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「記憶喪失」という「個性」を「前向き」に反省しよう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:NORIMAKI(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「そんなこと言ったっけ?」「は? 覚えてないの? ふざけないで」―「記憶喪失」の僕の失敗は、たいていこのようにパターン化される。ある時自分がさらっと言ったひと言が、じつは相手を深く傷つけてしまっていた。そして、自分はそれを言ったことを忘れてしまっている。そういうケースを、これまで幾度となく繰り返してきた。自分としては、本当にまったく覚えておらず、相手にも「申し訳ない」という気持ちがあるのだが、相手からすると、白々しくとぼけているように見えるみたいで、腹が立ったり、悲しくなったりするらしい。そしてそのことを指摘された自分の方も、じつは結構ヘコむ。心から落ち込む。その瞬間から、「あーあ、またやってしまった」と「どうしたら治るのか?」の「ネガティブスパイラル」の「底なし沼」におちいる。
 
あのときもそうだった。ある立食のパーティーで、彼女の会社の先輩と話をする機会があった。僕としては、いたって普通に話していたつもりだったのだが、その先輩に対し、結構な度合いで余計な「ツッコミ」を入れてしまっていたようなのだ。話題の詳細は忘れたが、「まあ、そうですけど、そんなのありえなくないですか?」「いやあ、そんなにうまくいくんですかねぇ」的なノリだったと思う。言われた方の先輩自身は、特に気にはされていなかったようで、当然のごとく、僕自身もそんなツッコミを入れていたことなど、すっかり忘れてしまっていた。ところが、横で聞いていた彼女には、ひどくこたえたらしい。数日後、「こないだはM先輩に何てこと言ってくれたの! 毎日会社で顔を合わせる私の身にもなってよ。信じられない……」と大目玉をくらい、僕はそのとき初めて事の重大さに気づいたのだった。「ヤバイ。また取り返しのつかないことをしてしまった……」それからまたしばらくは、自己嫌悪のループから抜け出せなかった。結局、彼女との間には、「言ってたでしょ!」「そうだったっけ? ごめん」問題がその後も何度か勃発し、しまいに僕は、なす術なくフラれてしまった。
 
悪意があって意図的にやっていれば、単純に「イヤな奴」で済む話かもしれない。でも、まったくそんな気はないのに、意に反して人を傷つけている。そして、それによって自分も傷つき、激しく消耗する。そんな負の連鎖から、何としても抜け出したいとずっと思っていたのだが、「どうしてそうなるのか?」「どうやったら改善できるのか?」について、なかなかいい「答え」を見つけられずにいた。
 
そんななか、今年の正月、たまたま書店で、ある本を手にしたとき、「これだ」と納得できる「答え」に出合うことができたと感じた。
 
それは、「ADHD」。日本語にすると、「注意欠如・多動性障害」。その本では「多動性や衝動性、注意欠如を特徴とする発達障害で、生活にさまざまな困難をきたす状態」と説明されている。冒頭で挙げた私の「記憶喪失」は、「ADHD」の特徴に当てはまっていた。一口に「ADHD」といっても、重い・軽いの「グラデーション」があるようで、私の場合は、社会生活そのものに支障をきたすというほどではないから、比較的軽い方だといえる。また、「本人の努力不足や、親の育て方のせいではありません。すべて脳の働きの特性なのです」だとも書かれていた。たとえば、世の中には、「足の人差し指が親指より長い」という「個性」を持った人がいるが、よく読んでみると、私の特性も、それと同じような「個性」の範囲なのだと解釈することができた。「治る」ということはないけれど、工夫次第で上手に付き合っていくことができるということもわかり、気持ちが軽くなった。
 
記憶機能に関しては、「ADHDの人は、脳の短期記憶であるワーキングメモリーの働きが悪いので、いろいろなことを忘れがちです」と書かれていた。なるほど、「記憶喪失」の直接の原因は、ここにあったのだ。「ワーキングメモリー」とは、いくつかの「タスク」が乗った「おぼん」のようなものだと考えるとわかりやすい。「ADHD」の場合、「おぼん」のサイズが小さいので、乗せられる「タスク」の数が多くなく、「こぼれて」しまうのだそうだ。対策法としては、「失敗を予測して、先回りして行動する、意識して記憶にとどめるようにする、そうすることができるよいしくみを見つけることが大切です」ということが載っていた。
 
それから今に至るまで、この「傾向と対策」に従って、できるだけ自分の発言や行動を客観的にウォッチするように心がけてきた。もちろん、そう簡単に「100%解決」というところまでは、いっていない。けれど、少なくとも原因を「自覚」できたことは大きな一歩だった。明かりのない闇の中を歩くのは怖い。それは「何が出てくるかわからない」という不安による恐怖だ。でも、「懐中電灯」があれば、たとえ幽霊がいたとしても、その存在をあらかじめ「自覚」しておくことはできる。「記憶喪失」も同じで、原因が「よくわからない」ままだと不安が消えないが、「脳の特性です」とメカニズムがわかってしまえば、わりと冷静に受け止めることができる。
 
生活を送るうえで何よりも一番大事なのは、その特性を理解してくれる人の存在だ。共に過ごす時間が長くなればなるほど、「症状」に出くわす確率も高くなるので、最近では、近しい人には、「記憶喪失」の「個性」をあらかじめお話ししておくようにしている。変な言い方かもしれないが、それをしておくだけで、「申し訳なさ」は数倍よく伝わる。その点、最も近しい存在である妻は、最もよく理解してくれており、頭が上がらない。特性が一因で彼女にフラれはしたけど、その後出会い、今では「個性」のよき理解者となった妻と二人で、毎日「前向き」な反省会を行うことにしている。
 

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2018-02-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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