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メディアグランプリ

夫婦として生きるということ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:あらかわひとみ(ライティングゼミ10月平日コース)
 
ずいぶんと穏やかになったものだ。
年齢を重ねると大人でも成長するものだと、自画自賛した夜に思いだした昔の夜の話。
 
「今夜はおうし座北流星群だって」
LINEのニュースにあがってきた記事を見て、旦那さんにLINEをする。
彼は、天文の話が大好物で、星の話を語りだすと私が居眠りをしてようと気づきもしない。
ただひたすらに語る。
 
その用紙を見ているうちに、思い出したことがある。それはもう30年以上も前の夜のこと。
まだ新婚の時代に、気持ちも可愛かった新妻の私は、彼に誘われるがまま真夜中の川辺に立っていたことがある。それも冬の寒い時だったと記憶している。
 
「今夜は流星群がふってくる、写真に撮るには最高の夜だ」
今よりもずっと若かった彼は、カメラと三脚、レリーズを抱え、いそいそと真夜中の川辺に向かい歩き出す。私はといえば、ポットに熱いコーヒーを満たし、防寒用の帽子にコート、分厚い靴下を履き、笑顔を固まらせながら後に続く。
 
晴天のよく冷えた夜だったように思う。月もなく、水音だけが響く夜の川辺。
三脚を立て、空に向けてカメラをセットする。
背中ごしに鼻歌が聞えてくる。楽しそうだ……
 
「流星、いつ見えるの?」
「うーん、まだやな~、タイミングがな、難しいんや」
「ふーん、そうなん?」
「そうなんや」
 
小一時間が過ぎる。
寒い。
ポットのコーヒーで暖をとる。
 
「ねぇ、いつ見えるの?」
「うるさいなぁ~、楽しみは待つことでもあるんや」
「ふーん、そうなん?」
「そうなんや」
 
夜は更けてゆく、寒さもましてくる、暖をとるためのコーヒーもなくなってきた。
相変わらず、空にはなにも現れる様子がない。
 
さすがに、苛立ってくる。
 
「ねぇ、もう帰ろうよ」
「あと少し待ってみよう」
 
限界点を越えました……
 
「嫌だ、眠い! 寒い! 帰る!!」
「せっかく写真を撮るチャンスなんやぞ!」
「もうええわ! 帰れよ!」
 
結局この日は、流星群の撮影は失敗……
 
旦那さんは懲りることなく、天文ショーがあるたびに、何度も「つきあってくれ」と私に誘いをかけ、そのたびに「嫌だ」と答えることを繰り返す。あの日から、30年が過ぎようとしている。最近は、余裕で受け流すことができるようになった。私も大人になって、成長したのだ。
 
夫婦は愉快だ。
夫婦にしか通じない言葉がある、笑いがある、怒りがある、そして悲しみがある。
 
お互いに共通の趣味があれば、楽しいのかもしれないが、それでも自分の時間にはいりこまれることはあまり楽しい話ではない。好みが違えば、それぞれに自分の時間を楽しむことができるようにはなる。しかし、すれ違いの時間が増える。相手への関心が減ってくる。
 
夫婦の間の思いやりってなんだろう?
夫婦の間の会話やコミュニケーションは、どうすれば深まるのだろうか?
 
振返ってみよう。
縁があって一緒になった。
新婚生活を楽しむために、旅行に行く。たまには、めかしこんで、外で食事をする。
そんな毎日を楽しんでいると、待望の子どもを授かることが多いだろう。
子育てに没頭する妻、仕事が忙しくなっていく夫。
 
「子供をお風呂に入れてよ」「俺じゃ嫌だって泣くよ」
「出かける時に、ゴミお願いね」「かっこ悪いじゃないか、嫌だよ」
「次のお休みはどうするの?」「たまには家で寝かせてくれよ」
 
そうだ……
こうして、夫婦の会話がなくなっていき、心の溝が深まっていき、子供が独立した後は、まったく趣味の違う女と男がひとつ屋根の下で取り残される。
 
我が家の状況も、今、まさにその状況だ。
夫婦とは、覚悟を決めた男と女が共に歩く姿。
なんていう、小難しいことを考えながら、書いてはいるけれど、実のところどこの家庭もあるがままに日々の時間は流れているのだろう。
その日々の中で、共に楽しいと思えることを探す。
お互いを気にするという視点を探す。それは、文句をつけることであってもいいのではないかと、そう思う。
互いに、相手の悪口を言いながら、それでも元気に笑えるその瞬間があれば、夫婦と言う生き方はそれなりに楽しいかもしれない。
 
30年以上前に見ることができなかった「流星群」
寒さにはもっと弱くなっているだろう。
ピントを合わせるには、老眼鏡が必要なのだろうか?
熱いコーヒーは捨てがたいけれど、案外美味しい緑茶のほうが、心をホッと癒してくれるのかもしれない。靴下を2枚履き、マフラーをしっかりと蒔きつけ、ダウンのコートの下にも、ヒートテックの下着も含めて何枚も着こまないと我慢できないのかもしれない。
それでも、あと何年二人の時間が残っているのかと考えてみた時、昔、真っ暗な川辺で、少しの不安と不満、水音だけが聞えていたあの夜に感じていた気持ちを思い出す。
この人と、これから一緒に歩いていくんだなぁと、そう思いながら彼の背中を見つめていたあの時の私、外見はお互いに変わったけれど、あの頃の気持ちは変わっていないのかもしれない。二人でいる時間、喧嘩もするけれど、一緒に笑うその瞬間を、とても優しい気持ちで喜べる自分に気づいているから……
 
***

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2017-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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