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雨の中のマラソンは神様からの贈り物


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Ruca(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「そうだ、テーマはBe foolishにしよう」
すぐにそのセリフで決まった。
「そんなことを言わんでも、すでに十分バカでしょ。」
もう一人の私がツッコミを入れる。
 
それたとはいえ台風22号の影響を受け、ハロウインを意識して飾り付けられた公園も、観光名所も金沢の街は昨夜からの雨で濡れていた。
静かなはずの休日の朝早から、街はマラソン一色に塗り替えられ落ち着きなく人が行き交っていた。
 
「夏を制したものが、Runを制する」これは私の経験に基づく事実。
身体が辛さのクライマックスにある時でも楽しく過ごすためには、“ありとキリギリス”の蟻のように、暑い夏にコツコツと準備をする必要があった。
小心者の私は全く準備をしないという選択肢が選べない。恐怖心から逃れるために多少の準備は欠かさなかった。
 
しかし、今回はいつもに増して準備ができていなかった。
「完走できるんだろうか」という不安が広がっていた。
完走という言葉だけは譲れない。
でも、アグレッシブな私はどこにもいない。
 
フルマラソン4回目という気のゆるみがあるのは確かだ。
他にすることが増え、走る時間を削った。
身体的に小さな爆弾を抱えている。
定期的に一緒に走る仲間がいない。
頬骨のあたりに増えたシミが、日中に走ることへの大きな抵抗勢力になったことも嘘じゃない。
限られた時間がどんどん走ること以外に費やされていった。
結局のところ、私にとって走るということはその程度なんだろうか。
 
夏になるとエントリーの準備をし、抽選の結果を気にして過ごす。
10月後半に開催されるマラソン大会は、その頃に誕生日を迎える私にとっては貴重なイベントなのだ。
走りながら、去年立てた計画の進捗状況の確認をし、年内の残りの日々のことを考え、新年の計画を練る。
淡々と足を動かしゴールに向かいながら、自分自身と向き合う絶好のチャンスなのだ。
 
いろんな不安が頂点に達した時、
「すべて雨のせいにすればいい。どんな結果になったとしても雨のせいだと笑えばいい。神様のくれたチャンスなのだ」
そんな声がどこからかした。
ありがたいことに、神様はいつも私の味方。
この恵みの雨に中に紛れて走れば、どんな結果でも笑っていられる。
それに今まで、自信に満ちてスタートラインに立ったことなんかなかった。
練習が計画通りに進んだことなんてなかった。
そう、これでいいのだ。
 
そうは思ったものの、寒さと棒のようになった脚は最悪だった。
「やっぱバカだわ。それなのに愚か者であれってどういうことよ」
一人ツッコミは延々続く。
 
いつもの走りとの違いに気づく。
単細胞の私に体力温存などという概念はない。スタートラインを踏むと足を速く動かしたいのだ。今回はそれがない。
いつも30kmすぎに感じる疲労を15kmで感じ始めた。身体ができていないことを痛感。大会までにロングラン練習は必須。
足を着地させるたびに身体の重みに脚が悲鳴をあげる。もっと体重を絞ろう。
脚は棒のようになっていくが、臍から上は元気。
上半身は綺麗に使えている。
夏から身体の鍛え方を変えてみた。パワフルな動きをやめ力を抜くことに集中した。
このトレーニング法が上半身には有効なことがわかった。
脚の辛さは大して変わらない。脚を取り替えて欲しい。
身体を支え、推進力を作っている脚には、持久力をつけるために量の取り組みが大事だ。
悲鳴をあげる筋肉を冷静にチェックした。
 
暑さ対策として作られた「かぶり水のコーナー」。すでに全ランナーが十分すぎるほどに水をかぶっていたために、スタッフだけが立っていた。
雨の中のマラソン。悪いことばかりではない。
体調不良でランナーが日陰でゴロゴロする姿を目にすることはなかった。
救急車のサイレンも鳴っていない。
沿道でのストレッチは、天気に関係のない光景だ。
明らかに足の蹴りが効いていない人、顔から押し出すように進んでいる人。
速くはないが心地よいリズムを刻むおじいちゃんランナーは、進みの悪い私を追い抜いていった。ゼッケンには今年で80歳と書き加えられていた。
 
大切なことはゴールまで行くぞという強い思い。
その思いの強さで全てが決まる。
頭で考えて何か戦略を練りだしたところで身体は聞いてはくれないだろう。
必要なのは、ゴールを目指す気持ちだけ。
 
とことんバカになれ。そうすれば素直な自分と向き合える。
 
30kmをすぎると、沿道には赤や黄色に色づいた綺麗な街路樹が立ち並んでいた。
素晴らしい眺めだ。去年は見上げただろうか?
 
雨の中を14000人に混じって、42.195km先のゴールを目指した。
手にしたのは前回よりも遅い結果だった。
しかし、不思議と後悔はなく、とても気持ちのいいゴールだった。
次に向けてのガッツも湧いてきた。
1年に1本だけ、抽選に当たれば走ることにしていたフルマラソン。
今シーズンは月1ペースで自ら参加することにした。
「何があっても大丈夫」
雨で虚栄心を洗い流した私は、そんな気持ちで満たされた。
 
***

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2017-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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