一等賞の女子大生
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:山田THX将治(天狼院・取材ライティング講座)
天狼院アルバイトスタッフの最古参、酒井未晴さん。立教大学で、国際経営学その中でも組織論を専攻する、福井県出身の可愛い女子大生だ。
彼女が天狼院に通い出したのは、大学二年の途中からだった。私は幸運なことに、未晴さんを天狼院デビューから横目で見ることが出来た。
何が幸運かというと、未晴という名が示す通り“未来の晴れ間”信じた感じの、田舎から単身上京し、立教というハイカラな大学に通い、少し周りに気圧されて居る様な、未だ未だ少女の雰囲気を残していた女子大生が、二年半の年月を経て、少しは一人前のことが出来る女性の入り口に立つまでを、間近で観ることが出来たからだ。
しかも、私の様な得体のしれない‘オッサン’にも、分け隔てなく接してくれ、優しくしてくれたからだ。
未晴さん自身に、話を伺ってみた。
天狼院での仕事は、アルバイトの自覚が無かったそうだ。先に天狼院で働いていた大学の先輩に誘われ、あまり深く考えずに未晴さんは天狼院のドアを叩いたそうだ。当時、同期のアルバイトとして、数名が天狼院に参加した。
現代の学生さんならではなのだろう、大学三年になると‘就活’の為に次々と天狼院のシフトに入る回数が減って来た。しかし、未晴さんは、就活中にもかかわらず、天狼院で健気に働いていた。丁度、福岡・京都と連続して店舗が増えた時も、未晴さんが続けてシフトに入っていたことで、三浦店主や社員さん達も随分と助かったことだろう。
未晴さんによると、天狼院に興味を持ったのはやはり、自分でも文章が書きたかったそうだ。もっと、文章が上手くなりたかったそうだ。文章の上達部分では、同期に抜群に上手なスタッフが居て、未晴さん自身はあまり目立たなかったが、時々Webに載る文章は、少しずつでも上達して来た。
一度、東池袋の東京天狼院から、池袋東口に出来た天狼院スタジオ迄の道順(徒歩で約20分)を、道すがら目立つ物を写真に撮り、記事にしてアップした事が有った。女の子らしい視点で、とても分かり易い記事だった。
「良い記事だったね」と誉めたところ
「いつも間違えて店舗に来る御客さんが多くて、スタジオへの道順を知らせようと思っても、土地勘が無い人だと余計に迷っちゃうと思ったんです。
実は私も、方向音痴だし」
ペロッと舌を出して、可愛い笑顔を見せた。
「それで、自分ならどうやって行くかなと思って、作ってみたんです。御客さんにも、言葉で説明するより記事を見てもらった方が、直ぐに分かると思ったんです」
都会慣れしていなかった娘がいつの間にか、こんなに気遣いの出来る女性になったのかと、嬉しくなるよりも先に驚きを感じたものだった。
そんな未晴さんだが、同期のアルバイト学生よりも早々に就職を決めて来た。未晴さんの素直な努力は、世の事業者には正当に認められたと、安心すると共に当然の結果とも思えた。
その結果として、未晴さんは誰よりも多くシフトに入る事が出来た。
私が楽しみににし、毎月参加する天狼院のイベントに‘天狼院映画ラボ’がある。毎月テーマを決めて、それに沿った自分の好きな映画をファナティックに語り合う、気軽で楽しいイベントだ。
昨年の5月の事だった。
天狼院に行ってみると、そこには映画ラボのマネージャーである川代店長の姿が無く、不安げな表情をした未晴さんが懸命に準備をしていた。
どうしたのかを訪ねると、
「川代さんが、急に具合が悪くなって帰っちゃったんですよ。山田さん、どうしよう」
表情が曇るのももっともだった。突然イベントの仕切りを任されたのだから。しかも、その日のシフトは未晴さん一人だった。店の切り盛りと、イベントの仕切りを一人でこなせるのか、こちらも不安になった。
しかし、映画ラボメンバーの優しさで、その日のイベントは、滞りなく行われ無事御開きとなった。私も安堵した。
それからというもの、未晴さんは映画ラボのマネージャーに自然と就任することになった。未晴さん自身も、イベントを任されて嬉しかったと後日語ってくれた。
未晴さんに、こんなことも聞いてみた。
「何で、同期でただ一人だけ、シフトに入り続けられたのかな」と。
「私、出来ないことの連続なんですよ。でも、出来るまで続けられる根性も有るんですよ」
いつになく、キラキラした眼差しで答えてくれた。
この純朴とも思える未晴さんの雰囲気の裏側には、類い稀なる“人の良さ”も兼ね備えている様に思われる。
昨年の9月1日。天狼院は、新しく池袋駅前店をオープンしていて、その記念パーティーが執り行われていた。常識的に考えれば、東京天狼院の方は休業すると考えられる。しかしそこは、業界の異端児である天狼院である。当たり前の様に、そちらの店舗も営業することとなった。
その時、東京天狼院に一人残され留守番を担当したのが、他でもない酒井未晴さんだった。私は、驚いた。何故ならその日は、未晴さんの誕生日だったからだ。誕生日当日に、一人で留守番をするなんて、そうそう容易い事では無い筈だ。でも、文句ひとつ言いわずに引き受けたであろうことは、未晴さんの“人の好さ”から容易に想像出来た。このままでは、未晴さんがあまりに可哀そうだと思い、駅前店のパーティーへ行く前に、小さなブーケと手土産を留守番をしている未晴さんに届けた。想定外で訪れた私に、驚きながら
「アリガトウ!! 誕生日、覚えててくれたんだ」
飛び跳ねる様に喜んでくれた。可愛さを通り越して、‘可憐’そのものだった。
そんな‘可憐’な未晴さんだが、先輩社員さんには別の一面も見せているらしい。
少し前に、Web天狼院の名物記事“川代ノート”にこんな一文から始まったものが有った。
「私、自分が一番になれないところにはいたくないんですよね」
その強気な発言は、意外な事に未晴さんから出た言葉だった。普段見掛ける、言わば“いじられキャラ”の未晴さんとは、正反対の言葉に感じられたからだ。
しかし、この強い言葉に未晴さんが普段は見せない、隠れた本音が垣間見えた気がした。他人には決して見せない未晴さんの努力が、ちゃんと在ることの証明の様な気がした。
4月から社会人として飛び立つ未晴さん。
みるみるうちに、立派な大人と成長するだろう。彼女の“優しさ”や“可愛気”をもってすれば当然だ。しかも、彼女は誰にも負けない努力家で、“一番”を目指しているのだから。
天狼院の経営陣、スタッフ、映画ラボのメンバーは、一致してこう思っている。
酒井未晴さんの旅立ちを祝うと共に、きっと必ず天狼院に戻ってくると。
理由は簡単だ、“一番”を目指すのなら、既にアルバイトとして“一等賞”を獲得出来た天狼院以外に、相応しい場所が有る訳が無いからだ。
酒井未晴さん。
次に皆から掛けられる言葉はもう決まっています。
「未晴、お帰り!」です。
社会に出て、一回りも二回りも立派な社会人に成った未晴さんに逢うことが、今から楽しみでなりません。
未晴さんの将来は、その名の通り“未来は晴れわたっている”ことだろうから。
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