするので並べという。キャンセルが出たら、81番からという配慮は一切なく、整理券を持ってない人も含めてまた一から並べという過酷としか言えない状況だった。

 

20名枠の電話も懸命に並びながら電話をしたが繋がらずということだった。

諦めざるをおえない状況。それが娘の結論だった。

悔しいけど、あまりに疲れて並ぶのをやめ私にLINEを送ってきた。「むりでした」

 

私はそれを聞いてあまりに運のない娘に同情した。しかし、受験生、こんなところで運を使わなかったことは良かったのではないかと慰めた。

 

娘が怒っていたのは、電話対応で確認した時間と整理券を配ってからの対応のまずさだ。

 

「あの場で見てない出版社になんで確認しなきゃいけないんだ。確認するところ間違っているよね。主催者は本屋さんじゃないの?なんで決められないんだ。私、間違ってる?」

 

全然、間違ってなかった。

「私なら、並んでくれた人に対してこんな対応はしない」

 

そう言ったのだ。

 

そうか、娘は「本屋さんで働きたい」ということはこういうまずい対応をする本屋さんをなくしたいと思ったからなのかと直感的にわかった気がした。

 

私は、「今度さ、この頃、気に入ってる本屋さんが祇園にあるから行こうな」と誘った。「体験ができる本屋さんなんだよ、ちょっと他にないからきっと気に入ると思う」

それは、もちろん天狼院書店のこと。

 

娘は目を輝かせて「行きたい。受験が終わったら連れてってな」と言った。

 

娘は自分が受験生であることを忘れてはいなかった。

「こんなこと言うのは、負け惜しみとか言い訳みたいで嫌だけど、勉強頑張るわ」

 

もし、娘が大学生になって本屋さんでアルバイトをしたいと言い出したら天狼院書店でアルバイトしたらと迷わず勧めるだろう。

 

その時は、お客様の思いに寄り添えるアルバイトとして良い働きをするだろうと確信している。

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2017-08-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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