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プロフェッショナル・ゼミ

本当の「幸せ」とは何かということを、「自由」を求める女性の姿から学んだ《映画『月と雷』×天狼院書店コラボ企画》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:よめぞう(天狼院書店ライティング・ゼミ プロフェッショナルコース)
 

「自由」でいられることが「幸せ」だと思っていた。

私は、仕事をしながら幼い娘を育てる「兼業主婦」だ。毎日、保育園に娘を預けて職場へ向かう。
日中は職場でバリバリと仕事をこなし、夕方になれば娘を保育園へ迎えに行く。
家に帰りながら晩御飯の献立を考えて、家に帰り着くと甘えん坊の娘と遊びながら、その合間を縫って晩御飯の支度をする。
そして娘の風呂を済ませて寝かしつけて、ようやく自分の時間がやってくる。

毎日、息つく間もなくバタバタと過ごしてはいるけれど、別に不満はなかった。
娘がさほど手がかからないおかげで、趣味の楽器は問題なく続けられている。
それに、旦那が私のやりたいことを基本的に応援してくれるので、こうして文章を書く勉強までさせてもらっている。
周りの人からしてみれば、私のことを「リア充」とか「自由」でいいね! とかいうのだろう。
しかし、そんな私でも「あー自由がほしい!」と思うのだ。
子育てをしていると、なかなか「ひとりの時間」を確保することは難しい。
風呂はゆっくりなんて入っていられないし、出来立てアツアツのご飯なんてなかなかありつけない。
朝はゆっくり寝たくても、娘が顔面をバシバシ叩いて起こしてくれる。夜にひとりで飲みに行くなんてもってのほかだ。
できることなら、うっかり昼過ぎまで寝ていたい。明るいうちからまったりと飲みながら気兼ねなくゲームをしていたい。
もし、こんなことが実現できたらどんなに良いだろうか。
「自由」っていいなぁ……誰にも邪魔されない、気ままな生活ってきっとキラキラしていて「幸せ」なんだろうか? と「自由」による「幸せ」への妄想が眩しく輝いていた。
けれども、1本の映画が私の妄想をガツンと打ち砕いてしまった。
 
それは「月と雷」に出てくる草刈民代扮する直子のせいだ。
これまでの草刈民代のイメージといえば、きりっとしていて凛としたカッコ良い女性という印象を持つ人が多いだろう。
しかし「月と雷」に出てくる彼女の姿は、おそらく誰も見たことがないのではないだろうか。
直子はだらしのない身なりで、昼間っから酒を飲みタバコをふかす。誰にも邪魔をされずに「自由」を謳歌していた。
私はそんな直子の姿にひどく困惑させられた。盲信していた「自由を謳歌する姿」と、そこにいる「自由を謳歌する直子の姿」とでは雲泥の差があったからだ。
直子の表情からは「リア充」なんて言葉は決して浮かばなかった。むしろ「満たされていない」というか、砂漠の中のオアシスを求め彷徨っているようにも見えた。
私が思い描いていた「キラキラ」なんてものは一切存在しなかった。
 
「自由」を追い求めた先にあったのは「幸せ」ではなく「孤独」だった。
「自由」であるがために一つのところに留まらず、流れに身を任せる直子の姿を見て、少し羨ましいと思う自分もいた。
今の自分には決してできることではないからだ。けれども、それ以上に失うものの多さに私は耐えることができなかった。
愛する旦那や、お腹を痛めて産んだ我が子、大変だけどやりがいのある仕事。
それらを失ってまで得る「自由」は本当に「幸せ」なんだろうか。私はそうは思わない。
むしろ本当の「幸せ」とは、慌ただしい日常の中にひょっこりと現れる「尊い時間」のことを言うのかもしれない。
仕事終わりの「一杯」が美味しいのもそうだ。我が子の寝顔が可愛く見えるのもそうだ。
普段休みなくドタバタと振り回されているからだ。
旦那だってそうだ。
口に出して言われることこそ減ってきたけれど、こんな私のことを変わらず「思ってくれている」からこそ2人でいる時間が「尊い」のだ。
本当の「幸せ」とは多少の「負荷(ストレス)」の中に存在するのだろう。

だから、仕事も、子育ても、家事も、趣味も……目の前にあることには全力で向き合おうと決めた。
頑張りすぎて少し疲れた時には、またこの映画「月と雷」を観ようと思う。
直子の憂いを帯びた表情を見ていると、アンタは私みたいになるんじゃないよと諭されているような気持ちになる。
できれば、ちょっと気持ちが沈んでいたり、疲れていたり、落ち込んでいる人にこそこの映画を観て欲しい。
未だかつて観たことない草刈民代の姿を観て欲しい。そして、「キラキラ」や「リア充」や「インスタ映え」するものだけが「幸せ」じゃないということを思い出して欲しい。
 
本当の「幸せ」は月明かりの下に……あなたの足元に転がっている。

 

『月と雷』
出演:初音映莉子、高良健吾 、草刈民代 / 原作:角田光代 / 監督:安藤尋
10月7日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー!
http://tsukitokaminari.com
(C)2012 角田光代/中央公論新社 (C) 2017 「月と雷」製作委員会

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この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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