メディアグランプリ

すごろくは幻想だった


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記事:yukari(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 

「一人っ子はかわいそう」

 

その言葉を何回聞いただろう。

そう言われる度に、現在子供が1人の自分は社会不適合者だと責められているような気がして心がちくりと痛む。

 

出産後、娘と外出していると「赤ちゃんかわいいね」と年配の方に話しかけられるようになった。子供がかわいいと言われて悪い気はしないが、いきなりフレンドリーに接してくる人は苦手であり、電車で子供が寝ていたりすると貴重な1人の時間なので正直放っておいてほしい。が、ぐいぐい来る相手に言い返したところで面倒なことになりそうだし、せっかく確保したベビーカースペースから移動するのも難しいので適当に返事をする。聞かれたことに対して当たり障りなく返事をしていると、最後に「兄弟いないとかわいそうよ。2人目はまだ?」などと言われる。

 

また、産休に入る前、まだ生まれてもいないのに「2人目はどうするの?」と聞かれた。育休中に続けて2人目を作る人もいるため、その質問は育休期間が延長する可能性があるのかという意味に捉えていたが、「まだ1人も生まれてないし、一人っ子でもいいかなと思っています」と言った日にはまた「兄弟がいないと……」と言われる。

 

そんな私は、兄と弟に挟まれた3人兄弟の真ん中である。

兄弟とも性格が合わず一緒に遊んで楽しかった思い出も特になく、今後両親に何かあっても助け合うことも期待できない。

母からは、兄や弟がいかに至らないかということばかり聞いており、裕福でもない家庭だったため、「一人っ子ならもっといろいろなことに余裕があったのかな」と思うことはあっても、「兄弟がいてよかった」と思ったことは今のところ一度もない。

そのせいか、自分の子供がかわいいので、もう1人いたらかわいさ2倍かとお花畑のようなことを考えることはあっても(ただし大変さも2倍)、夫が若くないこともあり、兄弟を作ってあげないとかわいそうという気には全くならないのである。

 

それにしても、子供がいなかったときは、「子供は早く作らないと」

結婚していなかったときは、「結婚はまだなのか」

仮に二人目も女の子だった場合、「男の子もいたほうがいい」

家が賃貸だと「マイホームはまだなのか」

車がないと「子供が生まれたのに車がなくてどうやって生活するのか」

子供を保育園に入れると「子供を保育園に入れるなんてかわいそう」

 

世間というものは、人の人生にあれこれ口を出すのが好きなようである。

いったいいつまで自分の人生の選択について、他人からああでもない、こうでもないと口を挟まれるのであろうか。

 

おそらく、人生すごろくにあてはまっていない限り、ずっと何かしら言われ続けるのであろう。

人生すごろくとは、夫はサラリーマン、妻は専業主婦、子供は男と女の1人ずつ、マイホームと車を所有、定年まで1つの会社で勤め上げ、定年後は退職金と年金暮らしで、子供に孫(男女最低1人ずつ)ができてあがりというもの。それらを順調に進んでいくのが幸せな人生。

 

このすごろくのとおりの人生を送れないとかわいそうな人なのか?

今も同じすごろくを楽しんでいる人から下に見られるようなことをしているのだろうか?

一人っ子はかわいそうなのか?

保育園に行っていた子供はかわいそうなのか?

 

彼らは善意なのだろう。きっと今も人生すごろくであがることが一番幸せなことだと信じているのだ。もしくは、昔はそれしか選択肢がなかったから、それが一番幸せだったと自分に言い聞かせたいのかもしれない。

 

いろいろ言ってくる人に対して、頭では分かっていても、世間の幸せ像に当てはまらないと責められているような気がして苦しくなるときがある。

 

でも、それは幻想だ。

時代は変化し、すごろくのとおり老後までたどりつける人なんてまれだろう。

年金がもらえる年齢すらどんどん上がっているのだ。

 

また、幸せの形も人それぞれだ。

我が家は共働きで、子供が1人で、家が賃貸で、車も所有していない。

けれど、私は社会とつながれる仕事があり、共働きにより金銭的にも余裕がうまれ、育児の負担も子供が複数人いる家庭よりは少ないことから精神的な余裕も残しつつ生活できていることに満足している。

また、転勤族の多い地域の賃貸マンションで、近所づきあいをする必要もなく、いざとなればすぐに引っ越すことができる自由があるのは、田舎の近所づきあいで苦労していた母を思うと恵まれている。

車を持たない代わりにレンタカーやタクシー、電動自転車を使い、浮いたお金で飛行機や新幹線での家族旅行もできる。

 

人からあれこれ言われてもいろんな幸せがあっていい。

今までにない道を歩くのは、先が分からなくて不安だけれど、それを楽しんでいこう。

 
 
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2017-11-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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