プロフェッショナル・ゼミ

ストーカーじみていますがただの脳内旅行者です《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:久保 明日香 (プロフェッショナル・ゼミ)

「では、頑張って書いてくださいね」

そう言われても何を題材にして書けばよいのだろう。提出期限は毎週月曜日の23:59まで。とりあえず何かを書かなければ。そう思って毎週必死だった。書けるネタはないかと脳内を検索する。この数か月で何度私は過去へ旅立ったことだろう。そこには沢山の思い出があった。小学校、中学校、高校、大学……。思い出は溢れているはずなのにどれが面白い記事に繋がるのか判断がつかない。自分の経験のことなのに取捨選択ができないのだ。この、脳内旅行での迷子の状態を毎日続けていた。

たとえ迷子であっても私は前に進まなければならなかった。「もう今日は書くのはいいかな」と思った時、同時に頭に浮かぶのが「受講料」の3文字。私のケチな性格がここではプラスに働いた。記事を書くために毎日、脳内旅行をしている私。講義の受講料はいわばその旅費のようなものだ。旅費を払っているのにキャンセルしますなんて選択、ありえない! とにかく旅行に行ってネタを探す必要があった。

私は最初このような気持ちでライティング・ゼミに臨んでいた。

書いてもダメ、書いてもダメという状況を誰もが経験したことがあると思う。今回は自信があるぞ! そう思って提出した記事もやはり掲載されることはなかった。やっぱり“好き”と“できる”は違うのだろうか、そう落ち込み始めていた時、あることに気付いた。

「私、自分のことで精一杯になっていて他の人の掲載記事、読んだこと無い……」

これは大きなミスだった。今まで何かを学んできたときのことを思い出す。学校の授業では講義終了後、復習をし、例題を解き、わからなければ参考書を読んだではないか!
そこで私は天狼院書店のメディアグランプリのページに急いでアクセスをした。そこには「面白かったです」と評された記事が山ほどアップされていた。どれを読もうか迷った私はいくつか記事のタイトルに目を通し、気になったある記事をクリックした。

その記事はライティング・ゼミを受講しているものの、上手く書けずにスランプに落ち込んでいる状況を描いたものだった。私の状況と非常に似ている。私の事を柱の影から見て、それをネタにしたんじゃないかと思うくらいだった。

「この人……どこかで?」
彼女の名前には既視感があった。そう思って私は受講ページを辿ってみた。すると案の定、彼女は私と同じクラスに所属していた。そこで私は彼女が書いた過去の記事にさかのぼることを始めた。どの記事を読んでもうまい。素敵な人に巡り合えた嬉しさがこみあげてくるのと同時に、安心感も生まれた。既にこんなに上手に記事を書ける彼女が思い悩んでいる。「なんだ、みんな同じじゃないか」
それに、私は彼女が書いた記事すべてが面白いと思うのに「惜しかったですね!」という評価が入っていることもあった。それが天狼院書店の判断なのであれば私の記事なんて到底だめだ。掲載されない訳だ。そう納得することができた。

それ以来、私は彼女の書く記事のファンになった。彼女の事は名前しか知らない。でも記事を読むたびにいつも元気が出た。
「しんどいな、今日はもうさぼっちゃおうかな」そんな誘惑がやってきたときは彼女が過去に書いた記事を読んだ。そして読むたびに思うのだ。この人に近づきたい、と。そのためにはまずは掲載されるレベルの記事を書き上げる必要があった。というのも記事が掲載されれば彼女も私の存在を認識してくれるかもしれない。記事を読んで「おっ、今日の久保さんの記事いいじゃん」なんて思ってくれるかもしれない。この気持ちが私にとってのモチベーションへと繋がった。講義を受け、他人の記事を読み、脳内旅行へと旅立って、書く。それを繰りかえした。

何か月かすると私の記事をぽつぽつと掲載してもらえるようになった。彼女に近づけるフィールドへと降り立てたことがありがたい。あとはこの記事を彼女が読んでくれていることを祈るだけだった。

彼女のおかげで楽しく受講できていたライティング・ゼミだが残念なことに期限があった。私が受講していたクラスの開講期間は8月から11月。たった4カ月だった。その月日は瞬く間に過ぎて行く。この受講が終わったら私は彼女が書く記事をもう見ることができない。それほど残念なことはなかった。

「最終投稿についてはすべての添削が終わりましたら受講生同士のコメントを解禁します」最後の講義でスタッフからの案内があった。これは……憧れの彼女にコメントを送ることができる! そう思うと胸が高鳴った。

だがコメントを送ることはかなり勇気がいる行為だった。まず、彼女との距離感がわからない。私は彼女の記事を何度も読んでいたため、彼女の身の回りにはどんな友達がいて、どんな出来事を過去に体験してきているかという情報をネットから拾うことができた。だから勝手に親しみを持っていたのだが冷静に考えるとちょっとストーカーじみていないだろうか。ましてや実際にその積もり積もった感想をコメント欄に書いてしまったら「この人ちょっと怖いかも」と思われてしまうかもしれない。私も何度か記事を掲載されているとはいえ、もし彼女が私のことを知らなかったらその可能性はかなり助長される。

仲良くなった友人同士でメールアドレスを交換し、“登録よろしくね!”と軽いノリでコンタクトを取るのとは訳が違った。それは好きな人のメールアドレスを入手し、初めてメールをするときの感覚と似ていた。

彼女にコメントを送るかどうか数日迷ったがやはりこの機会を逃したくなかった。私は誤解を生まないように、かつファンです! という気持ちを伝える文章を必死で考えた。初対面の人にはストレートに表現するのが効果的だろうという結論にたどり着いた私は最初に目にした記事の事、以降ずっと記事がアップされるのを楽しみにしていたということを書き綴った。そしてこれからも彼女の記事をどこかで読みたいということも。

ドキドキしながらコメント欄に文章を打ち込み、あとはEnterキーを押すだけだった。なのに私の右手の小指が動かない。最後の勇気が出ないのだ。何度も読み返す。あ、ここわかりにくいかな。そう思ってBack Spaceを押そうとしたその時だった。目標を見誤った私の右手の中指はEnterキーを押していた。

「あぁぁぁぁぁ……」

コメントが送信された。あまりFacebookのコメント欄を使用したことが無い私は一度送信したコメントが削除できるのか、編集できるのかもわからなかった。だからあがくのをやめた。それに、このミススタップがなければ私はどこかで彼女にメッセージを送るのを辞めていたかもしれない。今回は私の右手中指にお礼を言って、返事が返って来ることを祈った。

それから何度もFacebookを開いた。やっぱり好きな人にメールを送った後の学生の時のようだった。当時、Eメールの問い合わせセンターに頻繁に接続し、メールが来ていないか確認していたことを思い出す。まさにあの感覚。ライティング・ゼミって恋愛体験もすることができるんだな、なんてぼんやりと思った。

何度目かのFacebook訪問の時に“通知あり”のアイコンが灯っていた。彼女から返信があったのだ! そこには“ひそかに毎週久保さんの記事がアップされるのを楽しみにしていました”とあった。パソコンの前で1人ガッツポーズ。こんなに興奮したことは久しぶりだった。そして、私が彼女にあてた“またどこかで記事が読めることを楽しみにしています”という想い。それに対しても“私も”と返してくれたことが本当にうれしかった。

そして私は今、プロフェッショナル・ゼミへと所属を変え、毎週課題を提出している。少しはライティングレベルが上がっているつもりだったのだが全然だった。毎週のように掲載される仲間がいる中で私といえば……。だが、それでも私は書き続けるしかない。書いてもダメ、書いてもダメを再び繰り返す中である日ふと思った。

「そういえば最近、同じクラスの人の記事しか読んでいない……」

そこで天狼院書店のページにアクセスをし、山ほどアップされている記事の中からタイトルに惹かれたある記事をクリックした。

そこに書かれていたのは何と、私の大好きな彼女の名前だった!

彼女は別のクラスで書くことを続けていたのだ! 両腕にざわざわと鳥肌が立った。
数か月前、記事を介して出会った彼女に私は記事を通して再会したのだ! 今ではすっかり書くことが楽しい。その要因に彼女の存在があるのは間違いない。この多くの記事の中から引き当てられたことに対し何か運命のようなものを感じた。私はどこまでも心の奥で彼女に支えられているのだと思った。

勇気を出せばFacebookでいつでも繋がることはできる。だがそれだけではもう物足りなくなっていた。脳内旅行で迷子になっていた私を救ってくれた恩人である彼女にいつか、直接会ってみたい。直接お礼を言いたいのだ。

「私をここまで引き上げてくれたのはあなたです。あなたがいたから頑張れました」

胸を張ってそう言える日が来るのを夢見て、私は今日も脳内旅行へと出発する。

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