今日も私は戦場に行く
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「これから戦場へ行かねばならない」
私は頭を抱えていた。戦況は明らかに敗戦が濃厚になっている。起死回生の手段などなく明らかに負けに行くとわかっている状況だった。負けるとわかっているのに自ら戦場になど行きたくない。何よりも自分が完膚なきまでに叩きのめされてしまうのが怖い。
私は部屋で一人招集通知を握りしめながら恐怖に震えていた。戦場に立っている自分を想像すると足元がすくんでしまう。招集通知を破り捨てて逃げ出したい気持ちと葛藤しながらも、逃げ出すという選択肢はありえないことは内心わかっていた。負け戦になるとわかっていてもどうしても行かねばならない。敵前逃亡をしてしまうと末代までの笑いものにされてしまう。心無い人たちから臆病風に吹かれて戦いもせずに逃げ出してしまったと笑いものにされてしまうだろう。
それだけは絶対に避けなければならない。
戦場に赴かず戦わずして負けるよりも、戦場で敵将に完膚なきまでに叩きのめされたほうがまだましだ。
私は覚悟を決めて戦場に赴く準備を始めることにした。戦場で戦っている自分の姿を想像するたびに戦闘準備の手が止まってしまう。抑え込んでは顔を出してくる恐怖心と葛藤しながらも綿密に戦える武器が揃っているのか確認する。
集合時間が迫ってきている。もう戦う準備は整った。私は覚悟を決めて立ち上がった。敵将の首をとれなくとも、一矢報いることくらいはできるかもしれない。私は勇気を振り絞って戦場に出かけていくことにした。
今日はTOEICの試験日だ。
外資系の企業に勤めている私は、語学力が求められている。同僚たちがどんどんTOEIC試験でハイスコアをたたき出している中で、怠惰な私は語学の勉強などほとんどしてこなかった。まさに切羽詰まったギリギリの状態になるまで勉強してこなかったのだ。
いつか時間ができたら勉強しようと先延ばしにしていたのだが、語学ができない人間は戦力外通告になるという逃げきれない四面楚歌の状態に追い込まれてやっと重い腰をあげることになったのだ。
いつか逃げきれなくなる状態になるとわかっていたにも関わらず見たくないものから目をそらして放置し続けていた。もちろん十分に戦えるような準備などできているはずもない。
何の準備もできていない状態で試験会場に行けば手も足も出せないことは自分でも十分にわかっている。
戦う前から負けることは自分が一番よくわかっているのだ。
万に一つも勝ち目のない負け戦になるとわかってはいても、無様に負けて帰ってくるだけでは戦場へ行く意味がない。負けるとわかっている戦でも一戦交えることによってたった一つだけ戦利品をもって帰ることができるのを私は知っている。
負け戦を戦うことによる戦利品とは、戦うことによって相手からフィードバックがもらえるということに他ならない。
戦ってフィードバックを得ることによって自分の改善点や弱点を浮き彫りにすることができる。
自分の改善点や弱点を浮き彫りにすることができれば、次の戦に勝つ戦略を練ることができる。もしかすると次の戦では敵将に一矢報いることができるようになるかもしれない。
こうしたフィードバックは負け戦に出向くことでしか得ることができない。戦場に出向くことなく家にこもっていたのでは、何も得ることができない。だからこそ、恐怖心を克服してあえて自分の無様な姿を白日の下にさらす必要がある。
誰だって自分の叩きのめされた無様な姿など見たくない。けれども、何も持っていない歩兵から将軍にまで上り詰めようとするなら戦場でのフィードバックはなくてはならない。
このフィードバックという戦利品を負け戦の中からたくさん勝ち取ってくることで、いつかどこかのタイミングで勝ち戦に持っていくことができる。
負け戦に何度も挑んでいくたびにフィードバックという戦利品をもって帰り、いつかどこかで形勢逆転できるチャンスを虎視眈々と狙うことができるのだ。
負け戦の経験を重ねるごとにフィードバックという戦利品を集め、いつかどこかのタイミングで勝機を見出すことができるという期待があるからこそあえて自分を鼓舞してまで戦場に向かう。
こうしてフィードバックという戦利品を持って帰ってくるために、戦場に行くといっても過言ではない。
フィードバックを得ることによって自分の戦闘力を上げていくことができるのだ。
戦場に行くことは怖くて仕方がない。無残にも負けて帰ってくることはできることなら避けたい。けれども、できる限りたくさんの戦場を経験することで数多くのフィードバックという戦利品を持って帰ることができる。
そのたびに戦闘力が上がっていき、勝てることは不可能と思えていた戦にも勝てるようになってくるのではないかと思う。
だからこそ何度負け戦を経験してもあえて私は戦場へと行くようにしている。戦場での傷が癒えぬ間にまた、新たな戦場へ赴く準備を始めるのだ。
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