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石の上にも3年とは、あんまり思わないんだ


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記事:山田あゆみ(ライティングゼミ・特講)

 
 
どんな花でも美しい。
だから、個人個人が自分らしく輝いて、自分らしい花を咲かせることが大事である。
 
よく聞く言葉だ。
 
でも、もし、そもそも花が咲かなかったらどうだろう?
 
小学校1年生の頃、初めて球根をもらった。
自分のプランターをもらって、そこにその球根を植えた。
 
赤、白、黄色。
 
同じクラスの子たちのプランターには、やがて綺麗なチューリップの花が咲いた。
でも、私のプランターには、いくら待っても花は咲かなかった。
それどころか、茎も葉っぱも出てこなかった。
ショックだった。
 
私のチューリップが咲かなかった原因はわからなかった。
水やりもちゃんとした。太陽の光も当てていた。
特に、自分に何か非があったとは思えなかった。
 
とにかく悲しかったのだけは、20年以上たった今でもしっかり覚えている。
 
当時、悲しいことは他にもあった。
 
私は、小学校1年生にして転校生のような存在だった。
ちょうど1年生になる頃、引っ越しをした。
初めての家で、初めての場所で、同じ幼稚園に通った友達は一人もいない状況だった。
ところが、その小学校に通っている子たちは、みんな同じ幼稚園からしか通ってきていなかったのだ。
結果的に、クラスの皆は、私以外が全員、顔見知りだった。
私は、よそ者扱いだった。
 
クラスに全く馴染めなかった。
誰とも仲良くなれなかった。
 
私は自分が植えた、花の咲かないチューリップのようだった。
みんなは、特に何の苦労もなく球根を植えただけで花が咲いた。
それなのに、どちらかというと水だって細目にあげたし、早く咲かないかと様子を何度もうかがっては、太陽の光が当たるようにしていたし、そうやって可愛がって大事にしていたのに、芽さえ出てきてくれない私の花。
みんなは、特に努力しなくても最初から友達なのに、私は努力しても友達になれない。
 
何がいけないのかわからなかった。
ただ、寂しくて悲しかった。
どうしてみんなと馴染めないんだろう。
親切にしているつもりなのに。
 
花はどの花だって綺麗だ。
でも、咲かない花が美しいわけが、ない。
 
クラスの誰からも好かれない私は、咲かない花だった。
日の当たらない場所で、芽も出ない自分でいなくてはならないことが、とても辛かった。
 
どういう経緯だったかは、忘れてしまったが、近所に児童館という施設があることを知った。
放課後や休みの日の、近所の子どもたちの遊び場だった。
本や、遊び道具が沢山あることに惹かれて、そこに頻繁に行くようになった。
そしてそこにいる児童館の先生が優しくて、とても好きだった。
そこを利用している子どもには、年上の子も、同じ学年だけれども他のクラスの子もいた。
楽しく遊んでいるうちに、いつの間にか、どんどん友達が増えていった。
 
花が咲かない時は、プランターを変えたらいいんだと思った。
自分のせいではなくても、上手くいかないことってあるのだ。
そんな時は、環境を変えたらいいだけのことだ。
無駄に自分を責めて苦しんだり、周りを呪って意味のない確執を生んだりする必要なんてないのだ。
ひとつの場所で、上手くいかないからといって、どこでも上手くいかないわけではないのだから。
 
最近、仕事が続かない若者への批判を良く耳にする。
きついからという理由で、仕事をすぐに辞めるなんて虚弱だとか、石の上にも辛抱強く3年はいないとダメだとか、そんな言葉が溢れかえっている。
 
確かに、自分で決めた「この仕事をやっていこう」という意志を、少しきついことがあったからという理由ですぐに辞めてしまうのは、もったいない。
簡単に判断を下そうとしているのなら、もうちょっと様子を見てみてもいいかもしれないとは思う。
でも、本当にどうしようもなく合わない場所で、意味もなく何年も、辛抱をし続けることが良いことだとは、私は思わない。
もちろん辛抱をすることで学べることも身に着くことも、予想もしなかったような展開が待ち受けていることもあるのかもしれない。
でも、そんな我慢をし続けた結果、身体を壊してしまったり、心が粉々になってしまったりするのなら、それは本末転倒だ。
 
すぐに仕事を辞める人は、どうせまた他の職場でも長くは続かないとか、同じ事の繰り返しだとか言う人もいる。
でも、そんなことはないと私は思う。
環境が与える影響は、とても大きい。
人間は社会的な動物である。
周りでどんな風にでも変わっていくと思うし、変えられていくものだと思う。
 
もう、この場所では、花は咲きそうにないと思ったら、プランターを変えてみたらいい。
もしかしたら、プランターでなくて、花壇の方が性に合っているのかもしれない。
ひょっとすると、他の種類の土の方が上手くいくのかもしれない。
 
何かを辞めることは、決して逃げではない。
それが、美しい花を咲かせるための新しいチャレンジである限り。
色々な環境に身を置いて、トライをし続けてみれば良い。
 
 
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2018-02-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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