メディアグランプリ

キンモクセイの薫りをかぐと、悔しくなる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:緒莉香(ライティング・ゼミ 通信専用コース)

 
 
ふわっと漂ってくる薫りに顔をあげると、いつの間に咲いたのか、満開のキンモクセイがあった。
 
「――もう秋だなぁ」
 
毎年、秋の訪れを教えてくれるキンモクセイ。
家の庭や街路樹としてよく見かける、お馴染みの花だ。
たくさんの小さな花。鮮やかなオレンジ色もまた、かわいらしい。
ユリのような強烈な薫りを放つわけではないが、すれ違うときにかすかに薫り、つい姿を探してしまう。
キンモクセイの薫りをかぐと、秋らしい空気を感じられて大好きだ。
 
でも、それと同時に悔しい思いもわき上がってくる。
 
「しまった! また見逃した!」
 
私にとって秋を感じさせてくれる花は、この『キンモクセイ』だ。
そして春を感じさせてくれる花は、やはり『桜』だ。
 
桜は、寒い冬から暖かい春の息吹を感じさせる。暗い、うつうつした気分から明るいほうへ連れていってくれる。
ハダカの木から、芽がでて蕾がつくのを見て、春の訪れを今か今かと楽しみながら待つことができる。
桜の木の前を通る度に、つい定点観測のように、咲き具合のチェックをしてしまう。
蕾が高い位置に着くので、自然と上を向くことができ、気持ちもあがる気がする。
 
桜は、遠足などの予定されたイベントに似ている。行事当日よりずっと前から、ワクワクしながら待つことができる。長い間、楽しむことができる。
 
それに比べて、キンモクセイはどうだろう? 花が咲くまで全く気づかれない。えっ、こんな所にあったの? と言われるくらいだ。
 
桜と比べると、花が咲く頃は緑の葉がおおい茂っている。蕾ってあるのだろうか? あったとしても、小さくてわかりづらいだろう。
そもそも、キンモクセイの木がどこにあるか忘れていることが多い。
 
キンモクセイは予定されている行事というより、たまたまやっていたイベントに参加する、に近い。
なので、ぱーっとその時楽しむ。楽しめる期間は短い。
 
毎年、『来年こそは、桜と同じように楽しみたい!』と、咲いたキンモクセイに誓うが、1年たつと忘れてしまう。
なので、キンモクセイの薫りをかぐと悔しくなる。
 
『今年もダメだったか……』
 
子どもの成長に対する注目度も、この桜とキンモクセイに似ている。
子どもが産まれ、新生児から幼児と言われるくらいまでは『桜』。それ以降は『キンモクセイ』みたいだ。
 
産まれたばかりの子どもは、まだ何もできない。
なので、親は、お腹がすいていないか、オムツが汚れていないか、眠くないかなどと、細かくみている。
笑ったとか、げっぷをうまく出せたとか、少しの成長も見逃さず喜ぶ。
子どもが寝返り、ハイハイ、歩き出したら、もう大変。
ちょっとしたスキに、転んでいたり、危ない方向に駆けて行ったりとますます目が離せない。
 
小学校に上がって、子どもが自分の事をだんだんとできるようになると、手が離れ、目が離れていく。ある程度成長してくると、ちょっとした成長が見えにくくなる。いつ蕾がつくかわからないキンモクセイの様に。
いつの間にかに、子どもがすごいことができるようになっていたとか、自力で問題をクリアできたりする姿をみてびっくりする。
また、子どもが何か様子がおかしいとか、暴力的になったりとか、問題が起こった時に、いつこういうことが起こったのかと後悔することになる。
 
私の子どもは、もう桜からキンモクセイにうつっている。昔に比べると、一人でできる事が増えた。もう、そんなに見ていなくても大丈夫だと思ってしまうことがある。でも、私が思っているよりはまだまだできていないことが多い。もっと、見ることは必要だと、このごろよく思う。
いろんな芽がでていることを見つけてあげて、見守ることが大切だと感じる。
見守り続けて花開いたとき、私もとてもうれしいが、子どもを沢山褒めてあげられることができる。
 
子どもだけでなく、夫もそうだ。
子どもが産まれる前は、よく相手の事を見ていたけれども、だんだんとそれが減っていく。
子どもが産まれると、子どものほうに目線がどうしてもうつってしまう。
どんどん離れていき、小さな変化がわかりづらくなる。
大人だから見なくても大丈夫だよね、と考えているとそうでもない。
やはり誰でも、誰かに見てもらいたい気持ちが多かれ少なかれあるようだ。
成長期の子どもと同様に、夫に対しても意識してみていくように心がけたいものだ。
 
今年のキンモクセイは、幸いにもまだ咲く前に思い出した。
ちょうど会社の入り口にキンモクセイの木があるので、出社時にちょっと見上げて観察をしようと思う。花が満開になるまで続けよう。桜と同じようにワクワク感を味わいたい。
 
現在は9月中旬。まだまだ蕾らしきものは全くない。どのあたりに、どのように蕾がでるのか全くわからない。キンモクセイは9月末から10月初めくらいに花が咲くそうなので、あと2週間は花が咲く前の期待を味わえる。夏休みの自由研究でもしている気分で観察しよう。
 
 
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2017-09-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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