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メディアグランプリ

大人を夢中にさせるティアラ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Minami(ライティングゼミ・平日コース)
 
人生で最初に夢中になったのは、7歳のときだった。
母に連れられて行った町のショッピングセンターのフォーマルドレス売り場の一角に、ヨーロッパ調のショーケースがあった。その中にキラキラと輝く「ティアラ」があった。
 
そのティアラは、シンデレラがつけているのと一緒で、母が買い物をしている間、そのショーケースに張り付いて離れなかった。ティアラをつけて舞踏会で踊っている姿を想像するのが大好きな時間になった。
 
母に「ティアラがほしい」と言ってみたが、「買ってどうするの」と一蹴された。
でもどうしてもほしかった。「勉強頑張って100点とるから」と私はやる気を見せた。宿題もすすんでやったし、テストも頑張ったが100点には程遠く、結果がついてこなかった。
 
それでもあきらめきれなかった。相変わらずケースに張り付き、憧れのティアラを見続けていた私に、売り場の店員さんが「つけてみる?」と言ってくれた。頭にティアラをのせてもらった瞬間、私はシンデレラになった。「わぁ」と言葉が出て、体中に電気が走ったように熱くなった。
 
「ティアラ」は努力した人だけが持てる特別なもののように思えた。テストで100点が取れず約束を果たせなかった私は、それ以降ティアラをおねだりすることはなかった。今でも「ティアラ」を見ると、ほろ苦く懐かしい感情が湧いている。
 
人生で夢中にさせられる経験をしたのは、新入社員時代のことだった。
部長の秘書として働き始めたが、華やかなイメージとは裏腹に、昼はやきそばパンとたばこの缶ピースを買い出しに行き、夕方は接待パーティに行くためのタキシードの着替えの手伝いなど身の回りのお世話をするのが主な仕事だった。
 
月に1度の部長が行う講演会があり、その資料作成は私の仕事で張り切った。
講演翌日、部長から「間違っていたよ」と資料が戻ってきた。ミスは5か所あった。チェックする時間も変えたし、家に持って帰り見直しもしていたのに、ミスがあった。
 
翌月もその翌月もミスが続き、張り切っていた気持ちも萎んでいった。部長は「間違っていたよ」というだけで怒ったりしなかったが、私は恥ずかしさとお詫びを繰り返す自分に腹を立てていた。来月はもっと見直しの回数を増やさなきゃと焦っていた矢先のこと、部長から講演会に一緒に行こうと誘われた。
 
50名ぐらい入れる銀座のセミナールームに、続々とお客様が入ってくる。
講演がスタートした。部長は遠い存在になってしゃべっている。皆が、うんうんとうなずいている。開始10分、胸騒ぎがして資料を先送りしてペラペラと最後までめくった。誤字があるのを見つけてしまった……。血の気がひき、脇汗が出た。そろそろ間違いの場所にくると思った瞬間、私はギュッと目を閉じた。
 
でも、何も起こらなかった。
部長は上手にごまかしながら最後までミスをさけ、拍手喝采で講演を終えた。私の針のむしろの1時間も終わった。帰りの車の中で部長からは「どうだった」と言われたが、謝罪するしかできない自分が情けなかった。
 
あとになって思った。部長が伝えたかったのは、「仕事の最後を自分の目で見届けなさい」だったのだろう。ミスをした本人に制裁を加えるものではなく、仕事はチームでするもの、相手に喜ばれるのが原点という温かいメッセージだった。部長に恥をかかせたくないという私の思いは頂点に達し、ミスを削減するための改善活動に夢中になって取り組んだ。周囲のみなの力を借りることもその時初めて知った。その翌月からミスは消えた。
 
何も言わない、見守る指導もある。
部長の指導は私を夢中にさせてくれた。「ミスをなくしなさい」と細かく言われたら「毎回チェックしているんですけど」と言い訳していたかもしれない。「自分で気づく場」を与えてもらった。
 
そして今、ライティングゼミの存在が、私を夢中にさせている。
1週間のうち、どれだけ原稿のことを考えているだろう。朝起きても、街を歩いても、テレビを見ていても頭から離れず、ネタ探しや構成など「書く」ことに完全に心を奪われている。ほしいけど手が届かないハードルが絶妙にある。
 
時折歯痛も起こしながら体にムチ打っても書く。それでもやり遂げたいと思わせる場なのだ。ライティングゼミの熱量は高く、キラキラしている。それも私だけではなく、多くの大人たちが惹きつけられ、自分と闘い、歯がゆさを感じ、それでも夢中になって書くことと格闘している。
 
強制されているわけではない、原稿を出さないことも途中でやめる選択肢もある。
 
だけど、続けたい。
続ければ上手に書けるようになると言う。素直に言うことを聞いたほうが書けると言う。努力した人だけが持てる特別の「ティアラ」を提供してもらえる場があることに感謝しながら、粛々と書き続けていきたい。
 
簡単にはもらえない「ティアラ」がショーケースの中にあり、
店主の三浦さんは、大人たちを夢中にさせ、気づく場を与え続けている。
 
店主の三浦さんは、スペシャルなティアラをつけている。
私にはそう見えてならない。
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2017-11-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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