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メガネはトマトか? レバーか? 


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記事:Shinji(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
49回目の誕生日を迎えた。これといって何か特別な節目であるわけでもない。が、江戸時代ならあと1年で平均寿命だったと考えると、実はもうかなりの老人である。
 
今や人間の寿命は江戸時代に比べると伸びに伸び、人生100年とまで囁かれ出している。
江戸時代までとは言わなくても、僕が子供の頃に描いていた50歳像はもっとヨボヨボだった。サザエさんの波平が54歳なので、同世代である50歳も一昔前は、もう老人のイメージだったのだろう。
ところが、最近の50歳は元気だ。むしろ波平のような50歳の方が珍しい。
いつから50歳は若く元気な老人になったのだろうか?
僕の持論では、明石家さんまがきっかけを作ったと思っている。
 
同年代の人ならおわかりと思うが、
「今年で30知っとるけのケ」
と言う有名なフレーズがある。当時30歳になる明石家さんまが、
「もう30歳になるのに、まだこんなことしている」
と嘆いたフレーズである。この言葉から当時の30歳は、すでに重鎮であるべきだったことが予想できる。確かに小学生時代に思い描いていた30歳はどっしりと構え、一切チャラついていない頼り甲斐のあるおじさんだった。
それを、お茶の間の人気者が一言で
「いいじゃないか、30歳でもこんなことまだできるんだ」
と世間が抱いていた年齢イメージを一気に覆した。
以来、彼はまだまだ現役でできる年齢だと身をもって証明することで常に年齢のイメージを引き下げ続け、ついに還暦のイメージまでも引き下げた。
 
では自分はどうなのか? 気持ちは若くいようと常日頃から心がけている。
体力維持や世間のトレンドから置いて行かれないように情報を収集し、体力・知力の衰退曲線と全力で戦っている。
ところが、唯一抵抗できないものが襲ってきた。
 
「小さな文字が読めない」
 
老眼である。これにより、本が読みにくくなり、雨の日や暗くなってから車を運転するのも怖くなった。これを解決するにはもう老眼鏡を買うしかない、と49歳になったのをきっかけに購入した。
ただ、悲しいお知らせとしては、老眼鏡の導入は解決には至っていない。僕には根本的な問題が存在することに気づいた。
 
「メガネがかけられない」
 
ずっと視力検査で2.0を維持してきた僕には、メガネをかける習慣がこれまで全くなかった。そんな男が急にメガネをかけるとどうなるか? 
鼻がムズムズする。
耳が痛い。
レンズにすぐ触ってしまう。
まるで服を前後逆に着てしまった時のように、違和感だらけである。
 
こんなに苦痛が伴うことを問題なくこなしている人たちはすごいと思う。
コンタクトレンズを装着している人に至っては、もはや神技と思える所業だ。
メガネをずっとかけていられる人も、一輪車で曲芸をする人も、僕には同じくらいすごいと思える。
とは言え、生活に支障をきたすので、そのうち慣れると信じて、かけ続けてはいるが、今の所一向にその気配はない。
この先どうなるか不安しかない。
 
僕には子供の頃どうしても食べられないものが二つあった。
一つはトマト。もう一つはレバー。
子供が大好きな定番メニューのミートソーススパゲティやケチャップのかかっているオムライスが食べられない、テレビで天才バカボンのパパが毎週美味しそうに食べるレバニラ炒めや、焼肉屋での生レバーが食べられなかった。
ところが不思議なもので、大人になるにつれ味覚が変わり、いつの間にかレバーが食べられるようになった。それどころか、今やレバーは大好物に名を連ね、牛生レバーが禁止になった際には不満を漏らしたほどだった。
片やトマトの方は、未だに好きになれない。食感を思い出すだけでも身の毛がよだつ。
ここで問題となってくるのは、僕にとってのメガネはレバーなのか? それともトマトなのか? と言う問題である。レバーならばそのうち何かのタイミングで克服できる。問題はトマトだった場合だ。その場合、残された方法は医学かテクノロジーの進歩にかけるしか無くなる。
それまでの間、鼻のムズムズと戦い続けなければならないのか? と絶望にも似た感情を持ちつつこの原稿を書いていてふと気づいた。
かれこれ1時間以上メガネをかけたままだ。これまで、メガネをかけたままで1時間も持ったことはなく、せいぜい30分が限界だった。なのに、この1時間、違和感なしに過ごしている。メガネをかけているのにメガネを探す一体感には程遠いが、ひょっとすると、少しずつではあるが慣れて来ているのかもしれない。ケチャップくらいは少し食べれるようになって来ているのかもしれない。次は憧れのミートソースに挑戦したいものだ。そしていつの日か、丸かじりができるほどになる日を信じて待ってみよう。
 
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2017-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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