メディアグランプリ

間違えろ!


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記事:本郷あすか(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
両親のはじめての子供にうまれた私は、「生まれてくるのは今日かな? 明日かな?」と希望に満ちた名前を授かり、両親の愛情を独占して生きてきた。
好きなお人形やお洋服も何不自由なく与えてもらい、休日には公園や遊園地に家族そろってお出かけ。一人っ子として過ごした5年間、それは、それは幸せだった。
その日のことはぼんやりとしか覚えていないが、病院で看護婦さんに「おねえちゃんになるんだねー」と言われ「どうやら私お姉ちゃんになるらしい」とぼんやり思った記憶は残っている。
その日から大きくなる母のお腹と比例して、ちょっとわがままを言おうものなら「お姉ちゃんでしょ」と怒られる回数が増え、簡単なお手伝いやお片付けができたときに褒められる時でさえ「さすが! お姉ちゃん!」と両親から「お姉ちゃん」を連発されていった。
きょうだいが増えることやお姉ちゃんになることが嬉しくなかったわけではないが、名前ではなくて「お姉ちゃん」と呼ばれることは嬉しくなかった。
実際に妹が生まれてからはさらに「お姉ちゃん」ってことだけで怒られたり、褒められたりを繰り返し、どんな振る舞いをすれば両親が喜んでくれるかを習得できるようになっていた。
好きで「お姉ちゃん」をやっているわけではない。生まれた順番で運命なのだから受け入れるしかない。妹が生まれてさらに6年後、弟が生まれた頃には小学校高学年に差し掛かっていたから、完全に「お姉ちゃん」として間違わないように生きていくことが形成され、きょうだい2人の面倒をみることはお手の物となっていた。
「完璧なお姉ちゃん」になりたかった私は、中学・高校は部活と勉強を両立させ、進路を決める時には、母が看護師をしていた影響もあり、「医療系に進んでいれば間違いないよね」と医療系の仕事を選び、就職先を決める時には、なんとなくの将来のことを見据えて地元に就職した。就職してから職種は変わらないものの、いろんな分野で働いてみたいと思い職場はいくつか変わったが、どうしても両親のことが気になって九州からは出られないでいる。とにかく「お姉ちゃん」として間違わないように間違わないように生きてきた。
一方、妹は生まれてからどんな時も天真爛漫で自由に生きているように見える。中学・高校はやんちゃに過ごしていたし、短大では両親に相談もせず「なじめない、やりたいことじゃない」と退学し、東京で就職したかと思ったらあっさり授かり婚で、すっかり関東の人になっている。
弟も弟で大学を卒業したあと、公務員で地元に戻り、私のお姉ちゃん業もそろそろ引退で安泰だなと思った矢先、いきなり転職をしてみせ九州からも出て行った。
2人とも好き勝手にしやがってと思うことだらけである。
両親も妹、弟のことで困ったことがあると「姉ちゃんから言ってやってよ」となぜだか私任せだ。妹や弟も結婚や転職の一番大事な場面で一番に相談してくるのは私だった。頼りにされていて嬉しいのだけど正直面倒なのである。「お姉ちゃん」として生きてきた私は「聞いてあげなきゃ」「なんとかしなきゃ」と「~しなきゃ」で自分で自分を縛りつけていることが多い。
「お姉ちゃん」ではなく、ただの女としての本当の私の気持ちはどこなんだろうか?
仕事や恋愛で悩みがある時にも、こう選んでいたら「間違いない」という方を選択してしいるように思う。本当はもっと自由に選んでいいはずなのに。私自身も勝手に「お姉ちゃんとして」選ぶことに慣れてしまっているのだ。
そんな風に「間違えないように」生きている私だが、自分の気持ちに間違いなく好きだと言えるものがいくつかある。音楽もその一つだ。特にライブはそのアーティストの全身全霊の作品を直に体感できる場所であり、お互いに生きていることを実感できる場所だ。
もちろん生で演奏しているのだから、間違えることもある。でもそこはプロ。間違ってもわからないようにうまく流してしまえる。しかし、ある日行ったバンドのライブは違っていた。
その日のライブは対バン形式で、ゲストアーティストのギターが大きく間違えるというハプニングが起こった。普通ならブーイングだって起きそうなハプニングだったが、その後のバンドのボーカルが「間違ったっていいんだよ! 間違って起こせる奇跡もあるんだぜ」と大きく叫び、オーディエンスからも終始「間違えろ! 間違えろ!」のコールが巻き起こったのだ。その日のセットリストはそこから変わったらしく、他の会場よりもたくさんの曲を聴くことが出来た。
「間違えたことで起こるミラクルがある」
目の前で見てしまったからにはもう行動するしかない。今まで「間違えないように」を選択してきた私だったが、その日私の心の壁は大きく取っ払われた。
生きることは間違えること。間違ったことで起こせるミラクルもある。
今だって自分のことを書くことは恥ずかしいし、まだまだ、ライティング? なにそれ美味しいの? 状態である。でも、もっと自分のこころに耳を傾け、間違っても正直にやりたいことをやって生きていこうと思う。
こんな私もミラクルを起こしたいんだ!
 
 
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2017-10-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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