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メディアグランプリ

消費期限は過ぎてない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:かわはらちえこ(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
 賞味期限は約1年。
 冷凍食品でも、缶詰でもない。新人賞を受賞した作家に、出版関係者が仕事のオファーを考える期間だ。
 もちろん、その作家が2冊目、3冊目を次々刊行し、それらの本がヒットしたり注目を浴びたりしている場合は別だ。そういうおいしい作家なら、編集者は何年でも列に並んで順番を待ってくれるだろう。だが2作目以降がぱっとしない、あるいはなかなか出せない新人作家の場合、そうはいかない。
 なぜわかるかといえば、私が身をもって経験したからだ。

子育てが一段落し、カルチャーセンターの小説教室に通い始めたのが、ことの発端だった。講師の先生が優しかったので、自分の作品を講評してもらうのがただただ楽しくて通い続けた。2年かけて完成した長編小説を、「記念に」と思い新人賞に応募した。
その作品が思いがけず最終選考に残り、まさかの受賞ということになったとき、私には作家になる覚悟なんて、まったくなかった。

授賞式やパーティなどは半分夢を見ているうちに終わった。受賞作を手直しして1冊目の本が刊行された。
現実に直面したのはそれからだ。
1作目はすでに書いた作品の修正だけですんだ。けれど2作目はまたゼロから、いやマイナス状態からの出発だった。
長く書き続けて何度も応募した末に受賞した方とは違い、私はストックを持っていなかった。
出来上がった作品でなくても、アイデアをたくさん書き留めたネタ帳のようなものがあればよかったのだが、正直、それまで主婦のお稽古ごと感覚で小説を書いていた私にはそれすらなかったのだ。
それでもしばらくの間は「賞を取ったくらいだから、私は書けるはず」と未知の可能性に賭けていた。だが期待は空しかった。編集者の指導で2作目に取り組んだけれど、どんなプロットを出しても次々に脚下され、書き始めることすらなかなかできなかった。ようやく書き出しても遅々として進まず、最終的に書き上げるのに2年近くかかった。
気づくと作家としての私の賞味期限はとっくに切れていて、やっと完成した2作目も、出版社の判断でお蔵入りとなった。その後も長編を書き続けたが日の目を見ず。医療関係の出版社の好意でやっと2作目の本を出してもらったが、申し訳ないほどに売れなかった。

もう、いくら書いても無駄。受賞は何かの間違いだったのね。

そう思い始めたある日。韓国アイドルが大好きな娘が借りてくるDVDのドラマを、何の気なしに見始めた。「どうせ記憶喪失とか財閥の御曹司が出てくる、ドロドロしたストーリーでしょ」とちょっと斜め上から見下ろす気持ちだった。ところが、図らずも沼にはまってしまった。気づいたら夢中になり、泣いて笑ってドキドキして、どっぷりと物語に没入している自分がいた。
韓国のドラマは確かに記憶喪失や女子の男装、財閥の後継者争いなど、いくつかよく使われる定型パターンがある。それでも飽きさせないのは、そうした設定の古さを超えていく力、勢いがあるからだ。人物の魅力、人生の真実を突く深いセリフ。エンタメの王道を行くストーリーのように見せかけて、ところどころで「そう来たか!」と視聴者の予想を裏切り、周到な伏線やしかけで唸らせる。先が読めない。だから続きが見たくて、待ち遠しい。
家に帰るのが楽しみになる。日常で少々嫌なことがあっても忘れられる。
そんな気持ちを久々に味わった。そして思った。

「私も本当は、小説でこういうことがやりたかったんだ!!」

どうしたら、こんな面白い小説が書けるのだろう?
そう思っているときにたまたま目にしたのが、天狼院のライティングゼミの告知だった。見た途端、直感で「これだ!」と思い、申し込んでいた。

第1講、第2講を受講し、いきなり衝撃を受けた。
書くことに対する自分の認識が完全に間違っていたことに気づいたのだ。自分の文章に決定的に欠けていたもの。それを講座のしょっぱなで痛感することとなった。私の作品が本にならなかったのは……

ひとりよがりだったから。

受け手、つまり読者に対する配慮、読んでもらう為の努力が全然、足りていなかった。だから商品として通用しないと判断されていたのだ。
出版不況といわれているが、書店に行けばたくさんの本が並んでいる。毎日数えきれないほど新刊が出ているのだ。
商品価値があれば、せめて本の形にはなるはず。
なっていないのは……商品としての価値が、魅力がないから。以上、終わり。

もちろん、読者に媚びる必要はない。けれど、親切心、サービス精神がなければ、読んではもらえない。読んでもらえなければ、スタートラインにも立てないのだ。

現実を知るのはイタイ経験だ。自分の甘さ、傲慢さを思い知らされる。でも、それを思い知ることからしか、何も始まらないのだ。
これから一受講生として、ライティングを基礎から学んでゆく。まっさらな場所からのスタートだ。
目標は「誰かが明日も生きていこうと思えるような、魅力のある小説を書けるようになること」!
賞味期限は切れたかもしれないけど、作家という職業に消費期限はないと思っている。先は見えないけれど、夢の実現に向かって、再スタートを切る。

 
 
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2017-10-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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