メディアグランプリ

手のり犬。をプロデュース


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:夏実恭子(ライティング・ゼミ 日曜コース)

 
 
「何か趣味はありますか?」「休みの日は何をしてるの?」
といった質問をされるのが苦手だった。
「食べることですかね」とか「散歩は好きですね」などと適当にかわしていたが、それでは犬と同レベルのような気もする。友人たちはジョギングやジムで体を鍛えたり、料理教室に通ったり、イベントに出かけたり、何かとリア充っぽいことをしている人が多い。私も体を動かそうと思い、インド舞踊は3年続けたが、ベリーダンスは半年しか続かず、バレエは体験レッスンで挫折した。

SNSもどちらかといえば苦手だ。ミクシィやツイッターなどは、周りの人がやっていると便乗して、しばらくはマメにやるのだ。しかし、つぶやくネタもなく、ネット上でのやり取りも面倒になり、次第に遠ざかってしまった。ブログもなかなか更新できなくなり、放置したままになっている。
その後、爆発的に利用者が増えているというインスタグラムが、自分の周りでも話題に上ることが増えてきた。

「私もインスタ女子になりたい!」
と思った単純な私は、とりあえず登録してみた。友人たちは絵葉書のようなきれいな風景、見た目にもおいしそうな料理、華やかな女子会などの写真をたくさんアップしている。そこで、はたと気づいた。
「自分には投稿するようなネタがない…」
そのまま1年くらいは、たまに覗くだけで、二の足を踏んでいた。自分は顔を出したくないし、ときどき旅行したり、外食したりすることはあっても、人に見せたいものなんて滅多にないし…と思っていた。

が、あるとき閃いた。
「自分が出たくないなら、モデルを使えばいいじゃない!」と。
モデルといっても人間じゃない。動物でもない。では何か?…ぬいぐるみだ。
一人っ子の私にとって、ぬいぐるみは友達のようなもの。
「ぬい撮り」というジャンルがあることは以前から知っていたのに、身近すぎて気づかなかった。ぬい撮りとは、簡単にいえば、ぬいぐるみをモデルにして写真を撮ることだ。これをやってみようと思った。

昨年、那須どうぶつ王国に行ったときのこと。おみやげのショップで、私はカピバラやハリネズミなどのぬいぐるみを吟味していたが、一緒に行った彼は手のひらに乗るくらいの小さな白い犬を見て「こいつ、かわいいなー」といたく気に入っていた。
マルチーズということだったが、私には「なんだかみすぼらしいな」としか思えなかった。しかし、家に帰ってブラシで毛を整えたら、別人ならぬ別犬になった。彼にはきっと、田舎から出てきたばかりのあか抜けない少女を発掘し、人気のアイドルに変身させるような才能があるのだろう。

その犬はジョニーと名付けた。彼が子どもの頃に飼っていたマルチーズと同じ名前だ。
出かけるときにカバンやリュックに入れて、連れて行くようになった。お手玉サイズでかさばらないのがいい。そして外出先で何かおもしろいものに出会ったとき、おいしいものを食べたとき、ジョニーと一緒に写真を撮る。今では、それをインスタグラムにアップするのが日課のようになっている。
本格的に始めてから半年も経っていないが、投稿数は130を超え、フォロワーは240名になった。毎回のように「いいね!」をしてくれる人の中には、ジョニーのファンもいるのかなと思う。

これまでにSNSが嫌になった一番の理由は、やり取りが煩わしいということだった。そのため、ジョニーがインスタグラムをやっているということにし、犬なので言葉の入力はできないという理由で、コメントはオフにしている。
一方、矛盾するようだが、インスタグラムの魅力のひとつは、ぬいぐるみと出かけるのが好きな人と楽しみを共有できることだったりもする。
「見て! うちの子かわいいでしょ?」といった親バカさも、ここでは許される。

ジョニーを連れて行くとき、絶対に忘れてはいけないのは歯ブラシだ。専用の巾着袋に入れているのだが、いつの間にか毛がボサボサになって妖怪のようになってしまう。店頭で出会ったときも、みすぼらしく見えたのは、この毛並みのせいである。だから、撮影の前には必ず、子ども用のアンパンマンの歯ブラシで毛並みを整えて、目鼻がはっきり見えるようにしなければならない。手間がかかるが、そこがまたかわいい。
パッと見ただけでは本当のかわいさがわからないぬいぐるみは、磨けば光る「金のタマゴ」だ。

「趣味は何ですか?」と訊かれたら、今なら「ぬいぐるみのプロデュースです」と笑って答えられる。痛いと思われたって構わない。ジョニーのおかげで、食べることや散歩といった犬っぽい趣味だって、より楽しく充実したものになった。写真の中のジョニーは、風景や料理などを生き生きと楽しんでいるように見えるから不思議だ。もっとかわいい写真を撮って、誰かに見てもらいたい。
今後は、ジョニーの仲間たちもスカウトして、「ジョニーズ事務所」としてプロデュースしていきたいという野望もある。長続きしなかったSNSも多かったが、インスタグラムは無理せず、ゆるく続けていきたい。

 
 
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2017-09-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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