休日なのにガラガラのスキー場は、私たちバブル世代そのものかもしれない。
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記事:松尾英理子(ライティング・ゼミ平日コース)
冬休み最終日の休日、私は1年ぶりにスキー場にいた。混んでいると思っていたのにガラガラだった。リフト待ちもほとんどない。ゲレンデも人とぶつかる心配なくスイスイ滑れる。
ラッキー! と最初は思った。
でも、なんだか寒さが増してくる。
気温が低かったせいもあるけれど、それ以上に賑わいがないことで寒さを感じたのだ。
今から約30年前。世はバブル景気に沸いていた。その当時、若い世代が訪れた場所がスキー場。私もその一人としてブームに思いっきり乗っていた。スキーをテーマにした音楽や映画が大ヒットし、スキー場で恋愛を繰り広げることがトレンドになっていた時代。合コンのようにグループでスキーに行ってカップルになることもあったし、好きな人とスキーに行くことはデートの定番中の定番だった。
そして、スキーウェアに身を包んだ異性はなぜかかっこよく見えるものだった。その後、街中で会ってお互いがっかりするパターンもたくさんあって、これが「ゲレンデマジック」と言われて笑い話にもなっていた。
当時のスキーブームのあおりをうけ、客数が減ったことに危機感を募らせた東京ディズニーランドが「スキーよりミッキー」というCMを流したくらいの大ブームだった。
バブル期のスキー人口は1800万人。ところが、今はスノボを含めても600万人と激減。
こんなに急激に廃れたスポーツって他にあるだろうか。多分ない。
理由はいくらでも思い当たる。まずは温暖化だ。毎年ひどくなる雪不足は深刻ではある。
そして、スキーもスノボも結構お金がかかる。今の若者はスマホなど通信費にかなりお金がかかっているから、おのずとレジャー支出は下がる。そのあおりをもろに受けたとも言える。
でも「スキーよりミッキー」とその当時焦っていたディズニーランドは、オープン35年を超え、今も客数を伸ばしている。
ミッキーとスキーの違いはなんだろう。
30年前のディズニーランドと今のディズニーランドを考えてみる。
コンセプトに変わりはないが、アトラクションもサービスも全てが何度もリニューアルを繰り返し、進化している。いつ訪れても新しい発見と驚きがある。
じゃあ、スキーはどうか。
リフトは相変わらず遅くて寒い。リフトの乗降を手伝うスタッフに笑顔はない。
音楽はあまりいい音響とはいえない条件で、一昔前のヒット曲がかかっている。
リフト券は相変わらず紙で、リフト券ホルダーに入れる手がかじかむ。
スキー場の食事は相変わらず高い。
そう。30年前と変わっていないことが多すぎる。
こんな風に考えていくと、スキーの変わらなさ加減は、私たちバブル世代と重なる。
未だにバブル時代のお金の使い方が忘れられず散財する。
昔は昔、今は今なのに、楽しそうに鼻高々で昔を語る。
もちろん、いつの時代も中年というのは、そういうものなのかもしれない。
ただ、バブル時代の体験は、その時代にいたものにしかわからない華やかさと非常識さを持ち合わせている。だから、その当時のことを語られても、その他の世代にはピンと来ない。
にもかかわらず、私も時々、当時を嬉しそうに語ってしまうことがある。それも得意げに。
まずい。このままではスキー場と共に衰退の道、まっしぐらな気がしてきた。
ちなみに「バブル世代」とは、現在50歳前後の世代。現役世代で最も人口が多い「団塊ジュニア世代」の前の世代なのに、就職する時には超売り手市場だったから、どの会社も私たちバブル世代の社員であふれている。
もちろん、この世代で頑張っている人たちもたくさんいる。でもマジョリティなので、ふんぞり返っている人が多いのも事実。
今は働き方改革が叫ばれる時代。でも、バブル世代には「俺たちの若い頃は、ここぞと言う時は徹夜して乗り切った」「若い時に毎日遅くまでがんばったからこそ今がある」と思っている人たちがまだワンサカいるはず。
こんな風に他人事で言っている私も、実はそう思ってしまうことがなくはない。
人生100年時代と言われているものの、この先シニア全員が社会で歓迎される存在にはなり得ないと思う。どんな組織でも、必要とされる人とされない人に二分されるはず。
改めて思う。私は、人気のないスキー場にはなりたくない。
もう、昔話はしない。昔はよかったなんて絶対に言わない。
泡と消えていった華やかな思い出は心にしまって、これからの時代に対応できるしなやかさと感性を身につければ、まだまだ組織で貢献できる存在でい続けられるかな。
当時のスキー場は若者に占領されていたけれど、これからのスキー場は、全世代が楽しめる場所として、またメジャーになれる可能性を秘めていると思う。
スキー場よ、バブル世代よ、そして私よ。昔を多く語ることなかれ。
過去ばかり見ず、今を見ていけば、復活の兆し、見えてくるかもしれない。
よし、今年は前を見て、でも回りもしっかり見ながら進んでいこう。
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