メディアグランプリ

書くことは役者に徹することと似ている


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:蒼山明記子(ライティング・ゼミ 平日コース)
 
 
読んでもらえる文章を学びたくてライティングゼミを受講している。
でも、そもそもなぜ書きたいんだろう。
この、心の奥から湧き上がってくる書きたい願望はいったい何なんだ。

大体「書く」なんて行為は、実は結構恥ずかしい。
なんだかんだ言って自分をさらすことになったりするし、文才のない幼稚な私の文章では失笑の対象になったりもするだろう。
ヘタなことを書くと炎上や偏見の目で見られたりもするだろうし、からかわれたり笑われたり、ろくなことがない。

母は言った。
余計なものは見ない、聞かない、言わない、書かないことが一番だと。
「見ざる言わざる聞かざるそして書かざる」を、母は幼少の私に提唱した。

母よ、ほんとですね。
ほんとにそうです。
せっかくの教えを頻繁に破る娘は、結構ろくなことがありません。
人生も中盤を優に超えたので、それなりに検証できました。
処世術としては、かなり使える方法だと実感しています。

分かっているのに、こと「書く」ということに関しては、破るを通り越して、たぶん母から見たら常軌を逸した行動に出ている。
ライティングなど学んでいる場合じゃない。
幸せになりたいなら、今すぐ止めるべきだ。

……なのにこの、心の奥から湧き上がってくる書きたい願望はいったい何なんだ。

ある日のこと、私はいつものように仕事から帰宅し、テレビをつけたまま食事の支度をしていた。
テレビでは、芸人と役者が下積み時代の話をしていた。
日の目を見るまでさまざまなバイトをした話や舞台での野次の話など、当時はかなりキツかっただろう話を笑いにして話している。
今こうして語れるのは日の目を見たからだけど、目の出ないままやめていった人も大勢いる世界。
ヘタクソと言われようと野次を飛ばされようと舞台に立ち続けるという、好きじゃなきゃ続かない世界。

食事の支度をする手が止まった。

……あーそうか。
書くことは、舞台に立とうとすることと変わらないんだ。

紙面上、WEB上が舞台。
演出脚本は私。
そして文章上の役者が語る。
それは私だったり、私じゃなかったり。

つまらなければ、閉じられてしまう。
劇場の席や映画館から人が立ち去るように。

そんな舞台に、気づいたら立ってしまっていた。
誰かに読まれるという舞台に。
なんとなくブログを書いたりSNSしたりしているうちに、ライター登録して文章を時々投稿したりしているうちに、もっといろいろ書きたくなっていく。
いろんな役をやりたくなるように。
そんなスパイラルに、気づいたらハマってしまっていたのだ。

この、心の奥から湧き上がってくる書きたい願望は、きっと舞台の魔力だ。

私は役者の世界をまったく知らないのですべてイメージだけれど、きっと役者は観客から、自分ではなく役を観てもらえることが技術なんだろうと思う。
どれだけその役の人に見えるかどうか。
そこにいるのは自分じゃない。
だからきっと、醜態をさらせたり脱げたりもするんじゃなかろうかと思う。
役じゃなかったら冗談じゃないと思うことも、役だからできる。
役者は自分以外の人になる技術職だ。

もし書くことが役者と似ているとするなら、楽しんでもらうために必要なのは、自分のことではなく言いたいことが伝わることだ。
楽しんでもらえることのみにフォーカスして書いたものが、読んでくれた人にとって自分のことのように感じて共感してくれたなら、書き手の私という存在を忘れてくれたなら、書くことに感じている照れや恥ずかしさも吹っ飛ぶだろう。
そんな技術を、伝えたいことや感じたことを楽しく読んでもらえるような技術が欲しいのだ。

書くことは結構恥ずかしい。
でも、読んでもらえなければ意味がない。
観客のいない舞台は、舞台ではないから。
楽しんでくれる人がいてはじめて成立するのが舞台だから。

自己顕示欲と思われてしまうかもしれない。
承認欲求がが強いと思われてしまうかもしれない。
そう考えるとますます恥ずかしい。
でも、そこは受け入れる。
舞台に立とうとする人間に自己顕示欲や承認欲がゼロの人間なんて、たぶんいない。

舞台の評価は気にする。
自己満足の舞台はできるだけ避けたいから。

母よ、すまない。
娘は、しばらく書くことから離れられそうにありません。

ろくなことがないのは、甘んじて受け入れる。
それ以上に、共感を共にする一期一会に酔いしれたい。
とりあえず、もう少しだけ。

楽しませることがまったくできなくて、観客が一人もいなくなって、書きたいこともなくなるまで、もう少しだけ。

 
 
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2017-10-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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