メディアグランプリ

夢は見るものじゃないし、叶えるものでもない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:こっき(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
僕の仕事は人材開発・組織開発だ。同じ会社の人たちが活き活きと働いたり、会社の中の様々な部門が円滑に業務を進めるためのサポートをしている。
 
具体的な担当は社内研修の企画と講師。キャリアやマネジメントといったテーマで、業務に必要な知識やスキルを2時間程度の講座として参加者に提供している。
 
とてもやりがいのある仕事だし、心から楽しんで取り組んでもいる。ただ、僕が昔から夢見ていた仕事かといわれれば、残念ながらそうではない。
 
子どもの頃は画家になるのが夢だった。
絵を描くのが好きだったし、図工の成績も良かったことで自然と憧れるようになった。でも自分以上に才能ある同級生に会うたびに、いつしか叶わぬ夢だと思うようになった。
 
大学に入った頃はカフェをやるのが夢になった。
実家が喫茶店をやっていた影響だ。周囲には「継げばいいじゃん」と言われたが、自分が素敵だと思う空間を自分で作ってみたかった。でも飲食店経営が厳しいこの時代に、大した勝算があるわけでもない。結局、普通に就活して普通にサラリーマンになる道を選んだ。
 
いつの頃だか忘れたけれど、役者になりたいなんて夢をもっていたこともある。
俳優の藤原竜也さんの演技に引き込まれたのがきっかけだ。作品ごとに異なるキャラクターを演じ分ける彼の魅力に「自分も同じことができたらさぞ楽しいだろうな」と思うようになったが、具体的に演技の勉強をすることはなかった。
 
そういえばもう1つ、恥ずかしくて誰にも話していない夢があった。
保育園児の頃は「くまさん」になりたかった。そう、動物のくまのことだ。なんかかわいいと思っていたのだろう。ある意味これが一番大それた夢だ。なにせ実現のためには生物学的な種を超える必要がある。人間はくまにはなれない。そんな宇宙の摂理を知るのに、それほど時間はかからなかった。
 
とにかく、こうして僕はいろいろな夢を見てきたし、諦めてきた。
そして、今は社内研修の企画・講師をしている。日々、受講生を前に「キャリアとは何か」「マネジメントとは何か」と語りかけている。心の中では「きっと、夢は夢のままだからいいんだ」と、自分に言い聞かせながら。
 
でも、そんな日々を過ごす中で、だんだん気が付いていったことがある。
「もしかしたら、これはこれでかつての夢を叶えていることになるんじゃないだろうか」という思いだった。
 
研修企画という仕事は、ある意味、画家みたいなものだ。
研修を設計する時には多くの絵を描き出すことになるからだ。「会場をどんなレイアウトにするか」「後半のワークをどんな形式でやるか」といった現場で起こりうることを、ノートやホワイトボードにビジュアル的に描き出しながら関係者と検討を進める。この時、ペンをふるって絵を描く僕は、かつて夢描いていたことの一部を実現しているのかもしれない。
 
また、研修企画や講師という仕事は、カフェのオーナー店長みたいなものでもある。
自分が世の中に広めたいと思っている食材(研修テーマ)に、自分なりの味付けをして、お客さん(研修参加者)にサービス(講習内容や対話の場)として提供する。そして「来てよかった」と感じて帰ってもらう。この時、研修会場は「僕の店」みたいなものなのかもしれない。
 
そして、研修講師という仕事は、役者みたいなものでもある。
研修を効果的なものにするために、講師はいくつもの顔を使い分ける必要がある。参加者が楽しくワークする場面では明るく朗らかに。参加者を考えさせる課題を出す場面では厳しくシリアスに。1つの研修の中で笑ったり、怒ったり、困ってみせたりとコロコロと切り替えていく。この時、僕がやっているのはまさに演技であり、つまりはこの瞬間は役者をやっているといっていいのかもしれない。
 
さらにいえば、研修講師という仕事は「くまさん」みたいなものでもある。
「キャリアの悩み」や「業務上の課題」という「森」の中で迷っている参加者に、「こう考えると悩みが解消するかもしれない」「こうやると課題解決に近づくかもしれない」といわば「森の出口」を一緒に探すような仕事だからだ。この時の僕は「森のくまさん」みたいな存在なのかもしれない。
 
少し強引だろうか。我ながら無理やり話を繋げている気もする。こういうところが「アナタ最近 “おじさんの老獪さ”が出てきたよね」と妻に言われる所以でもある。しかし、実際どうだろう。これはこれで夢を叶えていると言えるんじゃないだろうか。
 
「夢は見るものじゃない。叶えるものだ」なんて言葉があるけれど、僕に言わせれば「夢は見るものじゃないし、叶えるものでもない。『叶えたことにする』ものだ」ということになる。
 
やり方はここに書いた通りだ。
 
まず自分が今やっていることを要素分解してみる。僕が研修企画・講師の仕事を「絵を描く」「商品とサービスを提供する」「役を演じる」と分けたように、だ。
 
そして、その中に過去に夢見てきたことと繋がる部分がないかを探しに行く。そうすれば、誰しもきっと何かしらの繋がりを見つけることができる。そんなゲームだ。
 
もう少し綺麗な表現をすれば「夢は見るものではなく、叶えるものでもない。自分らしく生きていくうちに、自然に引き寄せるものだ」とも言えるかもしれない。
まるで光に集まる夜の虫のように、自分らしく輝いて生きている人には、夢の成分たちが吸い寄せられるように集まってくるんじゃないかと思う。
 
僕はこれからもどんどん新しい夢を見てみようと思う。
同時に、もっともっと自分らしく自分の人生を前に進めてみようと思う。
 
そして、また「夢を叶えたことにするゲーム」で、その時の人生とそれまでに見た夢を繋げてみる。年を重ねていく僕は、ますます“おじさんの老獪さ”をもって「叶えたことにする」ことだろう。
 
そうやってミルフィーユのように重ねていく時間が価値に変わっていくならば、人生は何歳になろうとも面白いものであり続ける。
 
 
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2017-10-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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