メディアグランプリ

〆切が怖い私はちょっとグレてみることにした


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記事:q3c3p(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
私はもう長いこと先延ばし症候群を拗らせている。
よく言われる先延ばし癖などという生半可なものではなく、拗らせまくった末、人間としてアウトなラインに到達したことすらある。
 
怖いのだ。どうしようもなく怖い。
仕事をいただいたら予定をたて、自分で締め切りを作る。
そしてやらなければと机に向かった瞬間動きがピタッととまる。
お腹のあたりがぐーっと苦しくなる。
それが喉のあたりまでやってきて、息苦しいような感覚に陥り、はっとなって席をたつ。
 
そうだ、コーヒーでも淹れよう。
うんそれが良い。きっとコーヒーを飲んだらスッキリと作業に着手できるに違いない。コーヒーを手に机に戻ってきた私にやはり先の現象が起こり、ソファーへと逃亡する。
 
はじまりは小学生の頃の夏休みの宿題だろうか。
もしかしたらピアノを習い始めた4歳からかもしれない。
 
小学校の3年生になるころには、1日に何度も言われる「宿題やった?」に対して、「今やろうと思ってたのに」とおきまりの台詞を返す気力すらもはやなかった。
やらなきゃとおもってもがいているところを母親につっこまれ、言われてからやったと思われるのが癪にさわるのですぐにはやらない。もやもやした塊をお腹の中に押し込んだまま、宿題をやるふりをするため自分の部屋に戻る。くだらないプライドのおかげでもう立派に病を拗らせていた。
 
そのくせ私はなぜか締め切りが発生するものに好んで突入していく子供だった。壮大な夏休みの自由研究、ピアノ教室、公文式、学校の文化祭の伴奏役。そしてギリギリまでやらず怒られるところまでがワンセット。もはや小学生ながらドMとしか思えない突入具合だった。
 
そんな生活をずっと続け、中学のころにはとうとう自分が自分で作った〆切やタスクにまで同じ反応が起こるようになった。自分でやらなきゃと思った瞬間、母に「宿題やったの?」と聞かれた時と同じ感覚に襲われる。
〆切といってもなんの問題もなくクリアできるものもある。敵は〆切そのものじゃないのだ、「やらなきゃいけない」と自分が認識してしまった作業に着手することができないのだ。それがたとえやりたいことであったとしても。
 
そして残念なことに私の仕事は〆切仕事だ。これではいけないと、本やwebなどを必死で調べた、役立つと言われるツールもたくさん使った。コーチングを試してみた、カウンセリングにもいってみた。
作業を細切れにして精神的負荷を下げろとか、脳の仕組みとしてまず動きださないとやる気は出ないからとりあえずなんでもいいからなんかやれとか、とりあえず拳をあげてポーズを取れとか、たくさんある文献のパターンを解析してしまえるくらいには調べた。
でも治らない。お手上げだった。
 
そうしている間にも、締め切りを抜けた後の爽快感が私の病気を加速させた。
逆算して徹夜したらまだ間に合うと、だらだらと着手しなかった。
その結果24時間作業し続けて、ギリギリ間に合った瞬間缶ビールのプルトップをプシュッと開ける、それは最高の瞬間だった。
先延ばしに対するご褒美まであげてしまっている始末だ。
 
そしてとうとう完璧なダメ人間が出来上がった。
ある時から仕事がまったくできなくなったのだ。
 
もはやなぜできないのか、自分の心の声と向き合う以外手段がなかった。
「やらなきゃ」と思った瞬間起こる自分の中の心の波をじっと見つめた。
そこには、自信のない自分がいた。
うまくできないかもしれない。期待にこたえられないかもしれない。
 
先延ばししている間の心の声に耳を傾けた。
先延ばししてしまっている自分を責め続ける別の自分がいた。
私の中の心の声がずっと責め、わめき立てていた。
 
その症状が起こってしまう作業内容を見つめ直した。
仕事、掃除、細かい雑事。
 
それらはすべて「ちゃんとした大人、ちゃんとした女性であるためにやらなければいけない」と私が認識していること。そして同時に少し負荷の高いものだった。
 
「自信をもちなさい」
「片付けなさい」
「やらなきゃいけないことをちゃんとやりなさい」
 
そこには叱責する母がいた。正確には母に擬態した自分がいた。
おまけにその言葉に反応してやろうとしない子供の頃の自分までいた。
親元から離れてもう随分経っていい歳なのに、情けないことに私は母親から独り立ちできていなかったのだ。もしかしたら反抗期ですらあるのかもしれない。
ふと私には10代の頃反抗期がなかったことを思い出した。母が恐ろしすぎて反抗する気にすらならなかったのだ。思い立って調べてみると反抗期は周囲から自立するために人格形成に必要なものらしい。
そうして私はいっそのことグレてやろうじゃないかと決めた。
 
自分の中にいる、自分で作り出した母の声に強くNOを突きつけるのだ。間違っているわけではないけれど、母に言われ続けた「ねばならないこと」を、自分で感じ、自分で決めて、心にきざみつけ直すのだ。
 
面白いことにそれ以来、少しずつだけれど根本的な解決に向かっている。
それまで調べ尽くしたhowtoがようやく役に立ち始めた。
 
今度母に会った時に笑いながらちょっと反抗期やってみていますと伝えてみるのもいいかもしれない。きっときょとんとしながら笑ってくれるに違いない。
 
 
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2017-09-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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