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メディアグランプリ

やっぱり生が一番だよ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山田あゆみ(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 

「こないだ、ライブ行って来たんだけど、超良かったよ。会場、ドームなんだけどさ。スタンドだったんだけどさ」

 

興奮気味に話す友人の話を聞きながら、そのライブの様子を想像した。小学生の頃、修学旅行でヤフオクドームの見学に行ったことがある。ものすごい広さにびっくりした。

 

「いや、そんなんじゃさ、アーティストの顔とか見れないでしょ?」

 

「全然見えない。でもスクリーンがあるから。それを見ればいいから」

 

私には、全く訳が分からなかった。わざわざ高いお金を出して、時間を割いてライブに行った挙句、スクリーンを見て満足するなんて。それなら家でライブDVDでも観た方が断然、体力も気力もお金も節約できていいじゃないか。

 

「やっぱり、生が一番だよ」

 

わからない、全然わからない。だいたい、スクリーン越しにライブを見ているその状況は、既に生ではないでしょう。でも、友人はとても幸せそうで、満足げだ。好奇心も手伝って、謎を解明すべく、ドームでのライブへ行ってみることにした。

 

友人がチケットを用意してくれた。スタンドの一番前の席だった。友人によると、それはいい席だという。スタンド席は無数にある。2階や3階まである。そう考えると友人の取ってくれたその席は、確かにスタンド席の中では一番いい席だろう。けれど、アリーナ席と呼ばれる普段は野球が行われている地面に椅子を並べて作った場所と比べると、やっぱりステージから遠い。肉眼でステージ上の人が、かろうじて動いているのがわかる程度のようだ。この状況でライブは楽しめるのだろうか。

 

私の疑問は、ライブが始まる前に、吹き飛んでしまった。アーティストごとに、きっと始まりの迎え方は違うのだろうが、私が観に行ったアーティストの場合は、大ヒット曲のプロモーションビデオが流れ終わってから、アーティストが登場するのが決まった流れだった。その曲のビデオが、スクリーンに流れ始めたその瞬間、きゃーっと歓声が束になってとてつもなく広い会場に響いた。5万人の観客が一斉に立ち上がり、曲に合わせてペンライトを振り始める。その行動に、私はただただ驚いた。こんなに人がいるというのに、みんなが同じタイミングで、同じ行動をとっている。そして曲の合間の掛け声を、5万人が、一斉に、全力で叫んでいる。スタンドに、アリーナに、光輝くペンライトが生む波は、それはそれは綺麗だった。鳥肌が立った。ここに集まった全員が、これから始まるライブへの期待に胸を躍らせている。こんなにも心をときめかせ、集中している。

私は、まだ、アーティストが登場さえしていないのに、来て良かったと心から思った。スクリーンを眺めるだけのために、ライブに行くなんてどうしてだろうと思っていたのに、スクリーンさえ眺めていないのに、ただ1曲を5万人と一緒に歌っただけでそんな風に思うなんて自分でもびっくりした。けれど、胸の奥からじんわりとこみ上げてくるこの暖かい気持ちは、感動以外の何物でもなかった。

 

それは、学生時代の体育祭で感じたあの一体感に似ていた。みんなで放課後遅くまで練習したダンスを、本番当日に踊ったあの時。まるでクラスが一つになったような感覚があった。クラス全員がただただそのダンスを成功させたい、そんな純粋な気持ちでそこにいて、一生懸命にその時間に集中していた。そんな塊の一部であることに何とも言えない高揚感を覚えた。それは、その時にしか感じることのできない生の感覚だった。「今」に全員が集中しているあの時間。同じ気持ちで、その集団の一員として、そこにいることが出来る喜び。一人一人が、強い思いを持って結集した集団が持つパワーを、そのただ中にいながら感じた。

 

生ってこういうことだったんだ。そう思った。家でDVDを観る方が何倍もくっきりと、アーティスト表情やダンスを目に刻むことが出来るかもしれない。でも、5万人と一緒に同じステージを共有する、一体感は得ることが出来ない。家で一人、DVDを観ることが、受動的な行為であることに比べて、ライブに参加するというのは、能動的な経験だ。その場所にいることで、その場所の空気を作る一員になる。ペンライトを振り、歌を歌い、トークに笑い、そうやって今の感情を表現することで、それが、その隣にいる他の観客に、地続きに伝わっていく。一人一人のその態度が、感情が、共鳴し合い、合わさり、ステージにも確かに伝わる。そして、それがアーティストのパフォーマンスに、気持ちに確かに影響を与える。それが、見える。感じられる。5万人と一緒に、5万人の中の一人として、コンサートの一部であることが、とにかく嬉しいし、楽しいのだった。

 

ライブの虜になってしまった私は、それからライブに、何度も足を運ぶようになった。行けば行くほど面白い。同じアーティストの同じ曲目のライブでも、日によって全く違う。会場の一体感を、ばしばしと感じられる日もあれば、ちょっと今日はお客さんの乗りが悪いな、という日もあるのだ。でも、そんな差があるのもまた面白い。そこに集まる人はいつも違うし、アーティストのコンディションも、人間だから、いつも一定ではない。だからこそ、もう二度とない、一生に一度の、その本番がとても貴重だ。どうやら私は完全に「生」のステージの虜になってしまったようだ。今なら胸を張って言える。

 

「やっぱり、生が一番だよ」

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2017-09-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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