メディアグランプリ

不純な動機でもいいじゃないか


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記事:久保明日香 (ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「世の中に、何人の男がいるでしょう?」
 
このようなフレーズを言う芸人がブレイクしている昨今。
本当にそうだと思う。世の中に人は沢山存在している。だが、自分から話しかけたり、合コン、婚活などに参加しないと関係は深まっていかない。
 
最初の一歩が踏み出せない、と悩んでいる人もいるだろう。私もその一人である。
 
しかし一度きりの人生である。動機は何であれ楽しむべきではなかろうか。
 
思い返せばその昔、私は不純な動機から始めたことがある。
 
私は中学生の3年間、図書委員をやり続けた。
図書委員に立候補したのは不純な動機からだった。“委員をやっていると内申書にその履歴が書かれるのでプラスになる”、そんな迷信を聞いたからだ。
最も、そんなに大きくない活動がプラスになるのかどうかわからないし、ましてや本当に内申書に書かれるのかもわからない。しかし入学当初の私はその迷信を信じ、何か委員に立候補しようとたくらんでいた。
 
「今から委員を決めます。学級委員、保健委員、体育委員、風紀委員、図書委員それぞれ男女1人ずつね。まずは立候補者いるか?」
 
学級委員は絶対大変。保健委員は検尿集めたり、人をフォローしなくてはいけないので人付き合い苦手だから却下かな。体育委員は活動が多そう。風紀委員は日頃から自分が身だしなみに気を付けなければならないかな。図書委員はなんとなく楽そう。
 
こんな勝手な考えに加えて人と話すことが苦手だった私は対人より対本の方が何とかなると思い、消去法で図書委員への立候補意思が固まった。
 
みんなが先生と目を合わせなくなる。正直、どの活動も時間を取られるので面倒だ。しかし余っている委員はくじ引きになり、学級委員を引き当てるなんて可能性もゼロではない訳で、そんなことになったら厄介だ。だから、
「図書委員やります」
と先手を打った、中学1年の4月。
 
初めの委員会で図書委員の仕事内容の説明を受けた。
① 図書館報を長期休暇前に各クラスに配布すること。
② 昼休みの貸し出し手続きのため、3か月に1回、図書当番があること。
これだけだった。
 
当番は1年生から順に回ってくるため、5月の頭に初めての当番があった。昼休み、図書室に足を踏み入れようと靴箱で靴を脱ぐと、靴が3足。何と先生と生徒が3人しかいなかった。
 
「基本的に人が来ない日の方が多いから、適当に本選んで、カウンターで読んでていいよ」
そう言われ、私は時間つぶしのため本を選ぶことにした。
 
図書室の本は古いものが多く独特な香りがする。この香りは……うん、割と好きだ。ただ、古い本でページに何かをこぼしたようなシミやごみが挟まっていたら少し興ざめ。読みたくなくなってしまう。時間をつぶすために“読む”必要があったため、私は新刊コーナーに行った。ここならほとんどの本が新品に近いので綺麗で、本屋のような匂いがする。
 
そこで一冊の本を手に取った。“ダレン・シャン”という本で、ある日突然ヴァンパイアになってしまった少年が特殊能力を持った仲間や敵と出会って成長していくファンタジーだ。
字も大きめだし、読みやすそうだから……
「暇つぶしに読むか」
くらいの軽い気持ちで図書カウンターに持って行き、読み進めた。
 
昼休みは1時間程度だっただろうか。
「久保さん、久保さん! そろそろ鍵しめるから、本戻してきてね」
そう声を掛けられるまで全く気が付かなかった。
 
本を戻し、教室に戻る。しかし私の頭の中からは話の続きはどうなるのだろうという気持ちでいっぱいで5,6時間目の授業は頭に入ってこなかった。
 
次の日、当番ではないが図書室に行った。
「あれ? 久保さん当番だっけ?」
と先生も驚いていた。
「いや、実は昨日読んでいた本の続きが気になって……」
「あらー! それはもしかして、図書館の魔法にかかってしまったんじゃない?」
なんてお茶目な表現をする先生なんだろうと思ったが、その通りだった。私は図書館にまんまと取り込まれてしまった。
 
その日、私は貸し出し手続きを行い、本を大事に抱えて教室に戻った。
家に帰るのが待ち遠しかった。こうして私はダレン・シャンシリーズと出会い、図書館に取り込まれ、次第に本の沼にずぶずぶと入ってしまった。
 
ある1冊の本との出会いがきっかけで私は本を読むようになった。小学校の時全く本を読まず、家でテレビばかり見ていた私が、休日に市の図書館に行くようになり、両親は驚いていた。私もまさかこんなに本の世界にはまるなんて思ってもみなかった。
 
図書館には新しい出会いが広がっている。好きなジャンルのところに行き、たまたま手に取った本のカバーの感触、イラスト、タイトルを見て借りるか借りないかを決めていた。
 
きっかけは不純な動機から。そんなのでもいいのである。最初から自分に関わりがないと決めつけず、興味を持つこと。そして世界を広げてくこと。だって人との出会いは一期一会なのだから。まずはフィーリングから始めたって構わないのだ。
 
図書館の魔法にかかった時を思い出して、一歩踏み出そう、新しい世界へ。
 
 
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2017-09-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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